05
「残念だな。私は一つの提案をしてあげようと思っていたというのに」
大仰にため息をついて、スメラギは肩をすくめる。
「私はね、この娘を──橋越優菜を、キミと同じ存在にしてあげようと思っていたのだよ」
漆黒の瞳が見開かれる。
対して黄金の瞳は細められた。
「素晴らしいだろう? 肉体という枷からの解放。キミは本当の同士を見つけるわけだ……ヒトならざるものを、ね。あぁ、失敗については心配しなくていい。キミ以来、数回の失敗は繰り返しているが……橋越優菜は私たちのような魂のみの存在を感知する目も持っているからね。きっと良い結果になる」
スメラギの言葉が終わる。その後、ぞんっと空気の裂ける音が、路地の空気を震わせた。アスファルトの上に赤が一滴、二滴。
優菜の首を掴んでいたスメラギの手が、彼自身の頬に触れる。一筋走った赤い線から伝い落ちる滴に。吊り上がった口の端から、先が割れた蛇のような舌が現れた。赤のついた指先を、血液が付着したウロコを、舌が這う。
ナイトダイバーの表情は変わらない。
「言ったはずだ──」
漆黒で包まれた首元。その鎖骨と思しき場所から、黒は伸びていた。
刀を思わせる鋭さで、ナイトダイバーの首元から生え、優菜の頭上を通り、スメラギの頬を裂いたのは、黒い包帯。