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君がお姫様なら

 再び扉が開いて、芝居小屋の主の顔が現れる。

 怪訝な顔をしている僕に、男の人はニッと悪戯っぽく笑った。

「手品の仕掛けもしてあるんだ」

 箱に入れて扉を閉めて、開けたら。

 

 パッ。

 

 空っぽって訳だ。スゴイ。

 観客がいたら、僕が消えて今また出てきたって訳。

 僕はもう大丈夫そうだと促され、箱の中から出る。

「何を、かっ払ってきたんだ」

 なんて言うから、

「何も」と、本当のことを言う。

 僕が、パンとか林檎でも屋台からくすねたと思うなど。

 そんな盗人ぬすっとを匿おうとするなんて。

 と言いたいところだけれど、助けて貰ったのでそこは気にしない。

 男の人は、僕の言葉を本気にしなかった。

「そう言うことにしておこう」

 本当だからねと念を押した後で僕は、

「この近くに、電源が入って映っているテレヴィはある?」

「テレヴィ? 街頭スクリィンなら、この道のすぐ先だが」

 僕は、再びこの近くをウロウロしているかも知れない追っ手に見つかる前にと、歩き出しながら、

「リトルガァルによろしくね」と、言う。

 多分、間違いない筈だと思った通り、

「リトルガァルは、この国のお姫様の愛称だがな」

 と、言う答えが返ってくる。

 男の人は、宿の部屋で寝込んでいた寒々しい格好の男の人とも、その後で会った劇団イィハトォブの団長とも似ていなかったが、別の世界の同じ人間のその世界の姿であっていたようだ。

 

 それにしてもリトルガァル。

 

 どこかの世界では自分はお姫様だなんて言ってたけど、本当にお姫様だった。

 でも団長ってば、別々の三つの世界でも似たような仕事をしているらしい。

 ここではそんなに、貧しそうには見えなかったけれど。

「是が非でも会うといいよ。お抱えの道化にして貰えると思う。前にそんなこと言ってたから」

 僕はそれだけ言って、道の先に駆け出す。

 横を通る時に、角のある車引きの獣が、穏やかな声で一声鳴いた。

 僕に挨拶したみたいだ。

 

 これはケンタウリ?

「お姫様に会うだって? 俺はただの紙芝居屋だぞ?」

 じゃあ、紙芝居をする道化だ。

 ここでのケンタウリは、動物なんて。

 いやいや、嘆くことはない。

 僕だって猫だ。

 でも猫は、家畜と違う。もちろん猫の人生だって、楽で幸せとはいかないけどね。

「ラジニ。こっちだ」

 アァビィが僕を呼んだ。

 

 街頭スクリィンの奥に、何人かの人がいて僕を指差す。

 追っ手だ。こっちに来るが、一か八かだ。

 僕は掴み掛かってくる手をすり抜けて、木と紙の掛け軸みたいなスクリィンのアァビィに向かって飛ぶ。

 僕の肘や尻に人の手が触れるが、僕の滑らかな服に滑って掴み損ねる。僕は無事に、次の世界に通り抜けられた。

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