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第33話

「皆さんにはすでにお伝えしていますが、渡辺さんが転校してきました。

さぁ、どうぞ、渡辺さん」



学校案内が10分の1ぐらい終わったところで、チャイムが鳴った。


毬によると、授業開始の5分前になるチャイムらしい。

お嬢様方はそれを聞いて移動するんだと。


あたしと毬はどうやら同じクラス。

途中まで一緒に教室に向ってたんだけど、校内放送で呼び出された。


そしてまた校長室に逆戻り。


そこでお菓子とお茶を出されたから、そこで、まったりゆっくり。

佳彦さんしかいないから、マナーなんて気にしなくていいからいい。


がつがつ食べて、教室へ。


さっき、校長室まで案内してくれた女の先生が担任らしくて、

合図したら教室に入ってきて、と言われた。


合図ってどんな合図?

聞きたかったけど、先生はにこやかに教室へ。

廊下で1人取り残された。



先生が机の隅で小さく手招きしてる。

どうやら、これが合図みたい。



あたしは、背筋を伸ばして教室へはいる。

きっちりと整えた制服。パリパリしてて、気持ち悪い。


我慢我慢!




「自己紹介をお願いしますね」


先生はそれだけ言って壇上から降りる。


って、何を言えばいいの?

個人情報は漏らしたくないしなぁ。



「わたくし、渡辺日向と申します。ふつつか者ですが、どうかよろしくお願いいたしますわ」


笑みも忘れずに。


普段なら考えられないほどおしとやかに自己紹介した。

自分で自分のこと、おかしい子に思えた。


しばらく自己嫌悪に陥るあたし。



教室の隅にいる毬が笑いをこらえてる。

どうやら、あたしのおしとやか自己紹介がつぼにはまったようだ。


毬は笑いをこらえるのに必至である。

あたしは怒りをこらえるのに必死である。


あたしはあと30秒で爆発しそう。

だから、ちゃっちゃと席に着きたいんですけど。



「一番向こうにある、森本さんの横の席に座ってもらえる?」


先生はあたしの表情を読み取ったのか、速やかに指示をする。


おい、先生すごいな。

侮れないぞ。


要注意人物として、あたしのノートにのせておくことにした。





「ちょっと、日向。あんたほんと裏表激しいわね」


始まった1時間目の途中でボソボソと毬が話しかけてきた。

裏表って……。


あたしだってばれないようにするの大変なんだからねっ!



先生がこちらを見る。

やばいやばい。


こっちにもばれるところだった。



『お昼、一緒にどう?』


先生に見つからないように、ノートの端に書いて毬に見せる。

席が隣だからできる技だ。



『いいわよ。いい場所知ってるからそこで食べましょう』



毬も自分のノートの端に書いてあたしに見せてくる。


かくかくとした文字が毬らしい。




風が窓から入ってきた。


あたしたちの髪を揺らす。



渡辺家に養子に来る前に、あたしは髪を黒に染め直した。

髪も切ろうかなって思ったんだけど、それはやめた。


この髪はお母さん譲り。お母さんにそっくりだから、切るのはやめた。



前よりも、髪がサラサラになった。

ありすとありさに言われて、髪を綺麗にしたからね~。


シャンプーとかリンスとかを駆使して。

めちゃくちゃ高級な奴。

確か、1本、〇万円とか言ってたな。

何でお嬢様はそんなことにこだわるかなー?


髪は女の命って言うけどさ。





さっきよりも強い風が窓から吹いてくる。


毬の髪が大きく風になびいた。




艶があって綺麗な綺麗な髪。

ほんとに毬は完璧人間だ。もしかして、ロボットかもしれない。

25世紀から来た〇型ロボットかもしれない。



新たな秘密を発見してしまった。




そうこうしているうちに、1時間目は終わりかけ。


あわてて残りのノートをとるあたし。

横では毬があたしのことをジーと見てる。




「どうしたの?」



小声で毬に話しかけた。



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