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第四章  決闘の始まり

 二人の騎士(ライダー)が決闘する当日。

 コウは、今まで以上に入念に整備し確認した不死赤鳥(フェニックス)を、フローリア様に見送られながら開始位置へと移動させた。

 今日は、マキシム様に勝ちたいと思って──いや、絶対に勝たねばならないからだ。

 その理由は、前日のフローリア様とファルク様との模擬戦後の事だった。


                      ●


 コウとフローリアが照れて固まっている所に、マキシムが騎士(ライダー)仲間と共に来て、コウに模擬戦による決闘を提案? して来たのだ。


 「コウ、明日の儂との模擬戦、決闘方式でやろうではないかッ! 儂に勝つ事が出来たら、フローリアを()れてやる!!」

 それを聞いて、ファルクを始めとした騎士(ライダー)が慌てた。悪い意味ではなく、負けた事の無いマキシム様に、コウが勝つのは無理だとの考えから、二人の関係が始まる前に終わってしまうのを(うれ)いての事だ。

 「まッ、マキシム様、それは幾らなん「え─いッ、黙らんかッ!! 儂はコウに聞いておるのだ!」

 ファルクの言葉を(さえぎ)り、マキシムはコウに問うた。

 コウは一瞬何を言われたのか解らず、(ほう)けていたが、慌てて──

 「──マキシム様ッ、それではフローリア様のき「わっ、私は構いません。寧ろコウが勝ってくれる事を祈ります!!」もち……が!!」

 それだけ言って顔を真っ赤にして俯いたフローリアの心を、訳知らず確認出来た事で、コウは覚悟を決めた。

 「マキシム様ッ、その決闘、受けますッ!!」

 「それで良し。明日を楽しみにしておるぞ!」

 マキシムはコウの背中をバシバシ叩くと、ガハハッと笑いながら去って行った。

 コウは今だ恥ずかしさに俯いているフローリアを見て、マキシム様の背中を決意を新たに見送るのだった。


                      ●


 「マキシム様、コウ、準備は宜しいか?」

 「おうッ!」

 「はいッ!」

 審判役のスライトリー侯爵が問うと、マキシムとコウは、何時でもとばかりに声を上げた。

 今回は見届け人として、仲間以外の者達も大勢見物に来ている。


                      *


 此処で少し竜同士の決闘[模擬戦]に付いて説明しよう。

 まず互いに、50メートル程離れた水上にて、相対する。

 審判は、中央から少し離れた水上に位置し、審判役の竜の離水が、開始の合図となる。

 互いは、水上から10メートル以上上昇したら、攻撃可能となる。

 後は、互いに自由に攻防し、審判が有効打と認めれば終了といった流れだ。


                      *


 審判のファルクが駆る平和白鳥(ブリュンヒルデ)離水直後、コウは、目盛りを0にしておいた自重制御装置で一気に10メートルまで上がり、左右の円等腕(ガスマニュピレーター)を展開した。

 すぐに牽制弾を撃とうとしたが、正面に幸福青鳥(フェアリー)が見当たらない事に気付き、反射的に下だと思い、直ぐに艇首を下に向けた。

 「ちッ!!」

 コウは、間近に迫っていた幸福青鳥(フェアリー)銃刃刀(ガンブレード)を、不死赤鳥(フェニックス)銃刃剣(ガンブレード)で何とか受け止めた──が、自重を0にしていた為、踏ん張りがきかず吹き飛ばされる。

 そこから始まったマキシム様の猛烈な連続攻撃を、ある時は楯で防ぎ、ある時は銃刃剣(ガンブレード)で弾き、ある時は躱し、ギリギリで何とか守りきった。


 マキシムは、開始の合図に幸福青鳥(フェアリー)を上昇させるのではなく、不死赤鳥(フェニックス)の方向に海面擦れ()れを最高速度で驀進(ばくしん)し、狙い通りコウの視野から消えて不死赤鳥(フェニックス)の下を取ると、幸福青鳥(フェアリー)を急上昇させ、左右の円等腕(ガスマニュピレーター)を展開して不死赤鳥(フェニックス)に斬りかかった。

 初手を含めて全てを凌いで見せたコウに、マキシムはしかし──

 「──儂の誤解だったか!」 と、呟いた。


 マキシムが、今回の決闘を思いついたのは、妹を餌に、全力のコウと勝負したいと(はか)ったからだ。

 当初は、コウが本気を出せば、儂が負けるだろうと思っていた。それにより、貴族達に気兼ねなく妹をコウに嫁がせる事が出来ると考えていたの……だが。

 今までと比べ、粘り強さは有るものの、不死赤鳥(フェニックス)の動き自体に変化が見られない事から、全ては、儂の誤解だったと気付き、二人に心の中で詫びた。 だが──

 『──だからと言って、手加減はせぬぞ。妹が欲しければ儂に勝って見せよッ! それに、それくらい出来ぬ奴に大事な妹は()れぬはッ!!』

 と、スモークを撒き一旦距離を取ろうとするコウに、心の中で叱咤激励するのだった。


 そして、話しは第一話の冒頭に戻る。





 

 

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