第10話 そして、勇者であるために―13
「なにっ――」
驚愕するナギ。
アルゼの姿は遥か高くにあった。
その跳躍力、2メートル、3メートル――5メートルは優に超えている。
「これが“勇者パワー”だ、見せてやるぜぇッ!!」
上空からの力任せの拳の一撃。
ナギは後ろに跳んで避けたが、直撃した地点には小さなクレーターが出来ていた。
圧倒的なまでの身体能力。
明らかに、それまでのアルゼの動きとは違う。
「チッ、こいつの動き――」
「オラオラオラ、喋ってて舌噛むんじゃねぇぞォ!?」
「猛獣かッ!?」
着地後の四つん這いの姿勢から、飛び掛かるようにアルゼは跳躍した。
そして強引に空中で身を捻ると、あり得ない角度からの回し蹴りを放つ。
ナギはティルヴィングの刀身でその一撃を受け止めたが、ガキィィィンとおよそ人間の蹴りとは思えない衝撃音が鳴る。
ナギがよろめいたところで、アルゼはすかさず足払いを放った。
「くっ」
とっさに、ナギは掌から氷の波動を放った。
至近距離での“ゆうしゃパワー”の一撃。
アルゼは一瞬で氷漬けになる、はずなのだが――
「ちょうどいい冷たさだな」
氷の波動は、アルゼに到着する直前で蒸発してしまった。
アルゼが何かをしているわけじゃない。
異常なまでの身体能力により発せられた体温によって、そのまま氷を打ち消してしまったのである。
「でたらめだ、こんなのッ」
アルゼの異常な能力を目の当たりにし、ナギは驚きを隠しきれないでいる。
想像以上の闘いに、闘技場内は再び一転、一気に歓声が湧き出した。
「そう思ったなら……お前が降伏しろよッ!!」
そしてアルゼはナギに組み付くと、ついに地面に引きずり倒すことに成功した。
「ナギッ!!」
とっさに近付こうとしたが、ぼくの動きはむぎゅっと何かに掴まれて阻まれる。
「待て。手を出すんじゃあない」
それはハバキの大きな手だった。
身動きの取れないぼくは、ハバキの両手の中でジタバタともがく。
「は、離してくださいっ。このままナギがやられるのを黙って見てろっていうんですか。そもそも、こんな決闘が間違いなんだ」
「そうじゃない……近付くと、君まで危険だと言いたいんだ。見ろ、あの火傷を」
アルゼに掴まれたナギの手首が、赤く腫れ上がり爛れていた。
「や、火傷……!?」
「今のアルゼは相当“熱い”。下手に近付けば、布と綿で出来ている君は燃え尽きてしまうぞ」
熱いって……いったいどんな能力で、アルゼはヒートアップしているんだ!?
「先祖返りというヤツだ」
「せ、先祖返り?」
目の前の展開をまったく理解出来ていないぼくを見かねたのか、ハバキはそう説明してくれた。




