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船出

「ああ。比較学で、親交のある魚類の専門家に問い合わせてみたが、地表上で見られる魚に全く同じ物はいないようだ」

 魚は、吸いこんだものの、餌ではないと判断して再び吐き出してくる。

 暫くそこらをウロウロしていたが、やがて深みへと戻って行った。

「さぁ、ラジニ君。君も押すのを手伝って」

 仕事を頼まれ、僕は舟の脇に戻る。

 

 グラッドストン教授は舟の右脇に、ヘルトリンク教授と僕は左に付いて舟を押す。二人掛かりでもグラッドストン教授には全然敵わないから、舟は左へ左へと曲がる。

 それでも一メェトルほど進めるだけで、舟は海に滑り落ちた。グラッドストン教授が、艫に結んだロォプを掴んで引き留める。

 

 ヘルトリンク教授が四つん這いで、舟の後部の物入れを伝って舟に乗り込んだ。

 

 次は僕の番だ。

 僕もいちおう這い這いをしたけれど、揺れは小さくて、立って歩くこともできそうだった。

 最後は、グラッドストン教授が乗り込む。

 

 教授は船外機の紐を何度も引っ張って、エンジンを掛けた。エンジンがブルブルと動き出し、舟を進め始める。

 

 今度は前の座席にヘルトリンク教授が、後ろにグラッドストン教授が座る。シィトベルトは締めないので、小さい僕は座席と舟の隙間に蹲っていた。

 

 船端から海中を覗いていると、長い鰭を揺らめかせた色とりどりの魚が眺められる。 

 僕は小さくなっているのに飽きると、隙間を動き回って物入れに座ったり、前部の物入れに乗って舳先に近付いたりした。

 

 気分はキャビンボォイ? 

 いや、船の猫か。

 

 船出前に準備してあったバスケットから、ヘルトリンク教授が瓶入りの飲み物を出して渡してくれる。

 僕は舳先の側に座って、そのジンジャアエェルを飲んでいた。

「教授。そう言えば、この舟は進水式をしていませんね?」

「おや。そうだな」

「遅れてもやらないよりは良い。舳先に掛けて航海の幸運と、まだ見ぬ島の発見を祈ってくれるかい」

「ええ。そうします」

「ついでに舟の命名も行うといい」

 瓶の首を舳先に打ち付けて割るところは省いて、ジンジャアエェルを掛けて僕は幸先のいい航海を祈った。

「グラッドリンク号はどうですか。教授達の名前を、繋いでみました。それに、幸運を繋ぐと言う意味もあるんです。冒険を手伝ってくれる舟には、ぴったりでしょう」

「君の名前がないな」

「僕は別に」

「いやいや。グラッドリンクR号にしよう。略してGLR号」

 GLR号。言葉の響きはなかなかだ。



 沖に出るほど辺りは、靄ってくる。

 海上は、霧が出ているみたいだった。

 

 不意に霧のカァテンの中に、のしかかるような高い影が見えた。

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