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第28話

「さぁてと」


あたしはぐーと伸びをした。


そのあと腕を回す。

あ、痛!

ちょっと。今ボキッて言ったんだけど。

めちゃくちゃ痛かったんだけど。



「日向お嬢様。そろそろお稽古の時間です」


夕日が照らす、あたしの部屋にありすがやってきた。

あぁ、もうそんな時間か。


お稽古っていうのは、ありすとありさに教えてもらってるお嬢様文化のこと。


たとえば、お嬢様言葉でしょ、テーブルマナーでしょ。

ほかにもいーっぱいある!


もう、肩がこってしょうがない。

何でお嬢様はこんなのが好きかな。

あたしは大っきらいよ。


ほんとイライラする。

なんでご飯をちびちび食べなきゃいけないのよ。

ふつーに食べればいいじゃん。そんなにゆっくり食べてたら日が暮れる。






部屋を移動して、レッスン部屋にくる。

あ、そんなダサい名前の部屋じゃない。お稽古場っていう名前がある。

言いにくいからレッスン部屋ってあたしが勝手によんでる。



さぁーて、夕方もいっちょ、がんばりますか。



「今から何をやるの?」


はいはい、今日のメニューは何でございますか?

また、お嬢様言葉の練習か?姿勢の練習か?



ありさもそろって、お稽古開始だ。


で、何やるの?何やるの?



ありさの答えはあたしの予想を完全に裏切ったものだった。



「……生け花を」




「は?」



生け花?ちょ、何それ?今、ありさは生け花って言ったの?何かの間違えじゃない?

いやいや、あたしが生け花なんて。無理でしょ、絶対無理でしょ。


「……今から生け花を」


え?生け花ってアレでしょう?針に花をブスブスさしていくヤツ。

あー、あれ面白そうだよね。薔薇とかさしてみたいんですけど。

ぐサッってやりたいんだけど。だってさ、普段薔薇ってとげあるじゃん?

あたしら刺される側でしょ?たまにはさしてみたいよね。痛みを味あわせたいよね。



じゃなくて!!



「生け花ぁ!?」


あたしが?このがさつで不器用なあたしが?



「今までは、生活に必須なことをやってきたのですが、そろそろこういうこともやってもいいかと

思ったんです。あ、ちなみに夜は茶道をします」


……茶道?

もうやだ。ボケるきにもならない。




「講師は主にありさがします。いったん着物に着替えましょうか。

私が着付けをやりますので。着物の着付けも覚えてくださいね」



無理無理無理!!








「はぁー。つかれた……」



ようやく華道と茶道から解放されて、部屋でのんびり中。



本当に怖かった。寒気がするほど怖かった。


……ありさが。



花を適当にブッさしたら鬼みたいに怒ってきた。

いいじゃん!どこだって。

そこら辺にさしとけばいいじゃん!


てへっ、とか言って、ありさの髪にもブッさしてみた。

……冗談のつもりだった。軽ーいジョークだった。


なのにさ。


「……日向お嬢様。花は髪にさすものじゃありません。……ここにさすんです、ここに」


と、花をさす針の山みたいなのをボールみたいに放り投げてきた。剛速球だった。


そっからは必死だった。必死に花をさした。




で、とてつもなく疲れた。

もうだめ、一歩も動けない。むーりー不可能考えろー。



ちらりと制服が目に映った。


あぁ、明日から学校か。

嫌になってくる。


あんなことするところへ行かなきゃいけないなんて。

やっぱりあたしにはオジョー様なんて向いてない。


だけど。

だけど、やらないと。


約束だから。

渡辺さんとの約束だから。



みんなに会うために。



あたしはやりきらないといけない。

オジョー様を。




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