第10話 そして、勇者であるために―8
「褒美を、言え」
高圧的な態度で、シオンはぼくらを見下しながら言った。
ナギは膝をついたまま、シオンを睨み返して口を開く。
「リンを……返せ……っ!」
「……リン?」
「お前らが、ゼロゼロイチって呼んでるヤツのことだよ。それとも……ここで言われたら、マズイことだったか……?」
ピシッと、その場の空間に亀裂が入ったかのように、瞬間的に空気が凍る。
「おいおいなんだ、聞こえないぞー!」
「さっさと通訳しろ、グレゴリー団長ー!」
観客からの野次が飛ぶ。
しかし、通訳しろと言われても、グレゴリーというらしい総騎士団長は固まったままで、動けないようだった。
「何の話をしているのかね?」
グラニアは相変わらずの温和な表情で、ナギとシオンの話について来れていないようである。
とすれば、黒の剣の実権を握っているのは、やはりルクスパレス王家の方か。
「シオン様。如何いたしましょうか」
白髪の老人が言う。
その細身の体から発せられる殺気。
瞬時に只者でないことを理解する。
「クク……ハハハ……ッ!」
無邪気に笑い出すシオン。
その姿に、ぼくらだけでなく、グラニアやグレゴリーも困惑していた。
「まさか、その程度で勝ち誇っているのではないだろうな……ッ!? 貴様らの試練は、これからが始まりだというのに」
「……なに?」
シオンの言葉にナギが困惑の表情を見せた、その時だった。
「そこまでだ、偽者の勇者めッ!!」
威勢の良い声を共に、一人の青年が新たにアリーナに駆け込んでくる。
「貴様の悪事、お天道様が見逃してもこの“アルゼ・シュリングル”が逃さねぇ!! ティルヴィングも返してもらうぜッ、この盗人めッ!!」




