第6話
「おはよう。幸弘叔父さん」
「ああ、おはよう。ひなちゃん」
今日は余裕をもって起きることができた。
いつもは遅刻寸前。
授業にじゃないよ。音楽室に。
だから朝ドタバタするのにも幸弘叔父さんは慣れてる。
だけど今日は6時半に起きたから、びっくりしてる。
もー、あたしをなんだと思ってるのよ!
「髪、ボサボサだよ。とかしておいで」
近くにおいてある手鏡であたしの現状を確認。
あー、これはひどい。
惨劇のあとみたいになってる。
大きな鏡のある場所まで行って、ブラシで丁寧に髪をとかす。
胸下まである焦げ茶の髪がいつもみたいに戻っていく。
このままなおらなかったら、どうしようかと思った。
だって、これじゃ学校にも行けないよ!
あたしも一応髪を染めている。
金髪とかは嫌だから、焦げ茶を選んだ。
ほんとは黒いままでもよかったんだけど、やっぱりそれはね。
不良の威厳が台無しになっちゃうからって言われて染めたの。
それに、幸弘叔父さんの迷惑にはなりたくなかったし。
「いってきまーす」
8時になったから家を出る。
家の前には百合。
「千影様!おはようございます」
「……」
……何でいるの?
あたし、別に約束してるわけじゃないし。
そもそも百合に住所教えたっけ?
この子、もしかしてストーカー?
「百合、ずっと待ってました」
何分待ってたの?
いつからいたの?!
聞けない……。
怖くて聞けない。
ていうか、待ち伏せの間違えじゃない?
「危険ですから、百合が行きと帰りをご一緒させていただきます!」
「御遠慮させていただきます」
……この子、やっぱり危険だわ。
今すぐ警察に……!
「ちょ、ちょっと!」
「おじさーん、お金あるんでしょぉ?お小遣いちょーだーい」
近くの路地から話し声が聞こえてきた。
「百合、静かにして」
1人で話を進める百合をひとまず黙らせることに成功した。
「ほらー。いっあいあるじゃーん」
路地をそっと覗く。
そこには制服を着た2人の男子学生。
あの制服は……。
「紀乃川中ですね」
いつの間にか横にきていた百合があたしが答えを出す前に言った。
紀乃川中……。
あそこは、最悪の中学校。
あたしたちの学校と近いけど、仲はものすんごく悪い。
何かあるたびに喧嘩してる。
だって、本当にあの中学校は最悪。
あたしが女王になったからにはあの学校はつぶしてやらないといけない。
そう考えてたけど、早くもあいつらと会うことになるなんて。
偶然にもほどがあるわ。
朝から騒動起こして。
ほんっとうに面倒な奴らだわ。
あたしがぎったんぎったんにしてやる。
「百合、下がってなさい」
「いえ、百合が行きます」
下がってなさいって言ったのに、百合はあの2人の前に躍り出た。
あの子……。あたしの命令を無視したわね。
「なんだぁ、お前」
「こいつ、川中じゃん」
「へぇー結構かわいいし」
「じゃ、お前、おれたちと来ないー?」
2人がケラケラ笑う。
ふざけんじゃないわよ。