↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/47

第二十八章 眩惑のパレス

 ユウたちはカジノ・ハーシュラームに到着した。


 カジノのホールには、目移りするほど種類が豊富なゲームマシーンが並んでいる。

 ほかにカフェ、浴場、プール、遊び疲れた体を癒すためのホテルもあり、快適に長期間の滞在ができるようになっている。


「ここはすごい」


 ユウは小走りでホールをめぐった。


 遊びたい。

 心置きなく、頭をからっぽにして過ごしたいと思った。


「わたしもここは初めてです」

 カラーラ姫は、身をこわばらせ、胸に手を置きながら、ゲームに興じる客に兄がいないか目を配る。


「あああー」

 エリオ・ソフィーがすっとんきょうな声をあげた。


 ホールの真ん中に展示する硝子ケースの中に、エストック・アザレアがあった。


「あれは、我がソードスワード家が教皇に献上した剣。どうしてこんな所に。どうやったら取り返せる? メダルを集めればいいの? 何万枚が必要?」

 エリオ・ソフィーはライトブラウンの頭をかきむしり、コインを投入してさっそくスロットを回し始めた。

「こんなところにあの剣があるのは、我が家の恥だわ」


「エリオさん、まず取り戻すべきは国王でしょう」

 アルト・プレヴィンが、エリオ・ソフィーの剣への思い入れに苦笑する。


 ユウの胸も熱くなっていた。

「どうしたんだろう。ふだんより真っ当な気持ちでいられない。何かの力が場を支配しているようだ」

 ユウは、ゲームにのめり込む客たちを眺めた。

 彼は腰にある天啓の剣に触れて、落ち着きを取り戻そうとした。


「男の人がこちらにやってきます」

 ソラナが着崩れを直して姿勢を正す。


 青みがかった髪の毛の無精ひげの男が、両手を広げ、笑顔で迎える。

「勇者一行のみなさん。我が宮殿、カジノ・ハーシュラームへようこそ。俺はオーナーのセルジュ・ジリカだ」


「シエナ王国から参りました、ソラナ・シエナステラです」

 ソラナは軽く一礼する。


 ユウは相手の視線の先を観察した。セルジュ・ジリカは笑顔のまま、ソラナの身体を見つめていた。

(まあ、そうだろう。ふつうはそこに目が行くさ)


「俺の名前は、ユウ・ナギノ。ソードスワードからやってきた」

 あいさつを返す彼の表情は緩まない。

(次のセリフは、ラベラーダ王はどこにいる? だからな)


「よろしく。勇者。おや、カラーラの姫君もいらっしゃる。楽しんでいってください。ラベラーダ王も当カジノをたいそうお気に召されたご様子で」

 相手のほうから王の話題を入れてきた。


「では、王に会わせてほしい」

「俺がこのカジノの王だ」

 セルジュは話を逸らし、ユウを威圧的に見下ろす。

(こいつはなかなかの悪党だ。残念ながら、天啓の剣を持つ俺が、怯むわけがない)

「この国の王に会いたい」

 ユウは単刀直入に言った。

 青髪の男の表情が一瞬、険しくなった。

「ラベラーダ王ならそこらにへんにいると思うがな」


 ・・・・・


「兄さん!」

 カラーラ姫は、スロット台の前に座るラベラーダ国王を発見した。

「ああ、カラーラ。元気だったかな」

 王は、ぼんやりした黒目を妹に向けた。

「ああ、じゃないわ。会うのは半年ぶりです」

「もう、そんなになるのかい」

 ラベラーダは、ふたたびスロット台のほうに顔を向けて、絵を回した。


「兄さん。もう帰ってきて。兄さんは、ずいぶん負けこんでいるの」

「そんなはずはないよ。僕は勝っているよ。メダルをきらしたことがないからね」

「それは、借りてやっているからよ。そのまま王宮の借金になっているわ」

 

 国王のところにユウとセルジュがやってきた。

「セルジュ・オーナー。あなたは国王にこんな仕打ちをしているのですね」

「いやいや、そう思われても困る。王は、王の意思でこのカジノにいるのだ。俺が口を挟む余地はない」

 セルジュは善人ぶって否定する。


 ユウはラベラーダの肩に手を置いた。

「どうやら、王さまは負けているようだ」

「誰だい、君は」

 ラベラーダ国王は、ユウのほうに顔を向けなかった。王とは知らず、あるいは知って絡んでくるやつは、すぐにセルジュが追い払ってくれるので危機感を持たなくてすむ。


「通りすがりの勇者だ」

「へえ、勇者かあ。勇者って、世界を救うとか、そういう役目のある人だよね。僕は幻覚でも見ているのかなあ」

「恐れ多いですが、たぶん見ているのではないかと思う」


 その時、ラベラーダ国王の目の前のスロット台が木っ端微塵に吹き飛んだ。

「!?」

「!?」


「勇者。待っていたぞ。天啓の剣をよこせ」

 鉄球を振り回す覆面の大男が現れた。

 ナンバー9だった。彼はスロット台の列の裏に隠れていた。


「ああ、夢かな」

 国王は、ぼんやりとした眼をしたままだ。


「くー、ゲームの邪魔をされたあ。許せない」

 すでに遊んでいたエリオ・ソフィーが怒って立ち上がった。

「姫。避難して下さい」

 アルトとソラナは、カラーラ姫をかばった。


「ナンバー9。お前が俺たちの馬車を襲った奴だとしたら、俺は安心できる」

 ユウは天啓の剣を鞘から抜いた。

「襲ったのは俺よ。一度勝ったからといって見くびるな。勇者一行はこのカジノで滅亡するのだ」

 ナンバー9は鉄球を振り回し、スロット台を次々と破壊していく。


「天啓の勇者よ。お前は俺と、絶対に戦わなければならない相手だ」

 ユウは、声がしたほうに目をやると、左手に夢幻眩惑の剣、右手にドラゴンランスを擁するセルジュ・ジリカが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。