表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/354

第2話 勇者の掟―3

 そして、結局そんな、人間なのかも分からない少女を村に置いていくことも出来ず。

 村で一晩明かした後、乗合馬車に乗せて、こうして一緒に連れてきてしまったのだった。


 ただこれは、なんだかんだで、ナギにも良いところがあるってことなのかな?


「ま、心配すんなって。一応これでも、行くアテくらいは考えてるんだぜ?」


「え、本当に? そんなこと一言も言ってなかったじゃん」


「人狼の里っていうのがな……この先にあるらしいなんだ。オレも、詳しい地名までは知らないんだけどさ」


 人狼の里? するとこの子は、俗に言う人狼ワーウルフって種族になるのか?


「っていうか、いつの間にそんなこと調べてたの?」


 この体になってからは、四六時中ナギと一緒に居るつもりなのに。

 ナギはいつも、ぼくの知らない情報をちゃっかり持っていたりするのだ。


「ハッ、お前のスカスカの頭と一緒にすんなよ。オレは天才だからな」


 む。そうやってすーぐ調子に乗るんだから、ナギは。


 だけど実際、ナギはいつもテストで一番を取っていて、運動神経だっていいし、顔はぼくから見てもカッコイイと思える。

 本当に、非の打ち所のないスゴイやつなのだ――性格以外は。


「とりあえず、早くこの子の家が見つかるといいね。……ってまあ、それはぼくらにとってもまったく同じ状況なんだけど」


「同じ?」


 キョトンとした表情でぼくを見返すナギ。

 まさか、と物凄く嫌な予感がした。


「もしかしてナギは、元の世界に帰ろうって考えてない――」


 そう、大事な話をしようとした瞬間である。


 バツン!! と天地がひっくり返るような衝撃と共に縦長に伸びる視界。

 い、いったい何があった? 体がまったく動かない!!


「た、大変だナギ!! なんか馬車の中が縦長に」


「馬車の中っていうか……お前が縦長になってるぞ」


 今度は横に伸びたり斜めになったり。

 世界がまるでゴムのように、忙しなく伸縮している。


「さっきから、人がまどろみの中にいるのにゴニョゴニョとうるさいと思えば……!」


 その少女の声は、ぼくの真後ろから聞こえた。


「何ですのッ!? この可愛らしい生き物は!! 説明してくださいましッ!!」


 どうやらぼくは、ナギの右隣に座っていた少女によって、良いように弄ばれているようである。


「ちょ、ちょっとナギ……止めて、止めるように言って」


 ぐにゃぐにゃする世界に酔ってきたので、何とか止めてもらおうとしたが、ナギはこっちが引いてしまうほどのゲスい顔でぼくを見ていた。


 あ、悪魔だ。

 この悪魔、完全にぼくが困っているのを楽しんで見ているっ!!


「ぶた? ぶたさんですのこの子は? でもなんか小さな羽が生えてるし、かーわいー!」


「あー……あんまり手荒に扱うのは止めてくんないかな。“わた”が飛び散っちまうよ」


「臓物が!? 意外とグロいんですのね!?」


 少女はびっくりしてぼくから手を離した。

 なんか勘違いされているのが気にかかるが……まあいいや、これ以上乱暴に扱われたくないし。


 振り返って見ると、そこには黒髪の可愛らしい少女がいた。

 ただ、少女とは言ってもぼくらよりは年上に見える、たぶん十七歳前後だろう。


 背中まである長い髪はゆるく波打っていて、頭のてっぺんの青いリボンと合わせて、少女漫画にでも出てきそうな雰囲気の子だ。

 ただし、身に付けている革の鎧と腰のレイピアから察するに、そんな世界とは正反対に生きていそうであるが。


「で、でも今のえもいわれぬ柔らかで滑らかな感触……さ、触りたいッ!! 私、その子を触りたいですのッ!!」


 少女は口の端からよだれを垂らすほどの恍惚とした表情で、再びぼくに手を伸ばしてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ