-9-
第3恒星系のワープステーションを出てから、およそ1日が経過していた。
突然、ルーパス号艦内に緊急警報を告げるサイレンが、鳴り響いた。
(ちょっと、予定より、ずいぶん早いんじゃないの?)
エリナは、工作室でサイレンの音を聞き取ると、手にしていた、製造途中の小型の装置を、丁寧に収納ケースにしまい、ブリッジへ向かった。
ブリッジには、既に、ロウム、ミユイの姿もあった。
「どういうこと?緊急警報を鳴らしたのは、自動警戒装置みたいだったけど・・・」
エリナは、ロウムに聞いた。
「不測の事態・・・いや、ミユイさんは予測していたみたいだから、想定の範囲みたいなんだけど・・・」
「変な言い方しないで・・・海賊?」
「そうです」
ロウムは、はっきりと肯定した。
「不測の事態ってことは、例のバローギャング団とかじゃないってことよね」
「追ってきていたみたいです」
「追ってきたって?
ルーパスのセンサーにかからないように、ワープステーションからここまで、追ってきていたっていうの?」
ルーパス号の警戒センサーの整備をしているのは、エリナ自身である。自分の整備したセンサーに引っかからずに、この1日という距離を追跡してきていたということについて、エリナはショックを隠せなかった。
「センサーを妨害する干渉波を作り出していたようですね」
ミユイが、こともなげに言う。ロウムいうところの『ミユイにとっては想定の範囲内』という言葉を信じるとすれば、冷静でいることは、むしろ当然であろうと思えた。
「エリナさんのせいじゃないですよ」
ミユイは続けた。
「この船は、エリナさんの技術で確かに、すばらしい設備を擁しています。でも、どんなにすばらしいハードウェアを作り出しても、それを生かせないソフトウェア技術では、絶対に、大きな穴を生じさせてしまいます」
「僕の判断が不十分だったことは認めるよ」
「ロウムさんの判断も間違っていませんし、このクラスのクルーザーを操る情報通信士としては一流であることは、間違いないんです
ただ・・・相手が、ちょっと異常なくらい執着心を持っていたことまで想定の範囲に入れていなかったということだと思います」
「執着心って・・・」
そんな、やり取りをしている、ロウム、エリナ、ミユイのいるブリッジへ、キリエとソランも入ってきた。
「メッセージが入っています」
『お前らのメインメカニック・・・俺に、よこしな』
「これって、エリナのこと?」
「メインも何も・・・うちの船にメカニッククルーは一人しかいないからね」
「ほかに、メッセージは・・・」
「今はまだ、受信していない」
「でも・・・」
「うん、やっぱり来たよ」
『通信回線を開け!』
「どうする?」
エリナは、警戒センサーの表示モニターに眼を移し、敵の座標を示す箇所が映っているか確認しようとした、その瞬間・・・
そのモニターに、はっきりと見慣れない男の姿が映し出された。
『とりあえず、交渉といこうじゃないか』
ソランが、対外通信用のマイクを手に持った。
「言っている意味がわからないが」
『俺たちは、海賊じゃない・・・まぁ、たまに、ちょっとばかり、荷物を多めに運んでいる船から、生活物資を分けてもらったり、ちょっとばかり可愛い顔をした女を攫って・・・じゃねぇな・・・その日仲良くなった女と愛を確かめあったりするくらいのことはやるが』
(そういうのを、海賊って呼ぶんじゃない)
自分たちの映像を送るつもりは、さらさらなかったが、モニターに向かって、エリナは、普段はあまりみせないキツイ表情を作った。
『そう、おっかない顔するなって・・・』
(え?
まさか、こっちの映像が漏れてる?)
『よく探したほうがいいよぉ・・・セカンドインパクトにいた時間で、いくつ、盗聴器をしかけられるか、よく計算すれば、わかるだろう?』
「エリナ、明らかなハッタリだ」
「わかってるよ」
「僕たちは、エリナがルーパスをどれだけ大事にしているか知ってるから、潜入されるようなこと絶対ないってわかってるよ」
そのタイミングで、ようやく、イチロウが姿を現した。
『俺たちも、できれば手荒な真似をしたくはねえんだ。本音は、次のレースで勝てるクルーザーを、そっちのメイン・メカニックさんに作ってもらいたいってことだけなんだからよ。ここは、おとなしく言うことを聞いたほうが、いいんじゃないかなぁ』
「名乗りもしない海賊の言うことを聞く気持ちは、これっぽっちもないわ」
『おっと、これは失礼した
俺たちは、ジュピター・アイランドってチームを作ってる。
メイン・パイロットは、俺じゃないから、俺の顔はしらねえんだろうが、ジュピター・アイランドは知ってるんだろう』
「前回のレースで、7位のチームだ」
確かに、『ジュピター・アイランド』というレースチームが、この時代の1つの人気スポーツである【太陽系レース】にレギュラー参戦しているチームであることは、イチロウ以外のクルーは知っていた。
イチロウが、参戦しようとしているレースも、このレースのことで、規定の出場資格を満たし、規定の参戦費用さえ払えば、誰でもスポット参戦が、できるのである。
『優勝できるクルーザーさえ作ってもらえれば、それで充分なんだからよ』
「断ります」
エリナは,きっぱりと言い切った。
『交渉決裂か・・・』
そう言うやいなや、ルーパス号の側面に、衝撃が走り、艦内が振動した。相手のビーム砲から放たれたの光の束が、命中したのである。
イチロウが、エリナを見る。
「これくらい・・・あたしのルーパスなら耐えられます・・・心配しないで」
確かに衝撃は激しかったものの、船体破壊音は聞こえなかった。
『さすがに、太陽系で一番のメカニック・・・情報技術は、下の下だが、船体の強度に関しちゃ太陽系一ってことかい・・・この眼で確認しちまったからには、諦めるわけにはいかないな・・・お嬢ちゃん』
「何度、撃ってきても無駄よ」
『そのようだな
もっとも、俺たちも、それぐらいは想定の範囲内だ・・・
それに、まぁ、撃っちまったからな・・・』
エリナも、今のビーム砲の砲撃を浴びたことで、次の厄介ごとを想定していた。
「今の『超高機動警察隊』に気づかせるには充分な熱量があったな・・・」
「たぶん、それもあいつらの狙いっぽいね」
ソランの呟きに、キリエが応える。
『お嬢ちゃん・・・賭けをしないか?』
「賭け?」
『今の俺たちの攻撃で、『超高機動警察隊』がやってくる・・・定期巡回のあいつらが、ここに到着するまで、あと、30分・・・いや、あいつらの機動力と、燃料の無駄遣いっぷりからすれば25分ってとこか・・・
その時間内に、俺たちが、あんたらの船に、潜り込めたら、俺たちの勝ち・・・
逃げおおせることができたら、見逃してやるってルールで・・・まぁ、賭けというか、ギャンブルゲームってところか』
「見逃すもなにも・・・」
「やるしかなさそうだな・・・ソラン」
「ロウム・・・脱出の指示を出してくれ・・・一番手薄なとこを突破しよう、『超高機動警察隊』が来たら、逃げるのは不可能だ。売られた喧嘩とはいえ、戦闘状態になったら、連中、眼を輝かせてやってくるのはわかりきっているからな」
『超高機動警察隊』・・・この時代の海賊を取り締まることを目的に結成された警察隊であり、最新鋭のクルーザーを使用し、ブースターパックを常時使用することで、超高速の戦闘飛行を容易にこなす。
交戦をする船体を発見した場合は、両者に対して、拿捕・逮捕権限を有する組織である。
「今、脱出エリアを探してます。もう少し、時間を・・・」
「ミユイ・・・あの作戦使えるんじゃない?」
「うん、そのつもり・・言ったでしょ・・・想定の範囲だって」
「決まりね・・・イチロウもよろしく」
「ちょっと、エリナ」
「ギンもミリーのサポートをお願い
ロウム・・・4人であの海賊たちの足を止めます・・・ポリスが来るまでに、脱出エリアを探し出して・・・
ルーパスは、もちろん、あたしが舵を取るから安心して・・・
もう、あと22分くらいでしょ、ポリスが、来るまでに」
「エリナ」
ビーム砲程度ならば跳ね返すことのできるルーパス号の船体ではあるが、さすがに、ミニ・クルーザーに取り付かれて、直接船体にビームその他の火気による攻撃を受ければ、傷ついてしまう。
エリナは、ルーパス号の舵をしっかりと握り締めた。
敵・・・敢えて敵と呼ぶことにする。敵のあやつるミニ・クルーザーは、既に、肉眼での目視も可能なほどに迫っていた。
『イチロウ、Zカスタム、出ます』
いつの間にか、カタパルトデッキにZカスタムを移動させていたイチロウが、ミユイをナビゲータシートに載せ、発信許可のコールをエリナを送った。
「とりあえず、気分だけでも・・・」
そう言いながら、イチロウは、Zカスタムのコックピット中央に取り付けられているオーディオコンポのCDスロットに1枚のCDを挿入した。
軽快なアップテンポの前奏に続いて、マリーメイヤ・セイラの歌声が、Zカスタムのコックピット内に響く。
そして、その声のリズムに乗るようにカタパルトから射出されたZカスタムは、ルーパス号に迫る1機に向かった。
『ミリー・・・コゼット、カタパルトスタンバイOKです。エリナ、あたしたちはブリッジ側面にドッキングすればいい?』
『射出後、ルーパスの左耳にドッキングして、そこから・・・狙い打って!!』
『りょうかい!!ミリーとギン・・・二人揃って、ザクIスナイパー仕様コゼットカスタム・・・援護射撃に行きます』
「・・・いろいろ違ってるけど・・・
がんばって持ちこたえてね・・・イチロウは、あまり当てにならないから」
エリナの優しくささやくような声が、ミリーの耳に届く。
「聞こえてるよ」
イチロウから、すかさず応えがあった。
本来、Zカスタムは、レース専用に改造を施された機体であるため、戦闘には向いていないが、第2恒星系ワープステーション・セカンド・インパクトを出る前に、ミユイの作戦を遂行できるように、ペイント弾を発射するための改造は完了していた。
イチロウにとっては、初めて体験するZカスタムによる戦闘飛行だ。
Zカスタムの操縦桿は、そのまま、ステアリングホイールが使用されている。
その右手の位置に、ペイント弾の発射ボタンが付いていて、左手の位置に照準合わせのためのサーチセンサーコントローラがついている。
ビームセンサーにより、敵の機体をロックオンすることで、Zカスタムは、敵との距離を一定に保つ擬似ホーミング状態となる。
その状態になって初めて、右手の発射ボタンによるペイント弾の発射が可能になるのである。
この仕様は、どんな手違いがあっても、相手を殺さずに済ませるための方法として、イチロウとエリナが相談して決めたことだった。
しかし、わずかなシミュレーションをしただけで、この微妙な照準を相手に合わせることが、至難の技であることを、21世紀で戦闘訓練を全く経験したことのないイチロウは、事実として認めないわけにはいかなくなった。
今、相対している敵も、こちらに照準を合わせて、当たればラッキーと言わんばかりに、
実弾のバルカン砲を、むやみやたらに撃ってくる。
その実弾回避については、ナビゲータを務めるミユイの口頭での指示が、的確に行われる。
「ライト」
「レフト」
「ダウン」
「アップ」
短く、単発で発せられるミユイの言葉に従い、イチロウは、言われたとおりに、ステアリングを操作する。
車体裏・・シャーシ部分と、前後の装飾用のエアロパーツに取り付けられたバーニアの微妙な出力制御により、宇宙空間であっても、ストップ&ゴー、旋回、急発進、急加速といった、イチロウが思い描くとおりに、Zカスタムの挙動はコントロールされる。
「敵、7番機に着弾!!」
それまで、回避行動の指示しか発していなかったミユイの口から、敵機体への着弾の確認を告げる言葉が発せられた。
ミリーの操縦するコゼットから発射されたペイント弾が、Zカスタムの右側面をすれ違う敵の機体の脇に、命中したのである。ペイントの色は、5人で取り決めたとおりの、鮮やかな金色。ミリーの髪の色である。
ちなみに、イチロウの撃つペイント弾の色は黒と決められていた。
ミユイが、ナビゲータシートにセットされたキーボードで、着弾したペイント弾に仕込まれている無線操縦コントロール用チップに、すかさず信号を送り込む。
取り付けたチップとの接続は、問題なく瞬時につながる。
そして、その接続の先、敵機体の心臓部のブラックボックス化された制御ユニットのCPUへの進入経路を、ミユイが、手元のキーボードで探る。
正面を向いたイチロウにも、高速で、カタカタとミユイがキーを打鍵する音が伝わってくる。
「敵、12番機に着弾!!」
ミリーの2射めが、正確に、敵の機体を打ち抜いたことをミユイが、キーボードを操作する手を休めることなく告げる。
「パスワードは、初期値のままね。これなら、楽勝」
ミユイが『7番機』と呼んだ敵の機体のOS操作を可能にするパスワードを発見したミユイは、すかさず、OSの設定を、完全初期化する。
この時点で、7番機は、操縦士による制御をすることができなくなっている。
さらに、ミユイは、あらかじめ、OSのインストール用に準備してあった文字列の転送実行をする。
同時に、12番機も、同様のOSの上書きをして無力化した。
その後も、ミリーが狙い打ち、その金色のマーキングがされた機体をミユイが次々と無力化していく。
Zカスタム内のオーディオコンポから流れ出るセイラの歌が、2曲目に切り替わった時点で、ミリーとミユイのコンビによる、敵機体の無力化は、21機を数えていた。
「どう?わたしの催眠術も、少しは役に立ったかな?」
ルーパス号を、取り巻こうとした敵のミニ・クルーザーの大半を無力化することができたことを確信できたところで、ミユイは、初めて、操っているキーボードから、視線を離し、イチロウの横顔を見つめて尋ねた。
「ミユイが優しいんだってことは、わかった」
「イチロウだって・・・
敵を殺したくないって・・・
そう初めにいったのはイチロウだよ
わたしは、その手助けをしただけ」
「でも、無力化した敵の機体が、お互いぶつかるかもしれないって・・・
そんなことを考えるゆとりは、俺にはなかったよ」
「エリナさん目当ての海賊なんか、死んじゃえばいいのにって、ちょっとは、思ったんだよ」
「気持ちはわかる・・・」
イチロウは、ミユイが言う意味と自分のいう意味の微妙な違いに、気づいていない。
まだ、10機程度残っている敵ミニ・クルーザーが、実弾を使ってきているため、イチロウも、気を抜くことは決してなかったが、ミリーが、精密射撃で、敵機体のほとんどを打ち抜いてくれていることに安心し、回避行動だけに専念することにした。
苦手な射撃をすることは、もう考えなかったが、ルーパス号に近づこうとする敵のミニ・クルーザーを捕捉すると、その機体の背後に回り、威嚇行動をすることは、怠らなかった。
そのとき、
「イチロウ・・・チャンス!!」
ミユイが叫んだ。
「え?」
口では、疑問符を発していたが、反射的に、左手の照準で、敵機体を捕らえていた。
照準された敵機体に対しロックオンを示す十字キーのマークが、緑色から赤色に変化している。
「撃って」
追い討ちをかけるように、ミユイがイチロウに指示を出す。
敵の機体に、黒い色のペイント弾が張り付いたことがイチロウの眼でも確認できた。
すかさず、ミユイが、無力化するための、手続きを済ませる。
「撃墜確認!!やったね、イチロウ、えらい、えらい」
わが事のように喜んでくれるミユイを可愛いと思いながら、イチロウは、横目で、ミユイの表情を見た。
ミユイの視線の先に涙が浮いているように感じたが、イチロウは、そのまま凝視して確かめたい気持ちを抑え、すぐに、視線を正面に戻した。
「この歌・・・好きかも・・・」
セイラから渡されたCDには、セイラの声で、21曲が録音されていた。その中の5曲は、イチロウが知ってる2011年までに発表された曲だった。
今、流れているのが、その2曲目。この戦闘が開始されて、まだ10分も経っていないことに、イチロウは気づいた。
『イチロウ・・・ミユイさん、ありがとう』
エリナからの通信が入った。
『正面突破で、この海賊たちを振り切ります。着艦して』
「わかった」
「でも、まだ全部は殲滅できていないですよ。
追いかけられるかもしれないし、このままついて行きます」
『そう?イチロウ、ついて来れる?』
「Zカスタムは、最高速度なら、ルーパスにも負けないんじゃなかったっけ?」
『それは、わたしが、操縦すればの話でしょ・・・もっとも、イチロウは、操縦より戦闘のほうがセンスいいって、よっくわかったから、今度は、ちゃんとシューティングも、シミュレーションプランに入れとくことにするね』
「エリナも、そういうイヤミが言えるんだ」
『イチロウくん・・・』
ミリーが通信に割って入った。
『エリナのイヤミは、いつものことだよ。気づいてないとは、イチロウくんの鈍さも、筋金入りだね』
既に、ミニ・クルーザーを含む敵船隊を置き去りにしたことを確証したイチロウたちは、ようやく緊張から解かれて、口から冗談も出るようになった。
2曲目の「Eternal Find」が終わり、3曲めの「暁の炎」が始まった途端、ミユイが、その歌を口ずさみ始めた。
「これも、俺が知ってるくらいだから、ずいぶん、前の曲だよ。何で知ってるんだ」
「さっきの2曲もちゃんと歌えるよ」
ミユイは、口ずさむ声を、いったん停めてから、イチロウに微笑みながら返事をした。
「もしかして、ガンダムファン?」
「さっきのというか、なぜか、わたしの頭の中には、たくさんの過去の曲がインプットされちゃってるんだよ」
「何でも歌えるっていうこと?」
「何でもってわけじゃないんだけど、たぶん、父さんが、面白半分で、いろんな曲を覚えさせたからじゃないかな?イイ曲だっていうのはわかるんだけど・・・全然、その曲に思い入れとかってないんだ
友達と一緒に聞いた思い出もないから・・・
ただ普通に聞いただけだと、(この曲知ってる)って思えるだけの話・・・歌えるけど、何にも感動とかないしね」
なぜか、さびしそうな物言いではあったが、ミユイが沈んでいるのではないことを感じて、イチロウは、少し笑った。
「今のこの曲・・・次に聴いたときは、今日のこと、しっかり思い出せると思う」
そうやって、ミユイは心からの笑顔で、また、オーディオコンポから流れる歌に、自分の声を重ねる。
ミユイが、音楽を、楽しんでいることが、イチロウには、よくわかった。
「そういえば、さっきさ・・・」
「さっきって?」
「パスワードが、初期設定とかって言っていたけど、そんなことも覚えてるのかい・・・」
「ほとんどの説明書は、たぶん、みんな覚えてると思う。普通の子は、6歳で、教育課程が、終了しちゃうんだけど、わたしの場合、父さんが、なんか色々細工したせいで、仕事に就かないで、ずっと15歳まで、記憶操作されていたから・・・
戦闘機や、宇宙船、どんな物でも、説明書という形で電子書籍に書かれたものは、全て、わたしの頭に入っているみたいなんだ
もっとも、説明書とおりじゃなくっても、クルーザーに搭載されてるOSは、割と単純だから、すぐに、パスワードまでは、たどりつけるよ
情報公開になってる分、今のほうが、イチロウのいた時代よりは、セキュリティは緩くなってるのは間違いないと思うしね。それに、誰かに直されても、自己修復で、一定時間経つと、元通りになる物も多いから
だから、今の機械は、破壊されなければ、ほぼ永久に使い続けることができるんだよ」
「そうか・・・」
「ということで、あんまり説明とかするのって、うまくなくってごめん」
「そんなことはないけど」
そこで、ミユイはいたずらっぽく笑う。
「イチロウくんの望む回答になっていましたか?」
予定では、第3章終わりの回だったのですが、もうちょっと第3章が続きます。