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第14話

         楠木 日向  様


 いきなりのお手紙申し訳ございません。

あなたも戸惑っていることでしょう。

私は渡辺幸助。覚えていますか?

あのとき、あなたに助けてもらった者です。


 私はあのときの恩返しがしたいと思い、お手紙を送りました。

私が勝手に調べさせてもらったところ、日向さんは

経済状況が良くないということが判明いたしました。


 そこで提案です。私の家に養子としてきませんか?

日向さんさえよろしければ、私の家に養子としてきませんか?


 嫌ならお断りください。

私は恩返しがしたいだけなのです。

嫌がることを強要はさせません。

いい返事をお待ちしています。


    渡辺財閥社長  渡辺幸助






何よ、何よこれ。

どういうこと?

意味わかんないよ。


渡辺幸助。

この名前は覚えてる。

ちょっと前にあたしが紀乃川中のバカたちから助けた男。

あの、サラリーマンみたいな男。


渡辺財閥。

あたしみたいな不良でも知ってる大きな会社。

いろんなことをやってるし、有名。


あの人、渡辺財閥の社長だったの!?

まったくわからなかった……。



そんなこと、どうでもいい。

どうでもいいよ。

それより重要なこと。



……養子。


あたしがあの人の養子に……?

養子として引き取りたいって?

そんな……。

そんなの……嫌。

嫌だ。

あたし、このままがいい。

お金持ちの家になんて行きたくない。

あたし、普通な生活で言い。

貧乏でいいからこのままがいい!



「……ひなちゃん。僕もこんな話変だと思ったんだ。

そしたら電話がかかってきてね。ここに書いてることと

おんなじこと言われたよ。いつのまにかこんな人とかかわってたんだね」


「ごめんなさい……」


「謝ることはないよ。僕は怒ってるんじゃないんだ。

手紙にもあったけど、僕の家は貧乏だ。

いつもすれすれ。何とかやっていけてる状態なんだ。

ひなちゃんが行きたくないって言うなら、僕はそれでいいよ。

だけどね、やっぱり……」


「……」


幸弘叔父さんは、養子に入った方がいいと思うんだね。

うん、構わないよ。

これが、幸弘叔父さんのためになるなら。

言いたいことはわかるよ。

もう、私を養ってくことは難しいんだね。

わかるよ。言わなくったってわかるよ。

だって、幸弘叔父さん顔にでやすいもん。


でもね。でも本当は嫌なんだ。

普通でいたいんだ。


だけどこれが幸弘叔父さんへの恩返しになるなら。

あたしの気持ちを伝えられるなら。

ありがとう、のかわりになるなら。

あたし、それでも構わないよ。



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