4話
忙しすぎる+熱すぎる=作者炎上+ブログ炎上。
正直、形しかできてないが……すぐに直しにかかると誓いを立てるなう。
夕焼け色に染まる二年四組の教室の中、一人の少女は気だるげそうに部屋の窓枠へ腰かけ、階下にあたる昇降口を見下ろしていた。
碧色の瞳を陰らせ、とても憂鬱そうに。
つまらない、面白くない、楽しくない。ぐるぐると行き場のない倦怠感だけが胸の中に渦巻く。
下校時刻はすでに過ぎていた。昇降口から校門にかけてまでの間にも生徒はあまりいない。おそらく彼らとて学園祭の後片付け担当の生徒だろう、と少女は窓越しから静かに見ていた。
もう、かれこれ半時間ほどこうしている。なにをするでもない、ただ退屈そうに少女の手に弄ばれる細長いペンがくるくると何回も繰り返し弧を描いて――
床にポトリ、と落ちた。
「…………え?」
唖然と少女は目を見開き、固まった。
あ、え……? どうしてッ!?
ついさっきとは打って変わって、心中激しく動揺する少女の視線の先には、一人の少年と二人の少女がいた。少女らはじゃれあいながら少年を挟むようにして立ち位置を取っている。それはまるで仲のいい兄妹……あるいは寄り添う恋人のようにさえ少女には見えていた。瞬間、少女はバッと勢いよく立ちあがった。
――バキッ。
もう、いてもたってもいられなかった。
彼の隣に知らない女がいる。そう気づいた時にはすでに少女は飛び出していた。
誰もいない教室に、踏みつぶされたペンの残骸を残して。
「――あれ?」
そのことに気づいたのは、学校の門を出てすぐのことだった。
すでに習慣となりつつある穂夏をイジメ……かまってあげながら家路へ歩みをとっていると、ふとした違和感に俺は気づいた。
地球の重力から解放されたイカロスよろしくいつもよりやけに両手が軽いなと思ったら――カバンが、ない。
忙しなく身の回りを探してみるのだがポケットにも入ってないし、靴の中にも服の中にも入ってない。そもそもあったら怖い。
「どうしたんですか?」
傍から見たら自分の靴の中見たり服の中覗いたり変態的な行動をしている俺を、千秋はその視線に若干の冷たさを含ませて見た。
「いや、俺のカバン知らないか?」
おかしいなあ、さっきまでは確かにあったと思うんだが、と呟きながら問うてみる。
すると千秋はわかりやすいくらいにため息をついた。さっきから失礼だぞ、妹よ。
「はあ……まったく世話のかかるお兄ちゃんです」
「ハハハ、春基は相変わらずおっちょこちょいだねえ~~」
「穂夏爆発しろ」
「なんであたしだけ? ねえ、なんであたしだけなの!?」
なぜかを三文字で説明すると、ウザス。
しかし不満そうに頬を膨らませ、穂夏は睨みをきかせる。
「やっぱり教室かな? いや確かに下駄箱までは持ってきてたような……?」
「無視すんな! もっとあたしを尊重しろよッ!」
「穂夏――爆発するか?」
「………………ごめんなさい」
かまってほしそうなのでお返しに少々ドスをきかせて言うと、案の定、穂夏はヘタレた。弱っ!
そのようすになぜか首をかしげ、きょとんとする千秋。
「え、なっちゃん爆発しないの?」
「ちーちゃんのほうがひどいっ!」
「えぇ! 私が悪いの!? お兄ちゃんのせいじゃないの!?」
そう言う千秋自身は驚いているが、これは確かにどう考えても千秋のほうがひどい。つーか、人のせいにすんなよ。
「ないな……」
「あるよ! ひどいことあるよ! ていうか普通にひどいよね!?」
「いや、おまえのことはどうでもいいんだが……カバンがねえ」
「ひどすぎるッ!!」
俺のカバンのなにがひどいというんだ?
「しかたない、取りに戻るか。わりぃ、先帰っといてくれ」
「わかりました。早く帰ってきてくださいね」「……了解」
「おう」
二人にカバンを取りに戻る旨を伝え、俺は校舎のほうへ踵を返した。
穂夏は元気がなかった。