1/354
幕間 0
けたたましく鳴り響くサイレンの音。
パトカーが外を通過するたびに、割れた窓から差し込むパトランプの光で世界が赤く染まった。
だが鮮血に彩られた少年に、赤という色はもう馴染んでしまったのかもしれない。
「ここまで、か」
少年は自嘲気味に呟きを漏らした。
疲れきった表情は、まるで生きることに絶望したようだ。
その手に固く握られた真っ赤なナイフが、凄惨な事態があったことを物語っていた。
床に落ちた丸時計の針は、午前三時半を過ぎようとしている。
「どうして……どうして、こんなことに……」
少年の呟きに答えられるものは誰も居なかった。
そのまま、時間が止まってしまったかと思うほどの、重苦しい沈黙が続く。
――その時、だった。
ガラクタで埋もれた廃工場の奥から、ぼうっと光が差し込んできたのは。
見つかったかと、少年はナイフを握り直して光の発生源を確かめに行く。
しかし、そこにあったのは――思わず目を疑うほどの、幾何学的かつ精緻な模様で描かれた、光り輝く魔法陣だった。