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第10話 そして、勇者であるために―6

 そしてやって来た、表彰式の時。

 ぼくはナギの肩に乗り、一緒に闘技場の中へと進んでいく。


「わぁ……!」


 差し込む太陽の光。

 アリーナの観覧席はほぼ満席の状態で、割れんばかりの歓声がぼくらを出迎えてくれた。


 カラフルな横断幕や、あちこちで弾けるクラッカーが、普段は無骨な空間であろう闘技場を彩っている。


「お、思っていたのより遥かに凄い……」


「確かにな。だが、オレたちの目的はハナっから一つのはずだぜ」


 ナギが見据えた先。

 それは、闘技場のアリーナから、特別に階段が伸びていて、その先に置かれた玉座にあった。


「あれが、ルクスパレスの王様……!」


 逆光でまだよく見えないが……玉座の左右には、それぞれ一つずつ椅子が置かれており、向かって右側にはグラニアが座っているようだ。


 左側には、かなり大きな体格の男が、金属鎧に身を包んで座っている。

 もっとも大きいと言っても、ランドやハバキとは違い、横にも前後にも大きかった。


 要は、でっぷりと太っているのである。

 あれじゃ、力はあったとしても、とてもじゃないが戦闘には向かないと思うが……。


「よくぞ参られた、ドラゴンを狩りし勇者よッ!! 貴公の勇猛なる武勲を称え、今ここに、その証として冠を授けよう!!」


 と思っていたら、その太った男が、会場の歓声にも負けないほどのバカでかい大声で、表彰式を仕切り始めた。

 なるほど、そのための体格……って、そんなわけないよね。


「冠をもらえるみたいだよ。なんか、オリンピックみたいだね」


「バカなこと言ってんなって。オレたちがこれから歩むのは、そんな栄光の道じゃあないんだ」


 そう言って、一歩、また一歩と歩き出すナギ。


 え……今、何て言ったの?

 まさかこの場で、王様に斬りかかるなんてことはしないよね? ナギ?


 そしてナギが闘技場を進むにつれて、それまで歓迎ムードだった会場の雰囲気に妙な違和感が生まれ始めた。


「なぁ、あの子の姿って……」

「まさか、そんなはずないでしょう?」


 聞こえてくるのは、先程のリュートと同じような、ナギの容姿に関わる声だ。

 しかし、そんなざわめきも気にすることなく、ナギはついに玉座に至るまでの階段を上り始める。


 壇上では、執事のような身なりの白髪の老人が、ルクスパレス王に金の冠を渡しているところだった。


「よくぞ、参られた」


 階段を上りきったところで、ルクスパレス王は開口一番そう告げる。


「え――」


「待ちわびたぞ。戴冠式を執り行う、そこに跪け」


 ルクスパレス王より命じられる、式典の手順。

 しかし、そんな言葉など一切耳に入らないほどに、ぼくは動揺していた。


 だって、そこにいたのは――玉座にふんぞり返って座っていたのは――


「ナ……ギ…………?」


 小さくなったナギ。

 小学生の頃のナギを、黒髪してちょこんと座らせたような。


 不遜な表情までそっくりの、そんな少年が……そこに座っていたのだ。

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