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第10話 そして、勇者であるために―11

 対峙したナギを前に、アルゼは大きな大きなため息をついてみせた。


「ほんっとに……盗っ人猛々しいってヤツだよな。この期に及んで、まだ勇者のフリを続けるのか」


「フリじゃねぇ。オレが勝てば、オレこそが真の勇者なんだ」


 ナギの言葉を聞いて、アルゼは呆れ返ったように空を仰いだ。


「なんだよ、真の勇者って。お前はただ、“勇者”って肩書きを利用して周りの人間の信用と協力を得たかっただけだろ? そして、勇者であるために、今も嘘を吐き続けようとしている」


「……お前にゃあ分かんねぇよ。何も持たずに世界に生み落とされた人間の気持ちなんてな」


 ナギは……この異世界で生き残るために、勇者の名を奪う道を選んだのだろうか。


 それは、この世界に来たばかりの記憶が無いぼくには、推し測ることも出来ない。

 もしかしたらナギは、ぼくを守るために、茨の道を選んだのだろうか。


 今はただ、ナギを信じて見守るしかない――


「そこのブタさんだってさ、あの時は散々泥棒をやめるよう説得してたと思ったのに。結局は楽な方を選ぶんだな」


 …………え?


 アルゼの言葉に耳を疑った。

 彼は、何の話をしているんだ?


 ぼくにそんな記憶は無い。

 だってぼくの記憶では、ナギは初めからティルヴィングを持っていたはず……!?


「違う、よね……? ナギ」


「……何がだよ」


「ぼくの記憶まで、消したなんて……そんなことはないよね、ナギ?」


 パメラは言っていた。

 人の精神に作用するような魔法は、かなりの高等クラスのもので、四大精霊の力に因らないものであると。


 だけど、ナギにはそれが、“ゆうしゃパワー”を使えば出来るってことは、目の前のアルゼが身を持って証明してくれていた。

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