第3話 伝説の剣と伝説の山賊―7
そして翌日。
ナギの目論見通りうまく乗合馬車を拾うことが出来たぼくらは、新たな町へと到着していた。
「なんだ、ずいぶんと賑やかな様子だな」
大きな欠伸を噛み殺しつつ、不思議そうに呟くナギ。
町の入り口には大きなアーチが掛けられていて、『伝説の剣の町 エルウーンへようこそ』と書かれていた。
「ようこそ旅人さん! 実は今、エルウーンは祭りの準備の真っ最中なのですよ!」
町の入り口に立っていた若い女性が、そうぼくらに声を掛けてきた。
「祭り?」
「ええ。エルウーンは伝説の剣の町。かつてエルシール大森林に棲む神より賜ったとされる伝説の剣が、勇者の登場を今か今かと待ちわびているのです。台座から剣を引き抜こうとする“勇者チャレンジ”の挑戦人数がまもなく百万人を突破することを記念して、『わっしょい! 春のエクスカリバー大祭り』がまもなく開催されるのですよ」
唐突に流れ込んできた大量の情報に、ナギは頭を抱えて沈黙する。
「わぁ、お祭りですって。ちょっと楽しそうではなくって? トゥルスティーン」
デンスは手を合わせて喜んだが、ナギはため息を一つついただけだ。
「どうしたの、ナギ」
「どうしたのって……あまりにも胡散臭いと思わないか? シュー」
ナギはむんずとぼくを掴んで引き寄せて、耳元(ブタの耳?)で囁いてきた。
「伝説の剣なんてそうほいほいあるもんじゃないし、それを引き抜くのに百万人も挑戦してるのに、国がほったらかしなんてことあると思うか?」
「ん、確かに……。普通だったら、保護とかするかもね」
「しかもこんな辺境の地に、百万人もやって来るわけないだろ? いつから剣が埋まってるのか知らねーけどさ」
「ま、まあそれは……もしかしたら、本当に昔から刺さっているものなのかも」
「おまけに最後の祭りの名前を聞いたか? 春の、ってあいつら多分春夏秋冬祭りをするつもりだぞ?」
それに関しては確かに、聞いていてぼくでさえも違和感があった。
だが――
「そういうことなら、いっちょ勇者チャレンジってのをやってみてもいいんじゃねぇか!?」
「そうですわね。引き抜く阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら抜かなきゃ損ですわ!」
どうやらこの二人には、疑うとか怪しむとか、そういう言葉はないらしい。
あほくさ、とナギはしけた感じで町のアーチをくぐり抜ける。
すると――
「おめでとうございます!!」
先程の説明をしてくれたお姉さんが、物凄い勢いでナギに迫ってその手を握り締めた。
「は? ……は?」
「あなたが百万人目の来訪者となりました! なんとそれを記念して、通常、勇者チャレンジには金貨十枚が必要なところ、たった一枚で挑戦することが出来るのです!!」
いや、結局金とるんかい。
なんか、だんだん話の雲行きが怪しくなってきたぞ。
デンスとランドは、マジか、と目を輝かせて喜んでいる。
「しかもこのキャンペーンはグループ単位で適用されますので、なんと今回はみなさま四名様が、勇者チャレンジをそれぞれ金貨一枚で行うことが出来るのです! どうです!? これはやるしかないでしょう!?」
「やりますわーっ!」
「おうよ腕がなるぜ、任しとけっ!!」
完全に乗せられている二人。
この二人になら、怪しい壷とか簡単に売りつけられそうである。
しかし、ナギの反応は実に渋いものだった。




