宇宙最強の悪
じ
ん
せ
い
な
ん
て
く
そ
く
ら
え。
と思った時には、オレの後の人生は大体決まっていた。
オレ。つまりは、風間龍之介、というオレという男の将来は、家族の絆なんていうものなど感じさせない両親の意思により、やりたくもなければ、楽しくも無い仕事へいつの間にか就かされていた。毎日同じ画面を眺め、毎日同じ手の運動を繰り返し、毎日同じように溜息をつく。というけだるさ満点の毎日を、ただけだるそうに繰り返していたオレ。
しっかし。そんな毎日に黙っているだけ器の大きいオレではない。こんな毎日繰り返していたら、命の糧が無くなるころには爪の先しか残ってないもんだ。
はっはっはっ。高笑いをお見舞いしてやろうか、はっはっはっ。
気分転換がてら、そんな屁でも鼻くそでもない毎日を、ちょこちょこっ、と変えさせてもらおうじゃねえか。
しっかし、人間っていうのは、気分転換をしようと思えば思うほど、毎日のそういう業務をしてしまうもんだ。へそくりを包み隠したことが、かれこれ十二回あるオレも、つい毎日の業務をバカンス気分で楽しんでしまうものだ。いや、それは少しやりすぎか?
まあ、かれこれへそくりも包み隠したことがあるオレは、この度、祝! とは言い難いだろうけど、めでたくも無いが、家族にとっちゃ有り難くも無い、有難迷惑でもない、そう。肝心なことをさっさと言わないオレのような男、風間龍之介。二十歳。お姉さん大好き。スイカには何もかけない派。年寄りには優しい。爪は毎日バラバラに切っているこのオレが、
悪になりました。
パチパチパチ。素ん晴らしい。ありがと。
ちなみに、宇宙最強です。
わーい。オレ、神様になったよ。産んでくれて、ありがと。両親、ありがと。
ふぅ、宇宙最強の悪、通称的に言えば最悪になったオレこと風間龍之介だが、実際悪になってもいつもと変わらない。家にいることが知られてしまえば、ピンポンダッシュされてしまうし、宇宙最強のオレが、宇宙にいたところで、隕石ダッシュされてしまうし、結局意地悪されてばかりのオレ、風間龍之介なのだった。
優しい人。つまり、オレを褒めてくれる人はいないのかだって? 驚くな。これはバリってるくらい奮起した話だぞ。明日起きたら転生してるくらいビビっちゃうぞ。もっと言えば、録画していたアニメが雷の凄技で録画失敗したくらいバリリってる話だぞ。なんと、いないのだった。驚いただろう。ああ、驚いただろう。ここまで盛るかというくらい盛ったが、いないのだよ。
はっはっはっ。高笑いを意地張ってやってみたぞ。はっはっはっ。
出会い系サイトをジャックして、オレ好みの、お姉さんを捕獲するべきなのか? それとも、しちゃうべきなのか? ま、オレ、宇宙最強の悪なんで、しようと思えばいつでもできちゃうんだよね。ということで、今こうして世界中の出会い系サイトをジャックしてみました。いやぁ~。可愛い子いっぱいいるねぇ~。可愛い子は、ね。でも、何でか分からないが、オレ好みのお姉さんが全くいないっていうのが、電気ウナギで痺れびれされた時くらいショックなんだよね。何で? どして? 何故いないの? こうなったら、無理やりにでも、画面越しから、ワープホールを展開させて、そのおっぱいと言う名の、胸を掴ませてもらおうじゃねぇか。では、捕まえちゃうぞ。失礼しま――
「ジ・エンド」
胸を捕まえたと思ったその瞬間、オレは後ろに放り投げられた。かつてなく嫌な悪寒がしたので、胸を掴んだ方の手で、そいつの身体を触ろうとした。が、人生史上、かつてないほど、度肝を抜いたギャグがさく裂したね。それはもう、涙、涙、涙。ナイアガラの涙、とも言える涙が出るくらい、面白いギャグだった。
「笑い泣きですか? それとも笑い塩水ですか?」
その人が、たぶん女性だろうが、言い終わった時には、部屋はナイアガラの涙で満タンだった。窓とか、玄関とか開けたらリアルナイアガラが外から見れるかもしれないが、オレは単純に、平然と、ただ笑った。
爆笑の風間龍之介である。
ぶくっぶくっぶくっ。ぶぶっくぶくぶく。ぶくっぶくっぶくっ。
その女性は、あらまぁ、なんと美しい肌色。まるで透明のようだ。ナイアガラの涙が透けて見えるぅ~。
そう、女性は透明人間だったのだ。身に着けている服や靴は、その場であたかも人がいるように浮かんでいるのだ。びっくらこいた。
女性は、涙の中を平泳ぎ潜水で、オレの顔付近までやって来る。
「凄い涙ですね。そんなにおっぱい触れたのがうれしかったのですか?」
女性はそうオレに質問を、さりげなく自分の胸元を触りながら、してきたのである。
ああ、うれしかったとも。うれしかったよ。うれしかったけれども。だけれども、悲しかったよ。虚しかったよ。触って呆れたよ。オレという、風間龍之介レベルの最悪が、見ず知らずの女性、しかもお姉さんに、しかも胸を掴んだのが、とても寂しかったよ。
はっはっはっ。目から塩水が止まらないぜ。はっはっはっ。
オレから溢れ出ていたナイアガラの涙は途端に切れ、逆に塩水が目から噴き出した。オレの人生は両親によって破壊されたのでは無かったんだ。真実を今、内から出せば、オレが自分で破壊していたんだ。情けねえぜ。こりゃ宇宙最強も汚名返上だな。
「あなたは自分で自分を壊していたんですね。分かります、その気持ち」
女性の身体が見る見るうちに、くすんでいく。透明から白へと形成されていった。オレはそれをただただ泣きながら見ていたね。不思議なくらい不思議だった。謎オブ謎。
「ただ、悔やんでももう遅いです。なぜならあなたは宇宙最強の悪なのですから」
女性はそう言うと、窓という窓を開けていく。リアルナイアガラの涙、ここに降臨。近所の人達、大びっくりだろうな、こりゃ。
水がどんどん引いていくと部屋の惨状が、はっきりくっきり、まるっきり分かった。そのまんまだった。買い換えようかと思っていた超薄型テレビも、割れ掛けていた食器の皿も、卑猥な動きにしていた超ハイテクフィギュアも、彼女が来る前と同じ状態になっていた。念のためテレビをつけてみると、これまたびっくり。綺麗に映るではないか。以前よりも遥かに、鮮明に。
「素晴らしい力でしょう?改めて自己紹介を。堺固超子と言います。人呼んで、宇宙最強の超能力。通称、最超ですわ」
彼女、堺固超子は、信号の点滅のように体を消したり表したりしながら、紹介をした。面白そうなやつだ。ちなみにオレ、風間龍之介もちゃんと紹介をした。真面目に、府目地目を感じさせないくらい丁寧に。
「よろしくお願いしますわね、龍之介さん」
やめろよ、「さん」なんて。恥ずかしいだろう。
「ところで龍之介さん。もう少ししたら、ここを出ていきますので、今のうちにやりたいことはやっておいてくださいね」
その言葉に疑問を感じたオレは、首を、どこかのヒロインかのごとく傾げた。
はっはっはっ。言ってる意味がよく分からないぜ。はっはっはっ。
高笑いをした直後、玄関が突破された。知らない男性、約五十名ほどによって。
「見つけたぞ、この女!」
「もう来ましたの? ではさようなら」
超子はそう言うと、オレの首元を掴みながら、その親しみを感じられる男たちに手を振りながら、テレポート、つまり、瞬間移動をしたのであった。
「わたし、超能力を使うと、なぜかあのむさ苦しい人達に追われてしまいますの」
おっと。それは中々のぶっ飛んだ人生だな。
つまり、だ。彼女、堺固超子の超能力は、すべて有料。即ち、彼女は宇宙最強の超借金女だったのだ。
こりゃまた、面っ白そうな人生を送れそうだ。ただし、平穏はしばらく訪れないだろうが。
はっはっはっ。高笑いでもしてねえと、この現実をの見込めそうにもねえ。はっはっはっ。
どうも、お久しぶり。初めまして、ぱれすです。今回書きました小説は、単なる思い付きです。今のところ連載にしようとは考えておりません。今のところは。ただ、書いている時、たびたびこんなキャラはどうだろうか、と考えていたりしたので、場合によっては連載になるかもしれません。あとは、評価と感想で決めようとも思います。