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ここ何処!?

 あの双子なら、こんな目に遭わされたって、絶対懲りることはないだろうけど。

「また会えるといいね。リドル」

「君、会ったことあったっけ?」

 リドルの顔には、戸惑いがある。

「別の世界でならね」

 僕は押し上げ窓を開けて、一階の窓から、花は咲いていない花壇を飛び越えて地面に降りる。

 石造りの大きな建物が、数十メェトルも離れていない所に見えた。

 

 学校に違いない。

 

 僕はそのあと校舎に入り込み、視聴覚室を見つけて無事出入り口を確保した。

 

 そしてまた幾つかの世界を潜り抜けた時、数人の人がそれを見ていた。

 これまでも僕を見た人はいるけれど、驚いていて、行動を起こすには至らなかったのだ。

「何だ? スパイか?」

「悪い魔法使いか?」

 

 まさか。違うよ。

 

 僕は当然反論するけれど、人々は聞いてくれない。

 

 僕を掴まえようとする人達に、僕は追いかけられる。

 長距離走は苦手だけれど、スタァトダッシュと細かいトリッキィな動きなら、愚図な大人になんか負けやしない。

 

 直線路なら難しかったけれど、その土地はグネグネと曲がった小道が何本も走っていたから、追っ手から一旦距離をとって視界から外れるのはたやすかった。

 

 でもピイピイ呼び子が鳴らされ、あっちに行けとか何処に回れとか何処を塞げとかの指示は聞こえていた。

 

 住人達の方が土地勘はあるから、捕まるまでにテレヴィを見つけないと囲まれて囚われてしまうに違いない。

 擦れ違った人が、僕の切羽詰まった様子や見馴れない格好、叫ばれている声からお尋ね者と見て、追跡の手に加わるので、なかなか完全に人を振り切ることもできない。

 

 僕がまた一つ曲がり角を曲がった時、人の気配は把握していて余裕を持って避けたけれど、道の端に停められていた車輪付きの台車で道が狭められていて、僕は慌てて軌道を修正する。

 台車の先頭には、焦げ茶の巻き毛の四足動物が繋がれていた。

 男の人の顔を見る暇が少しあった。

 

 肩までの藁色の直毛、浅黒い肌、皮肉っぽい薄い唇。

 

 見知りではないのに、僕の口から言葉が漏れる。

「あっ」

 僕は思わず、足まで止めてしまう。

 

 何となく知っている気がする。

 

 相手も僕が誰かはっきり分かった訳ではないが、通じるものがあったに違いない。

「ここに入るんだ」

 追っ手の掛け声と、改めて僕の全身に眼を走らせたあと、男の人は台車の下の扉を開けた。

 台車の上には、木枠に洒落た赤い緞帳が掛けられている。

 移動式の人形舞台だ。

 

 男の人は舞台の下の空の扉の中に、僕を隠してくれた。追っ手が辿り付き、荒い息の合間の声で、

「猫の格好をした男の子がこなかったか? そこに隠していないだろうな」

 男の人は無言のまま、ドアを開けた。

 

 ひどい。最初から僕を差し出すつもりなんて。

 

 僕は目を閉じ、身体を縮めた。

 追っ手は何も言わなかった。扉が何事もなく閉められる。

「こっちじゃなく、そっちの道に入ったんだろう」

 追っ手たちは言いあって、木靴の足音を立てて走り去る。

 

 あれ? 僕の姿は見えなかったみたいだ。

 疑った男の人に、謝罪もなかった。まぁ、謝罪した方が無駄になるけど。

 たまたま追っ手も、僕を見逃したと言うんじゃなきゃね。

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