第3話 伝説の剣と伝説の山賊―3
木の枝で股間を強打し、そのまま失神してしまったランド。
ぼくが怪しいことを呟いていたと報告すると、当然、ナギはランドを縛り上げて捕まえた。
だがそこからが問題で、エルシール・タランチュラの襲撃を受けた馬車は、車軸の故障により動かなくなっていたのである。
馬も多少の怪我をしていたため、御者と、乗り合わせていた大人たちは、一度村に戻ることにした。
だけどナギは、次の町に一刻も早く向かうため、先に進むことを選択したのである。
御者の話では、ランドが“地裂の猛牛”の首領として顔の知られた山賊であることは本当のことらしく、翌日になれば次の乗合馬車が道を通るはずなので、ランドの顔の広さを使ってそれに乗せてもらうというナギの考えだった。
しかしよくもまあ、次から次へと他人をうまく利用する方法を思いつくものである。
もちろん、ランドが何かを企んでいることは明白だったので、こうして捕まえて無理やり言うことを聞かせているのである。
ちなみにデンスは何故かついてきたが、理由はよく分からないし、ナギも一切聞こうとしなかった、というか面倒くさいので触れていなかった。
***
「しょんべんだ!!」
焚き火を消してみんなが横になった直後、ランドの威勢の良い声が野道に響き渡った。
「ちょっと……レディにいきなり何て言葉を聞かせるんですのッ!?」
「んなこと言われたって、行きてぇもんはしょうがねぇだろ! このままじゃ漏らしちまうぞ、そっちの方が大変じゃねぇのか!?」
正論のようなそうじゃないような、とにかく全力で小学生のような主張をするランド。
「うるせぇな、せっかくこのチビが寝付いたんだし、あんまし騒々しい声を出すなよ」
ナギがそう言って指差したのは、獣耳の少女のことである。
野宿は既に慣れっこなのか、少女は横になるとあっという間に眠りに落ちていた。
「ね、ずっと気になってたのですが、チビっていう言い方はよろしくないのではなくて?」
「しょうがないだろ、こいつ自体が言葉を理解してないんだからさ」
「じゃあ、今の間だけでも名前を付けてあげましょうよ? その方が、この子も言語を理解し始めるかもしれないですわよ?」
デンスの提案に、ナギは腕組みをしてうーんと考える。
「なぁ、それよりも早くしょんべんに連れてってくれよ! いいのか? このまま俺がここで漏らしちまってもいいのかあああ」
ランドはよく分からない脅しの仕方をしてきた。
ひとまず名前の話は置いておいて、ナギはやれやれと立ち上がる。
「ったく、いい年した大人が情けないことこの上ないな」
「そう思うなら、さっさとこの縄を解いてくれよ!? 俺はお前らに何かするつもりはないんだから、な!?」
ランドの必死の懇願を無視して、ナギはリードになっている方の縄を掴んで歩き出した。
ランドを後ろ手に縛った縄には、さらに一メートルほどの縄を結び付けていた。
その縄の先はナギの腰のベルトに結んでおり、勝手に逃げられないようにしているのである。
もちろん、どう考えても力ではランドの方が上なのだが、いざという時にはナギは容赦なく剣を抜くつもりのようだ。
「ほら、ここでしろよ」
ナギはランドを茂みの奥に連れて行くと、後ろを向いてさっさと用を足すよう促した。




