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その世界一短い唄の名は

coup de vent…疾風、一陣の風

僕は女好きである。

ていうか童貞である。

それもそのはず高校が男子校なのだ。

どういう間違いを犯せば女の子と付き合えるというのだ。

男子校経験者の特徴として女の子がみんなかわいく見えてしまう病気にかかる。

特に大学入学3か月あたりがおかしいことになっている。

ストライクゾーンが広がりすぎて女の子ならだれでもいいやと脳が判断してしまう。

実によろしくない。

文化祭の日にメアド20件交換してそのうち17つは繋がらなかったルイ君や保健室の先生(推定42歳)にガチ告白をした高橋先輩等々男子校なんてこんなところである。



そこでこの状況だ。



シャーリーちゃんとかいう外国のハイスクールでスチューデントやってそうな名前の金髪の美少女と、フレアとかいう赤髪知的高学歴理系インテリ美女と一つ屋根の下で暮らすというのだ。



なんだこれ。



金髪少女は本当にかわいい。超かわいい。俺が命を懸けて助けたこともあってメロメロだ。妹のいない俺にとってお兄ちゃんと呼ばれることが如何に快感か分かるだろうか。


ちなみに下心は一切感じていない。


マジで。だって猫や兎に発情するか?カワイイのベクトルが違うんだよ。


子供可愛い。


カワイイは正義だって教えてくれている。


(あと数年したらわからんけど。)



んで、お姉さんの方だ。


こっちのほうがヤバイ。年上だ。


女子大生かOLってとこだ。美人のお姉さんだ。


しかもツボを押さえてくれるように知的で頼れるお姉ちゃんってかんじだ。


ロマンティックが止まらない。



あとメディさんっていう女医でメガネで紫髪で天然入ってそうな理系の優しいお姉さんがもうね、好きです。はい。



以上、僕の下心でした。



妄想終了―



☆ ☆ ☆



で、今どこで何をしているかっていうと、



フレアさんのおうちでお風呂を頂いたところだ。



火事の後だったからね。しゃーない。服は適当なローブ?みたいなのを見繕ってくれた。


シャーリーもシャワーから出て、疲れてたのかすぐにベットで寝てしまった。


今はフレアさんがシャワーを浴びている。



フレアさんは一人暮らしで、メディさんと半共同でこの一軒家で暮らしているらしい。廊下の先に部屋が3つ、風呂付。でもこの一部屋が超広い。キッチンがあって2人分のテーブルとイスと、あとは壁一面に本が並んでいる。何畳だろう?貸家でない一人暮らしって時点でお金持ちな気がするがこっちと金銭感覚が違うのだろうか?



風呂場の方から声がした。


「ねぇ、シャーリー!ちょっとバスタオルとってきてくれなーい?」


「シャーリーは寝ちゃいましたよー!」


掛けてあったタオルをもって風呂場の扉の前まで行く。


「あぁごめんごめん。ありがと。」


扉を少しだけ開けて、隙間から手が伸びる。


その手を見ただけで胸がドキドキした。



ガラガラッ



「いやー、普段一人だからさ、こういうのうっかりしちゃうんだよね。」



そこにはバスタオルを一枚巻いただけの女性が立っていた。



「・・・」


「おい、見とれてんじゃねーよ、変態。」


「あっ、ごめんなさい。」



男子校出身者のもう一つの弱点を教えてあげよう。


コミュ症だ。


特に大学入学3か月あたりがおかしなことになっている。


普段は普通にしゃべれるのだが女性を異性と認識した瞬間に言葉がつまり、それまで普通に話せててももう胸のときめきが抑えられなくなって心臓のあたりがきゅーっと熱くなる。


子供とか、先輩とか、その辺なら特に何もないのだが、こんな、女性らしい、部分を、見せられては、流石に、刺激強えーよ!!!!



そそくさとその場から立ち去った。



☆ ☆ ☆



「おまたせー。あぁシャーリーかわいい顔で寝てるなぁ・・・ふふっ。」



ローブを着て、濡れた髪を首にかけたタオルでわしゃわしゃしながらフレアが戻ってきた。


髪の濡れた女性ってそこはかとなくえろいよね。わかるわかる。



「じゃあ、これからについて話そうか。」


「・・・はいっ。よろしくお願いします。」



部屋の明かりを消して、ろうそくを1本付ける。


お互いに真剣な顔つきになって語り合った。



「じゃあ、まず君の名前を決めようか。」


「名前・・・ですか?」



「ヒラカタキュウなんて完全に異邦人だ。こっちの世界じゃ神の名前に等しいよ。」


「そうなんですか?」



そういうとフレアは本を何冊かとってきた。



「見てみ・・・この本見覚えないかい?」


「えぇと、これは高校数学の本…これは中学1年英語の教科書か…これ、全文英語だなぁ、…生物学の論文?」



「そのさ、最後のページ見てみ?」


「最後のページ…出版社名に著者名出版年度…あっ!これ全部俺の世界の本なのか!」



「そう、君の名前とこの本の著者は同じ国の民だろう?いや、同じ世界の人というべきか。」


「なるほど。で、名前を変えたほうがいいと。」



「あぁ。私たちの国では名+父方姓+母方性で一人の名前になる。国によっては洗礼名が最初に来たり、王族なら姓が一つ増えたりするが、ほとんどは名前+父親姓+母親姓だ。」


「へぇー。 えと、フレア・カルーア・カーネーション。あとは・・・」



「メディ・キティ・アコナイトだな。あとシャーリー・テンプル・チューリップ。」


「あー、じゃあ俺はどうしようかな・・・」



「ちなみにこの国じゃ家柄に趣を置いていてな。国王か教会に認めてもらわないと新しい姓はつけられないんだ。」


「えー、どうすんだ。」



「・・・よければ、私と同じ名字になってくれないか?」


「・・・結婚するんですか?」



「馬鹿!養子になるんだよ!優秀な人間だから将来立派な研究者になってカーネーションの名前を残してほしいの!君に!」


「あっ、そうですか。そうですよね。」



「名前も変えようかな?キュウって名前は研究者っぽくて大好きなんだがこの国じゃ珍しい名前だしなぁーうーん。」


「そこまでして名前変えんくてもよくないですか?」



布団の方で声がした。


「・・・くー、にいちゃん・・・・」


ろうそくの火が揺れる。


時がゆっくり流れた。



「…寝言だよー、ふふっ、本当にかわいいなぁ。 ・・・あぁ、いいんじゃない?クーで。」


「クウ?空ですか?」



「クード・ヴァン・カーネーション。いかが?キュウとクーって似てるだろう?」


「クー・ド・ヴァン…疾風か。それにクウは空。・・・すごいいい名前。」



「気象学者のあんたにぴったりの名前じゃん。よろしくね、クー。」


「はい、フレア姉さん。」




この夢のような異世界で



名実ともに姉ができた。


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