第8話
「千影様、百合はよるところがあるので先に行っててください」
学校に着いて、音楽室に向かう途中、百合はそう言って
にこやかにあたしの傍を去って行った。
嵐みたいな子ね。
あわただしいったらないわ。
「はやく戻ってきなさいよー」
廊下をダッシュする百合に向って手を振った。
「はいー。すぐ戻りますから―」
ぶんぶんと手を振り返す百合。
手、とれるわよ。
「あ、千影さん」
音楽室の前で待機する1人の不良。
昨日見たスキンヘッドの兄ちゃんじゃない。
名前は……。なんだっけ?
忘れちゃった。存在感あんまりないからなー。
「原田です。今日、新入生をつれてきましたんんで」
原田だ。
思い出した。
あ、これじゃ思い出したに入らないかな。
「新入生かぁ」
こっちも忘れてた。
新入生の選別やらないと。
うちの不良軍団に入れるかどうかの。
毎年恒例のイベント。
まぁ、ほとんど入れちゃってるけど。
人数多いことにこしたことはないしね。
だから、不良が増える一方。
え?卒業するからプラマイゼロだって?
そんなことないわよ。
あたしたち川崎中学は矢野高校っていう高校と
同盟みたいなのを組んでいる。
実質は主従関係みたいなのだけど。
だから、高校の方に中学の時の不良がにたまっていく。
高校じゃ、単位とらないと卒業できないからね。
そのせいで、どんどんたまっていくの。
「おい、千影さんがきたぞ!」
原田が音楽室の扉を開けた。