遠未来・平行世界・別次元
それらの様々な物で挟まれた細い通路から、身体を捻じ込むようにして人が現れる。
僕に気付くと、驚いて声を上げた。
「うわっ。何だ。野獣だ」
野獣って何?
泥棒とかなら、分かるけど。
別に盗みに入った訳じゃないが、僕が侵入者なのは確かだ。
「おっと。変なのに見つかった。アナクロニストだ」
アァビィの声は、後ろから聞こえる。
僕は机から回転椅子に飛び降りて、後ろを振り返った。
木枠のニスが剥げたり傷が付いたテレヴィ画面に、アァビィが映っている。
「まさか。大昔のペットロイドに決まってら。クソッ。誰が送り込んだ。俺の技を盗む気だな」
クレイブ兄さんぐらいの年だろうか。
痩せて背の高い身体を作業服らしい、蛍光ピンク!の繋ぎで包んでいる。
身体は細くてもその通路は輪を掛けて狭いものだから、すぐには出て来られない。
「ラジニ。どれでもいいからテレヴィの電源を入れて、そこから出るんだ」
「テレヴィ、テレヴィってどれ?」
アァビィの映っているテレヴィじゃ、駄目らしい。
「そこにあるのはみんなだよ。何処に出てもテレヴィのある場所に僕は現れるから、君はテレヴィを探すんだよ」
積み上げられている物は全てテレヴィ。
もちろん安定の島の石の塊みたいな物だって、一種のテレヴィだった。
僕はすぐ側を見渡す。
テレヴィと一目で見分けられないだけでなく、どこが電源ボタンかも分からない物もある。
僕はボタンと見なしたスティックを押したり引いたり、渦巻き貝みたいな物を回そうとする。
「あ、こら、勝手に触るな」
手当たり次第にいじくると、コンセントみたいな二股ソケットがひっこ抜けて、ブラシの毛束の表面みたいなところに像が結ばれた。
フム。あれがスイッチオンで、これが画面って訳。
「ええっと。どうやって捕まえる? いや、何かでぶん殴っちまうか」
若者は、今にもこちらに出てきそうだ。
しかも、物騒極まりないことを思っている!
僕は選り好みしている時間はないので、水面にでも飛び込むような気分で両手を前に出して画像目掛けて身体を投げた。
弾け出た途端、僕は硝子に鼻をぶつけそうになる。
すぐ目の前に、硝子の板があった。
一メートルも離れていないずっと足元に、硝子を通して口をあんぐり開けて僕を見る、三つ四つの子供がいた。
帽子だろうか。ふわふわの、茶色の丸い耳付き帽子をかぶっている。
母親らしい人がその子と手を繋いでいるが、何かに気を取られて斜め反対下に顔を俯けているので、僕にも子供の様子にも気付いていない。
「ここ。ここ」
アァビィの呼ぶ声がする。
僕は振り向いて、振り仰いだ。
陳列棚のような所に、二本の棒を交差させたX型の物体が置いてあった。




