冒険への誘い
「同位体の植物が、見つかるかも知れないからね」
「まだ世間には発表していないんだよ。何が見つかるか分からないし、見つけてしまうことで何が起きるかも分からないしね。それに私達のような三流大の学者など、追い払われてしまう」
「私が植物を追い求めるように、彼は動物を追い求める」
ヘルトリンク教授は悪戯っぽく、僕にニヤッと笑って見せる。
「何か生き物もいるかも知れませんね」
「それも地上で絶滅した生き物など」
ヘルトリンク教授は更に面白がって、わざとさりげなさを装って言う。僕はこれにも驚きを隠せない。
「恐竜がですか!?」
グラッドストン教授自身は冷静だった。
「まぁ、そこまでは無理だろう。その環境に適応・進化した爬虫類両生類とか、でなければ原始的な哺乳類か何かだね。大型の恐竜を維持できるほどの食料は、ない筈だ」
「小型でも、肉食恐竜がいたら怖いですよ。集団で狩りをしたら。人間なんて弱そうな獲物と思われて、襲われたら大変です。島を見つけても、すぐに上陸しないで下さいね。海にだって、魚竜みたいなのがいたら」
「ああ、まー。海には襲ってきそうな物はいなかったな。発掘隊の食料の、固まり肉を仕掛けてどんな魚が来るか調べたが、小魚とそれに釣られた鯖ほどの魚だけだった。沖の方はどうか分からないけどね」
学生から、先生と呼びかける声が掛かる。準備が整ったのだ。
「さあ。年寄り二人の冷や水旅行に出掛けましょうか」
「君などまだ若者もいいところだよ」
グラッドストン教授とヘルトリンク教授は、軽口を叩き合う。
二人……。他はいないと言うことだろうか?
「舟に乗れる人数が限られていて、学生は連れて行けないのですか?」
「あと一人、二人分の余地はあるけど、学生は連れて行けないよ。まあ危険はないだろうが、若い人を少しでも危ない目に合わせる訳には、年長者の責任でできないからね」
グラッドストン教授が僕に眼を向けて、
「ラジニ君。君なら乗せてもいいが。君の先生に代わって、探索行に着いて来ないかね?」
「行きたいです。でも子供の僕は、連れて行っても平気なのですか?」
意地悪を言うつもりではないが、気にしない訳が気になって聞いてみる。
「君は猫。船の猫は幸運の印だからね。この探検の守り神に相応しいよ」
ヘルトリンク教授もそれに、頷いて見せる。
猫。なるほど。完璧な理由だ。
僕は地底海を探検する小舟を担いで洞窟内を降りて行くのだとばかり思っていたが、
「床面は大体ツルツルしていて、腰に綱を巻いて壁に掴まりながら降りて行くのはとんでもない骨だからね。トンネルを降りる時から、橇代わりに小舟で滑り降りることにしたんだよ」




