第2話 勇者の掟―5
男たちは見るからにガラが悪く、大柄な体格で、毛皮で出来た服を着ている。
「世紀末感あるよな」
ナギの口走ったセリフは、うーん、果たして異世界で通用するのだろうか。
馬車の中の大人たちは唐突な賊の出現に脅えていて、デンスは完全に気絶していた。
とすると、ここはぼくらの出番だろうか。
「やるの……ナギ」
「ま、しょーがないだろ。こんなことで時間をロスしてられねーしな」
やれやれ、と立ち上がるナギ。
しかし、目を覚ました少女がその袖を引っ張っていた。
「うぅ……?」
寝ぼけ眼の少女は、潤んだ瞳でナギを見ている。
まるで、ナギがその場から立ち去るのを拒んでいるようだ。
ナギはそんな少女を見て……そっと、優しく頭を撫でてやった。
「大丈夫、すぐ戻るから。置いていったりはしねーよ」
そのナギの言葉が通じたのか、少女はそっと袖を離すと、再びまどろみの中に落ちていった。
また、ナギの意外な一面を見たような……そんな気がした。
「すごいよナギ。いつの間に、あの子とそんなに仲良くなったのさ」
「はぁ? 別にそんなんじゃねーよ。どう見ても、そういう目をしてただろ」
「そういう目?」
感嘆の声をあげたと、ナギは実に冷静に、何でもないことのように言った。
「また、捨てられるのかって。それくらい、言葉が通じなくても分かるっつーの」
***
馬車の通せんぼをしていた二人の男は、御者に剣を向けて突っかかってた。
「だぁかぁらぁ、ここから先に行きたいなら通行料を払わんかい!!」
「じゃねーと、そこの獣道に血の華が咲くことになるぜぃ?」
はーあ、とナギはすっかり興醒めした様子で二人の前に出て行った。
「ったく、どうしてこういう、山賊とか盗賊ってのは……いくら駆除しても出てくるのかね? 無限湧きのポイントでもあるのか?」
「あァ!? なんだこのガキャア!! 兄貴、こいつから先にぶったぎっちまいましょうか!?」
うーん、分かっていたけどいきなりの挑発だ。
これでは決して平和的解決は望めないだろう。
荒事になりそうなので、今のうちに高度を上げて距離をとっておく。
こういう時だけは、この体(?)に転移してきて良かったと思えるが……。
「るっせーな、寝る子がいるんだから騒ぐんじゃねー。ベイビー・イン・ザ・カーだ」
「べ、べい……はぁ?」
「いいか。いかにもオツムの弱そうなお前らに、オレからありがたい言葉を一つだけくれてやる。耳かっぽじってよーく聞いておけ」
そう前置きをして、凛と通る声でナギは言った。
「山賊は一匹見たら三十匹はいると思え、だ」
「……そ、それって」
ぷるぷると肩を震わせる、山賊の弟分。
「それってゴキブリのことじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
あ、それはどこの世界でも共通して通じる言葉なのね。
怒りに我を忘れた弟分が、早速剣を振り上げてナギに切りかかっていった。




