地の底への旅
小舟は、底面が滑る内に穴が開いて水に浮かべられなくなったら元も子もないので、アメンボのような浮きが付いていた。浮きは、予備もある。
小舟の中央に、ベルト付きの座席が直列に二席並んでいて、前部と後部は中身が飛び出さないよう覆いと仕切り壁で囲った物入れになっていた。
グラッドストン教授は前、ヘルトリンク教授は後ろの席で、僕は痩せたヘルトリンク教授の膝に座って、一緒にシィトベルトで括り付けられることになる。
既にグラッドストン教授が安全に地底海まで降りているので、心配がないことは分かっているが、僕は念の為に聞いておいた。
「でもマグマの熱は、どうなっているんですか?」
「石が断熱素材なのか、マグマこそ配管のような管の中にだけあるのかも知れないな。流石に洞窟の壁を、掘削しようと言う気にはなれないがね」
海に、動植物の住む島があったら、洞窟が割れてマグマが流れ込んだりしたら大変だ。海には魚だっているんだし。
洞窟の正面に据えられた小舟に、それぞれ乗り込む。僕が一番最後だった。
僕は骨ばったヘルトリンク教授の足に腰かける。ベルトを締めたら窮屈だったが、我慢できないほどでもない。
僕もだが、問題は。
「僕、重たくないですか?」
「子猫一匹乗せていられないほど、私の膝はガタついちゃいないよ」
なら、いいや。
学生達は幸運や無事を祈る言葉と、素晴らしい発見を願いながら、三人の乗った小舟を押した。
小舟が前傾して僕は前のめりになり、お腹にベルトが食い込む。
ヘルトリンク教授が腕で僕を抱え込んで支えてくれたので、マシになる。
小舟は斜面を走り出した。
頭上から空が消え、視界が遮られる。
外からの明かりはすぐに薄れる。
それでも真っ暗闇ではなかった。
移動遊園地などに出る、ロォラァコォスタァみたいだ。
暫く走ると、天井に薄青い光が見えてくる。
小舟には、速度が出過ぎないように、ブレェキも付いていた。
グラッドストン教授が、丸太の棒を使って時折地面を付いて力を掛ける。
青い光が見えた途端、グラッドストン教授は何度も棒を着いてどんどんスピィドを緩め、ついには壁に棒を押し付けて停めてしまう。
最初から約束ができていたらしい。
「ヘルトリンク先生、どうぞ」
「光苔の一種だよ。採取していく約束だったんだ」
ヘルトリンク教授は、僕へ説明をくれる。
アメェバのような不定形で、天井に張り付いて青く光っている物は、綺麗な反面、こう言う闇の中で見るからこそ奇妙な生き物のようで不気味だ。




