第10話 そして、勇者であるために―7
「かしこまりました」
しかしナギは驚いた表情など微塵も見せることなく、淡々と指示に従っている。
どうして?
どうして子供の頃のナギがこんなところに?
そりゃ、リュートも観客も驚くだろう。
こんな、王様そっくりの人間が、勇者として表彰式に現れたのだから。
というか、そもそも何でこんな子供が王様なんだ!?
王の血を引く人間は、他にいなかったのか――
「――あ」
そうか。
数年前に起こったとされる内乱。
セリアはそこで王の首を討ち取ったと言っていた。
つまり彼が――ナギにそっくりのこの子が――唯一、王位の継承権を持っていたと。
そういうことなのだろうか。
「ふむ。よく似合っているぞ」
大きな歓声と拍手が鳴り響いて、ぼくは現実に引き戻される。
いや……これが現実の光景なのか……夢じゃないのか……少し疑わしくすら覚えてきたが……。
「さて、貴公には宣告どおり、褒美を一つ与えよう。とはいえ、あまりにも現実離れしたものは無理だぞ。富と名誉なら、いくらでも与えられるがな」
声変わりする前の幼い声でルクスパレス王が言うと、鎧の太った男が大きな声で笑い出した。
「ガハハ!! それでも、十分与えすぎなほどですぞ!!」
「例えば、ルクスパレス聖騎士団の一員にしてやっても良い」
「それなら、早速今日から私の部下になりますな!!」
「いや、総騎士団長の座だ。竜狩りを行ったほどの腕なら問題あるまい」
「シオン様!? それでは早速今日から私が降格してしまいます!?」
むせび泣く大男。
どうやらこの男が、ルクスパレス聖騎士軍のトップのようだった。
体型や、ゴリラ似の顔からしてそうは見えないが……。
というか、総騎士団長が言った、ルクスパレス王の呼び名。
「シオン……?」
さすがに、ナギも気が付いたようだった。
訝しげに呟いたナギに、グラニアが横から説明をしてくれる。
「ああ、旅人だから聞きなれないかもしれないね。彼の名はシオン=ルクスパレス=クリシェ。ルクスパレスでは、王を襲名した者はミドルネームにルクスパレスを。大司教を襲名した者には、ミドルネームにスコルを入れるという慣わしがあるんだ。だから、シオンというのはれっきとした王様の名前だよ」
親切かつ丁寧な説明だったが、問題はそこじゃない。
「シオンって、黒の剣の……」
ペトラルカが愚痴で零していた、上司の名前。
それこそが、シオンだったじゃないか。
ということは――シオンは当然、ぼくらの存在を――




