第22話
「はじめまして、お嬢様」
「……はじめまして」
どういう状況か説明しよう。
どうしてあたしがこんな広い部屋の中で正座しているか。
それは、少し前にさかのぼる。
「日向ちゃん。日向ちゃんにも一応マナーとか勉強してもらわないと
いけないから専属の者をつけさせてもらいたいんだけど、いいかな?」
リビングで、ていうかリビングっていうレベルじゃないくらい広いリビングで
お茶を入れてもらってくつろいでいるとき、渡辺さんは尋ねてきた。
やっぱり渡辺さんはひょろっとしてる。こんな豪邸は似合わないかも。
失礼だから口には出さないけどね。
「はい。別にいいですけど。どんな人なんですか?」
気になるのは、その専属の者って人。
厳しいおばさんとかだったら嫌だなぁ。
こう、ムチでビシビシ叩かれてさ。痣だらけになっちゃうよ!
「紹介したいから、部屋を移動しようか。そうだね……。
日向ちゃんのお部屋にしようか。ついでに部屋も見せたかったしね」
あたしの部屋かー。そういえば荷物は運び込まれたらしいから、ぬいぐるみの
セッティングもしなきゃ。ああ、あと風水グッズも。
あたし、占いは信じる派なんだよね。風水とかすごく気にしてる。
ちなみに、部屋もその影響のため、方角を注文しておいた。
嫌な顔せず変更してくれた渡辺さん。すっごくいい人だと思う。
「ここだよ。どうぞ」
渡辺さんがドアを開けてくれる。あたしは中に入った。
ペコリ。
お辞儀をしている2人の人が奥にいる。
2人とも綺麗なお辞儀。45度ぴったしだよ。角度測りたいんですけど。
でっかいやつ特注してもらってさ。
「日向ちゃん、こっち座って」
椅子を引いて示しているから、あたしはその、一目でわかるほど
高そうな椅子に座った。うわ、すわり心地よさすぎ!
こんないい椅子見たことないんですけど。ホントいい。
ああ、そんなことよりこの人たちのほうが重要よ!
そこにいるのは顔のそっくりな女の子2人。
1人はふわふわの髪をツインテールにしていて、シュシュをつけている。
目がくりっとしていて、これまた美少女。それにしても、髪長いね。
ツインテールってことは、髪を20センチほどあげてるわけでしょ。
なのに腰ぐらいまである。
もう1人は、髪をお団子にした子。
さっきのことおんなじ顔だから、言うまでもなく美人。
横髪だけを垂らしている。中華風な感じだ。こっちの子も腰ぐらいまでの髪。
すっきりとした顔。すっと通った鼻。クールな女の子。
あたしと年も変わらなさそう。
で、あたしが一番驚いたこと。
それはね、この2人がメイド服着ていること。
ちょっと!メイド服よ!着ている人はじめてみたんだけど!
なんか妙に感動してきたんだけど!
だってさ、メイド服だよ?普通着ている人なんていないよ。
しかもこれ、コスプレとかじゃないと思う。たぶん、本物のメイドさん。
こんな家だもん、メイドがいててもそれほど不思議じゃない。
でも、メイド服にはびっくりだよ!
「ははは、はじめまして!」
あたしは椅子の上でピシッと正座した。
そうして、今の状況が完成したわけだ。