YUI史
嫌いな奴は殺したいと考えています。
唯は違う小学校に通う篠田と友達になりまた、金曜日の夕方に博多湾の浜辺で会うことを約束し別れて祖父母が営む乾物屋まで自転車をこぎ急いでいた。
吉岡唯(ふふふ~ん♪初めて気の合う、私と考えが合う人間と友達になれたわ。まあ、中学生になれば誰でも捻くれるし私みたいな性格に皆なるんだろうけど、まだ6年以上はかかるのよね。
それに比べるとあの、篠田某とやらは人間が出来てるし熟してるは笑。
自分の目標も持ち・・私はまだまだ熟していないと思ったよ。
熟したまんこ!あっ!いけない・・この言葉は禁止用語ね。
熟したマンゴーと瓜の違いですな。
お腹すいたな、早く爺ちゃんや祖母ちゃんの家に行って、何時もの・・蒟蒻と巾着の似たやつと大根の炊いた煮物を食おう。
後は売れ残りの昆布の佃煮とかそんな物しかあの貧乏な家には出ないだろう・・贅沢は言えねえなキチショウメイ!ご飯不味いって言うと爺ちゃんや祖母ちゃんから平手が飛んできてぶたれるし我慢、我慢・・待ってろよ~爺臭い飯~君が好きだ~と叫び~たい。)
唯は上機嫌になりながらスラムダンクの歌を歌いながら交番を左に曲がり、祖父母が営む店が見えてきた。
寂れた大きい看板で、昆布 吉岡屋の看板が見えてきた。
自転車を止めて、今日は唯は止まるから着替えを入れたリュックを自転車かごから取り出して店舗に入った。
唯(ただいま・・爺ちゃん祖母ちゃん。今日は泊まるよ。)
唯がいつも通りポーカーフェイスなドライな顔で言うと、店の奥から祖父の吉岡和利が出てきた。
小柄だが何処か柔和で面長な顔立ちで、板垣退助のような髭を蓄えた優しい感じのする人だった。
吉岡和利(おお!唯か。少し遅かったな。俺はまだ9時まで店を開けていないといけないから家に上がって先に祖母さんと夕飯を食っておいてくれ。
おおい!祖母さん。唯が来たぞ。)
祖母の良子が出てきた。この祖母も面長で年齢の割には綺麗な方だった。
吉岡良子(ああ・・唯。来たんかえ。飯も出来たし早く飯食べて、風呂に入ってテレビでも見なさい。)
唯(うん!そうするよ。今日の夜はテレビで楽しみにしてる、木村拓哉と中山美穂主演の眠れる森があるから早く見たいんだ。)
唯は母屋に上がり卓のある場所に座った。唯が予想していたとおり皿には今日の売れ残りの昆布の煮つけ、中国産のタケノコの煮つけ、ホウレンソウのお浸し、大豆と乾物の煮つけが並んでいた。
唯(私の予想は・・此れほど当たるとは・・けど、また煮つけ~って言ったらぶたれるし、うちの家系はキツイ性格の人が多いから・・あえて口には出さないでおこう。)
唯はたまに人に見せる笑顔の裏では人に合わせるための計算をしていた。
此処が芸能界で大物になれる器であろうと後に自分を振り返った際に彼女は感じた。
吉岡良子(ほれ・・若い者は肉も食わねえといけないから、魚も用意したよ。
べラの煮つけだよ。お爺ちゃんの友達で壱岐の出身の藤川五郎さんがクール便で送ってくれたんだよ。)
唯(魚は久しぶりに食べるしありがたいけど・・べラって美味いの?)
その魚は赤く小柄の魚だった。
吉岡良子(べラって魚は九州の漁師さんの間では、捕れても海に捨てる魚なんだよ。まあ、イワシみたいに腐るほどある魚でホームセンターのコーナンで販売してる牛糞と混ぜて畑に埋めて肥やしにしたり、不況で寂れてよく潰れる定食屋で煮つけで出される魚がべラ何だよ。
まあ、食べてみたら美味いから食べな。
祖母ちゃんや爺ちゃんも食べるからキシシ笑。)
良子は不気味に笑いながらマルボロをポケットから取り出し、ライターで火をつけて吸った。
唯(あ~あ・・聞かなければ良かった。祖母ちゃんから優しい暖かい言葉を期待して、べラってどんな魚?と聞いたあたしが馬鹿だったよ。)
唯は祖母と煮つけオンパレードの夕食を食べてから風呂に入り、テレビドラマの眠れる森を見終わった。
時刻は11時前だった。
唯(キムタクも良いけど・・中村トオルも男前だよね。)
吉岡良子(お爺ちゃんは若い頃、中村トオルと良く似ていたよ。)
唯(えっ!そうなの!写真とかある?)
やはりここは子供なのだろう。祖父の意外な一面を知って孫の唯ははしゃぎまくった。
良子(あるよ!見るかい?)
祖母は押入れから古いかび臭いアルバムを取り出し、祖父の写真を見せた。
戦争中の時の写真でお爺ちゃんは軍服を着て軍の帽子を被り敬礼のポーズをとっていた。
唯(お爺ちゃん!若い20歳ぐらい?)
良子(お爺ちゃんは勉強ができたから、特攻隊や満州の出兵は嫌だったから憲兵の試験を受けて合格して反戦の戦争犯罪者や飛行機から鈍臭く落ちてきたアメリカ兵の捕虜を取り締まったりしていたんだ。
大坂の天王寺に勤めていたんだよ。)
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