第10話 そして、勇者であるために―9
突如として表彰式に乱入した、“アルゼ・シュリングル”という男。
燃えるような赤髪が印象的で、年は、ナギより多少上の、十代後半に見える。
だが何より……“勇者っぽい”。
正義に燃えるその瞳は、誰がどう見ても勇者というか、主人公然とした出で立ちだった。
だけど、それはまだいい。
何より驚いたのは、アルゼに続いてアリーナに入ってきた、その仲間と思われる二人だ。
「え……どうして……?」
その言葉はぼくのものでも、ナギのものでも、はたまたアルゼのものでもない。
威勢よく構えた拳銃を力なく下ろした彼女は、パメラだった。
「ほう。これは、思わぬ展開になったな」
さらに困惑の表情を浮かべたのは、ハバキである。
まさか、つい昨日知り合った彼が、アルゼのパーティの一員だったとは。
「なんだお前ら? 知り合いだったのか?」
「だっ、だから、ドラゴン退治の時に知らないパーティの人に助けてもらったって言ったじゃん! それがナギたちだよ!」
「何か力を感じる若者だとは思っていたが……なるほど、なるほどな。魔剣がそこにあったとは……灯台下暗しというやつだな」
ああ……そうか。
そういえば、パメラは初めから言っていた。
妙な魔法にかけられた仲間を救うために、ドラゴンの心臓が必要なんだって。
「じゃあ、服を着たがらないパーティの一員っていうのが」
「わぁ!? バッカそこのブタ!! その話はナシだ!! 俺の印象が凄まじく悪くなる!!」
この反応……アルゼがその張本人に違いなかった。
ハバキも、療養中の仲間の世話をするためにスラム街の宿をとったと言っていた。
そっか、そうだよな。
どこでも素っ裸になる男なんて、まともな宿には泊まれないよな……。
「とにかく、そこの男が俺に魔法をかけた犯人なんだ!! そして俺の精神をおかしくしているうちに、俺からティルヴィングを奪っていった!!」
アルゼの話に、徐々に闘技場の中にどよめきが生まれていく。
「なぁ……どういうことだ?」
「あれがホンモノの勇者様なのか? あっちは偽者なのか?」
どうしよう、このままじゃリンを助けるなんてどころじゃない。
ナギが偽者の勇者として、逆に罰せられることになってしまう。
「ねぇ、ナギ。アルゼの話は本当なの? ナギが剣を盗んだ犯人だなんて……嘘だよね?」
ぼくの問いかけに、ナギは俯いたまま、何も答えようとしなかった。
「え、そうなの? じゃあ捕まえた方がいいんじゃないの? ゴリさん」
「む、むぅん!? どうなのですか!? どうするべきなのですかシオン様!!」
グラニアに言われて、慌ててナギに近付こうとしたグレゴリー。
しかし、その動きをシオンは手で制した。
「静まれッ!!」
その一言で、闘技場は水を打ったように一斉に静まり返る。
ナギは未だに動こうとしない。
「その魔剣がどちらのものかなど……大した問題ではないではないか」
「……は? いやいや、泥棒は立派な犯罪ですぞ、シオン様」
シオンの言葉に冷静に突っ込みを入れるグレゴリーだったが、それはあえなく無視される。




