第10話 そして、勇者であるために―12
「お前も……オレを疑っているのか?」
「疑ってるって……そんなの分かんないよっ!! だってナギはさっきから、何も答えてくれないじゃないかっ! 本当のこと、教えてよ……何があったって、ぼくはナギのことを嫌いにならないから」
「だったら……だったら黙って、オレのことを信じてればいいだろッ!! オレだって、お前を守るために――」
「なー、もういいからさ。さっさと始めねぇか? 決闘。お前をぶちのめせば、俺はさっさと勇者に戻れるんだから、さ」
アルゼに水を差されて、ぼくとナギの押し問答は中断される。
「一対一の勝負だぜ。こっちも、仲間の手は借りねーからよ」
「待ってよアルゼ、本当に戦う気!? ナギだって、悪いヤツじゃないんだよ!?」
「パメラ。いくら助けてもらったって言ってもな、泥棒は泥棒なんだ。悪いことをしたヤツにゃ、勇者がケツを叩いてやらなきゃいけねー」
アルゼが腰に差していた剣を抜くと、おおっと闘技場が湧いた。
ナギも無言のまま、ティルヴィングを抜いて構える。
ぼくは……ぼくはどうすればいいんだ?
このまま二人を戦わせていいのか。
ナギが勝つのを祈るしかないのか。
「さぁ行くぜ、このペテン師ヤロー」
そう言って、アルゼが一歩踏み出した瞬間である。
キィン、と甲高い音と共に、アルゼの剣は宙を舞っていた。
「……へ?」
「何が勇者だ。雑魚のクセにいきがるなよ」
ナギは一瞬でアルゼの懐に飛び込むと、その剣を弾き飛ばしていたのである。
丸腰になったアルゼの首に、ティルヴィングを突きつけるナギ。
「降伏しろ。さもなくば、お前の命は保障しない」
ナギの目は本気だった。
一切の情けを排除し、ただ目的を遂行することだけを見据えた怜悧な瞳。
「……んだよ、ちょっと油断しただけだってのに――」
盛り上がっていた場内は、あまりにも呆気ない決着を目の当たりにして、一気に冷めてしまった。
「なんだ、やっぱりあっちがホンモノの勇者なんだよ」
「勇者様が、あんなに弱いわけないモンな」
口々に聞こえる、ブーイングとアルゼへの失望。
「――なかなかに、燃えるじゃねぇか……っ!」
しかし、そんな中、首に剣を突きつけられているという絶望的な状況下でも。
アルゼは諦めるどころか、むしろ闘志を燃やし目を輝かせている。
「ダメだよ、アルゼっ!」
「ここは退くんだ、今は力を使うべきではないっ」
口々に叫ぶ、パメラとハバキ。
いったい、何をするつもりなのか――そう思った瞬間、今度はアルゼの姿が視界から消えていた。




