お話のおわりは
妙にしつこくて、押しが強いと思ったのだ。
居住地に閉じ込められて生活が苦しい、鬱屈している年寄りかと思ったが。
きっと退屈した神様だったに違いない。
「最初は楽しかったけど、もう十分ですよ」
「でしょうね。なかなか悪ふざけが、過ぎるようですから」
不服げに言った僕に、先生は苦笑される。
先生は、日の光に石をかざした。
壁に、ステンドグラスのように赤い円が浮かぶ。
高温で金属が溶けるように、壁に赤い穴が開いた。
短いトンネルの先には、僕が泊まっていたホテルの部屋が見える。
空のベッドと、くしゃくしゃの敷布。ランプテェブルに置かれたリィス。
「朝になっても起きて来ないので見に来たら、姿がないので。それに、リィスからおかしな感じもしましたのでね」
「いつかは戻れるとは信じてましたけど、先生が迎えに来てくれて良かったです」
「もっと色んな世界を見たいと言われるかとも思ったんですが、もう帰ってもいいですか?」
「もちろんです。同じあちこち見て回るのも、先生と一緒のいつもの旅の方がいいです。追いかけられたり、怪しまれたり。あんな慌ただしくて、不安なのは困ります。兄弟とか旅の知人と会えたのは良かったけど。あっ、グラッドストン教授とヘルトリンク教授にも会いましたよ」
「それは良かった。その時のことは、後でゆっくり聞かせて貰いますが、会いたい人には皆会えましたか?」
僕は出会った人々の顔を思い浮かべ、一人とても大事な人が抜けているのに気付く。
少し子供っぽいかと思うが、そもそも僕はまだ子供なのだしと、素直に思ったことを言った。
「そうですね。久しぶりに母さんに会いたかったです」
設定がおかしかったのは夢か、偽物か。
ちょっと変だけどリルケの姿は見られたし、クレイブ兄さんにも会えた。
さっきは猫で、その前は空の双子だったかもしれないけれど、双子に会ったこともある。
もちろん一番のチビさん、ノエルにも。
でも旅に出て以来、母さんの顔は見ていない。
手紙なら週に一度ぐらいは来てるんだけどね。ノエルのついでで。
先生はそれに、
「簡単ですよ。私も一度、ラジニ君の親御さんに対面して、ご挨拶がしたかったんです。宿をたったら、ラジニ君の生まれ故郷の町に出掛けましょうか」
「いいのですか?」
「ええ」
先生はにっこりと微笑まれる。
「地元はラジニ君が詳しいのですからね。私をあちこち、案内して貰いましょう」
「はい。もちろんです」




