04
軽く目を通しながら、ナイトダイバーはひそかに苦笑していた。目撃された場所、目撃されたモノの見た目。彼にはどちらも覚えがある。ただ──これはナイトダイバー本人にしか分からないことだが──ちぐはぐだった。
主観が違うだけで、こうも綺麗にちぐはぐになってしまうのかと、呆れを通り越して、すごいなと思ってしまうほど。
おおざっぱに言えば、全て「見たこともない生物が、夜の闇から現れて、人をさらっていくのを見た」という情報にまとめられる。ただ、その生物の見た目だとか、見た場所だとか、時刻が少しずつ違うだけだ。
「証拠もないし、現実味がない話だから、警察とかにも相手にされてないらしいし、ニュースもまだ取り上げてないけど──」
「ストップ」
優菜の言葉を遮るように、ナイトダイバーが突然口を開いた。おそらく反射的に出た手が、マウスを操る優菜の右手に重なる。
「えっ、ちょっと、なにっ」
ナイトダイバーの突然の行動に、優菜が上ずった声をあげる。彼らの右手は恋人同士のように重ねられていた。ナイトダイバーの手は、長い袖のせいで指先しか出ていない。心拍数が跳ね上がった優菜は、空いた左手と顔をせわしなく動かすが、原因であるナイトダイバーが気にする様子はなかった。
気にする余裕がなかった、とも言える。パソコンのモニターを見つめる彼の横顔を見た優菜が、慌ただしかった挙動を止めたほど。歓喜と憎悪、困惑と希望を詰め込んだような、複雑な瞳だと、優菜は思う。こもった感情は不安定なのに、視線はまっすぐに一点を貫いている。
追って、優菜はモニターに目を向ける。真っ黒な背景。どす黒い赤のフォント。都市伝説ナイトハンター。その下に綴られた、いくつもの書き込み。あふれかえった大量の目撃情報。その中の一つが、モニターの中心に。