第3話
「もーすぐねぇ」
時計が指すのは8時半。
あとちょっとで女王任命式!
え、授業始まるんじゃないのって?
不良が授業出てるわけないじゃない!
たまに出てるけどさ。
あたし、社会だけはできるんだよね。
あ、あと体育と音楽と。
ほかはダメダメだから出る気なし!
廊下を歩いてるとたくさんの人に頭を下げられる。
この崇拝度!
半端ないね。
ほんとにどっかの国の王女みたい!
ま、あたしは川中の王女なんだけどね。
いつもの音楽室へいく。
ここが不良のたまり場になってる。
あー、今日もたまってますね。
いつも以上にたまってますね。
あったり前よね!
だってあたしの任命式なんだもの。
みーんな来るわよね。
来ないとどうなるかわからないしー。
御苦労さま―。
「はーい、日向こっち来な」
卒業したはずの15代目王女が手招きをする。
任命は元女王がすることになってる。
わざわざ来てくれるんだよね。
ということは来年私がやらなきゃいけないのか。
面倒だな~。
「はい」
私は壇にあがる。
このボブの茶髪の綺麗なお姉さんが15代目。
いつみても綺麗でうらやましい。
形のいい唇を開く。
「15代目女王、桜がこの者を16代目と認める」
パチパチパチ!
大きな拍手があがった。
みんなが祝福してくれている!
「あなたの名前は千影よ」
女王は名前では呼ばれることはない。
そんなの、恥になる。
だから、女王は新しい名をもらう。
この人も、桜という名ではない。
あたしの場合は千影。
千影……。
「あたしは千影!あたしが女王よ!」
皆が一斉に頭を下げる。
あたしは……16代目女王、千影よ!