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二人の教授

 地面が落ち込んだ所までは、二メェトルほどしかない。

 僕は崖際に腰かけて、ポイッと地面に飛び降りた。


 降りたところが凸凹で、姿勢を崩してたたらを踏むのに、グラッドストン教授が丸太のような筋肉質な腕で支えてくれる。


 グラッドストン教授は崖の上を見やるようにして、

「やあラジニ君。今日は君の先生は、一緒じゃないのかい?」

「はい」

「それは残念だ。彼ならこの探索にも、喜んで参加したろうに」

「探索ですか?」


 グラッドストン教授は黄土色の生地の厚い作業服、上着は腕まくりをしている。

 ヘルトリンク教授もオリィブグリンの作業着姿で、腰には胴乱やウェストポォチをぶら下げていた。


 その辺りの砂っぽい剥き出しの地面には、貧弱な植物さえ見当たらない。

 

 十メェトルほど離れた場所で五、六人の若い人が革製の小舟のような物を取り囲んで作業をしていた。

 以前発掘をさせて貰った時に会った、教授のゼミの学生も混じっている。僕に気付くと日焼けした顔を綻ばせて、頷いて見せた。


 グラッドストン教授が、

「いつものように化石の発掘中、地の底に繋がる洞窟を発見したんだ」

 ヘルトリンク教授は、洞窟内の苔でも調べるのだろう。


「しかもこの洞窟。これまでの調査によって、マントルまで通じてマントルに穴が開いているのが分かったんだ」

「スゴイですっ。これでマントルの組成や、地球の生成の過程、大陸移動のメカニズムなど様々なことが分かりますね」


 僕は興奮して、両手を握り締める。


「ああ。そもそもマントルの下に大きな空洞があって、そこに地底の海が広がっているんだ」

「ええっ。マントルの下の地下空洞、それも海ですか!?」


 マントルの下には高温で流動するマグマがあって、地球の中心に核があると言う説が一般的だ。だが、もちろんそれが実際に確かめられたことはない。

 地面から六十キロほどのところにマントルがあり、そこからマグマが出て来ることは物証もある事実だ。


 でもマントルが水風船の風船で、マグマが水みたいに詰まっているとは限らない。

 オレンジみたいな仕切りがマントルから伸びているかも知れないし、マグマの中にプカプカと、高温なんてなんのそのの種みたいな物が浮いていたっておかしくない。


 ないって確認された訳じゃ、ないのだから。


「そう。海には島があるかも知れない」

「どうしてその探検に、ヘルトリンク教授も行くのですか?」


 グラッドストン教授も若い方ではないが、ヘルトリンク教授は退官間近の年配者だ。

 植物採集で高山でもジャングルでも向かうから、足腰は若い人並みにしっかりしている。二十歳前後の学生が、体力負けすると言うぐらいだ。

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