安定の島
一応クインセイレン号の船員も、何かあった時の為に長銃を構えて備えている。
植物は動いたりしなかった。
ヘルトリンク教授は植物に近寄り、棒で叩いてみる。やはり動く様子はない。中身は詰まっているらしく、カンと良い音がした。
教授はポォチから道具を取り出し、その植物を調べ始めた。
グラッドストン教授は、縄を持って近寄る。
「うむ。やはり胞子植物」
ナイフで薄片を取りガラス板に載せ、単眼鏡で眺め。
「毒性の有無が分かるまで、素肌で触れないように」
グラッドストン教授に、注意する。
グラッドストン教授は大人しく軍手を取り出して填めて、縄を植物の幹に掛けた。直径は、四十センチほど。
船員が手伝って、しっかり結べて外れやすい船乗り結びにする。
ヘルトリンク教授は簡易検査キットを使って、毒の有無を確かめた。結果は、
「既知の毒性は見つかりませんでした。ですが、無暗と触れない方がいいですね」
それは理想で、冒険の現実ではない。
言っているヘルトリンク教授にしてからが、他の植物を求めて胞子植物の林に進み出て行くのだから。
それに船乗り達。
臆病でもないし、愚かでもない。ただ現実を知っている。
難破してようよう無人島に上陸して水や植物性の食べ物、動物性の食べ物を探した経験のある人もいるようだ。
糞や足跡、食べ後などの、生き物の気配を探っていく。
グラッドストン教授が、島を眺めやりながら、ポツリと呟く。
「これは安定の島だな」
「安定の島?」
「科学好きの少年の君なら、知っているんじゃないかな。天然に存在しない重い元素ほど、人工的に作っても長持ちしないことを」
「知っています。安定の島と言う領域にあれば、崩壊までの時間が伸びると言うのでしょう」
「それぐらいの確率で、作り出されて保たれている奇跡に思えるよ」
確かに。
マントルの下の地下空洞の中の海と島。奇妙な植物に魚も。
「とりあえず私はそれほどすることも、できることもないから、ここでピクニックと洒落こむ用意をしないかね」
「はい」
僕は文句の付けようもないので、大きく頷く。
教授は、GLR号から食料をたっぷり詰め込んだバスケットを運び下ろす。僕は待っていられずに、
「教授。中身は何ですか?」
「君が現れるほんの少し前に焼いた、トルティイヤサンド。玉蜀黍の粉を溶いた生地で、様々な具を巻いた物。例えば、香料入りヨゥグルトに漬けこんだ鶏肉のケバブに、炒めた米とチィズ、トマトの辛いサルサソォス。おやつにも保存食にもなる堅焼きのビスコッティ、プレェンにナッツやチョコチップ入りに。飲み物は黒麦酒だが、君は当然、ジンジャアエェルだよ」




