真夜中のスーパーライブ
耳を澄ませば虫の声。そろそろ涼しくなりますかね?
夏から秋にかけての不思議な話作ってみました
「バチバチバチバチバチ パーン!」
今日もうちの近くの公園は爆竹の音がしている。
夜中になると付近の住人の事も考えずに、こういう多きな音の出る花火をやっては、若い男女の笑いや叫びが聞こえてくる。
「またか!? 」
わたしは、昔ながらの人間でどうもクーラーを付けて寝る習慣が無い。
自然な風が一番だ。クーラーの風にあたりながら寝ると、朝お腹の調子が悪かったり、なかなか起き上がれない。
それだけに窓は開け、網戸を閉め寝ている。
だから、外の音が良く聞こえるんだ。それだけに爆竹はいささかストレスになっている。
せめて21時でやめてくれそう思っていた。
「チッチッチッチ」
「なんだ? 」
ふと網戸越しから外を眺めたら虫の鳴き声だ。
「まだ秋は早いぞ〜 」
わたしは虫によびかける。虫は私の声にはお構いなしだ。しかし爆竹の音が鳴ると鳴き止んでしまう。
「お前もあの音は苦手か? 」
なんだか同じように感じてきた。
その日から毎日のように虫の鳴き声が聞こえる。
まだ昼間なのに、蝉の鳴き声に負けても、鳥達の鳴き声に負けても、風鈴の音に負けても、テレビの音にも、人々の声に負けても。
「チッチッチッチ」
「リーン・リーン チンチロリーン 」
「ギリギリギリ バーーァ」
まぁ、キリギリスは鳴いてたとしても君たちは夜でしょう。
わたしは不思議そうに音の方向に言ってみるが、その時は鳴くのをやめ、わたしが去ろうとするとまた鳴き出す。
「捕まえる気はないよ」
そう言ってその場をわたしは去る
そらからしばらくしてだ。
夕方くらいにやけに虫達が騒々しい。なんだろなってそんときは思っていた。
20時雨が降り出した。
今日は爆竹の音が鳴らなそうだ。花火に火が付かないから。
それに残暑と言われ暑い夜が続く中、今日は珍しく涼しいや。
しかし22時には雨がやんでいた。
寝てる間に暑くなるんだな。
わたしはそう思いつつも、いつものように窓を開け、網戸の状態の部屋で、お腹にタオルケットをのせ、布団に付いた。
いつもより涼しく感じたせいか、眠りにつくのが早い。
「Zzz... Zzz....Zz...... ん!?」
「チッチッチッチ 」
「ギリギリギリバーーァ」
「ゲコォゲコォー! 」
「リーン・リーン チンチロリーン 」
「チュチュン チュチュン 」
「バゥ!」
「ミーンミンミンミーーン 」
あれ? 君はちょっと前までうるさく鳴いてたよね
君はまだ鳴くの早いでしょー
それなのに
あきらかにリズムを刻む虫
所々に相づちを打つかのような生き物
メロディーを担当する生き物
夏虫、秋虫、鳥、夜寝るはずの生き物も関係なく大合唱だ!
人間が寝静まった頃にかれらのステージが始まった!
「今日は圧巻のステージだな! 」
わたしは目をつぶりながら彼らの合唱を聴く。
「今日の観客はわたしだけみたいですけど良いですか〜 」
そんな気分だ。
大きな音に聞こえるが聴いていて不愉快にならない。
むしろ癒される。
どこまでも広い空間の中で横になって寝ている。
それでも心に直接響いてくる感じだ。
いつしかわたしは深い眠りに付いていたみたいだ。
そして朝を迎えた。
やっぱり暑いけど、なぜかいつもよりストレスを感じない。気のせいだろうか?
しかしその日の夜は、また爆竹の音だった。それにまた寝苦しい。虫の鳴き声もちらほらだ。
昨日の大合唱は夢だったのか?
いや多分違う。きっと今年行われた夏のライブと、これから行われるライブ!
バトンタッチの盛大なスーパーライブだ。私はそう思う。
昼間ちょうど良い時間に雨が降り、爆竹や私達人間の出す音が静まる事を確信して、その夜みんなで音合せしたんだ。
窓を閉めてクーラーの生活だったら味わえなかったかもしれない。
なんかわたしは一つ得したような気がする。
このまだ暑い夜に、彼らの一日しか無いかもしれないの大合唱を聴けた事を。
あり得ない事があるんだったら、きっとあなたの為にのような気がします。
自然からなる音が、いつまでも私たちの心に良い音色として届きますように