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ターフのカノジョ ~アテナステークスの激戦 島崎利絵vsプリムローズ~ (原作版)

作者: 中原牧人
掲載日:2025/11/30

出版済み【ターフのカノジョ 三原雫編1巻】を含めたリメイク版。

ターフのカノジョ本編の原作抜粋です。


挿絵(By みてみん)


目の前には緑広がるコースを景色にいつもの三人で会話が盛り上がる。

お座敷学園はこの自然を感じられる校内もまた魅力の一つである。


「あたしさぁ最近このチャンネルよく見るんだけどすごいよこの子」


挿絵(By みてみん)


志保が見せてくるスマホの画面に雫とプリムは釘付けになる。

その動画には馬に乗り山を駆け上る映像が流れている。

今流行りのジョッキーカメラというものだ。

所々にコメントが入っている。

しばらく動画を眺めていると頂上らしき広がった平坦な場所で景色の流れが緩やかとなった。

その直後自撮りアングルとなり、馬から降りる女の子が映し出されている。

その女の子は勝負服とメットを被ったまさしくジョッキーの姿だ、そしてカメラにコメントする。


「今のコースが旭岳です。勾配もキツく距離が長いためスタミナの配分がポイントです。追い抜ける場所も限られていますので先行必須です。次の流しの時も撮影しますので、良かったと思っていただけましたらいいねやチャンネル登録よろいくお願いいたします!」


そのコメントの後、さきちゃんねると表示された。


「あたし達と同じく北海道で競馬道学んでいる子なんだって。あたし尊敬しちゃうよ。登録者も90万人超えているし。」


志保の思いがしっかりと伝わってくる。


学校の帰り道話題のさきちゃんねるを配信していた生徒のことが気になっていた。

その夜雫は配信動画を検索していた。


ありましたわ、わたくしも見て何かを学べれば

その純粋な思いで動画を見ていた。


いくら騎乗動画を見ていても学べる感じがしなかった。


チャンネルには騎乗の他に厩舎での飼育シーンや調教動画まで数々だった。


10本以上の動画を見ても学べない自分を責めようとしていた、その時モニターの向こうからの問いかけに胸を打たれた。


「この子達は皆能力は横並びです。騎手はどれだけそのこのポテンシャルを引き出せるかが騎乗技術だと思っています。もちろん調教班の整えるコンディションにもよりますが。飛び抜けた子はたまにいるとしても、みんな能力は同じはずです。だから誰にでも勝機はあります。なのでわたしは切磋琢磨します。みんなもそう思わない?だから一緒に走れる日を楽しみにしているよー!」


能力は同じ…ポテンシャルを引き出せないのはわたくし…


やはり研究が足りていないのですわ。


翌週の日曜日、雫は聖ヴィーナス学園に居た。


そう、今日は学園競馬でも注目のG1レースであるJKCヴァルキリーカップ(G1)そしてJKCアテナステークス(G2)の当日。


JKCとは女子高生チャレンジの略称で競馬道に励む女子高生騎手のみで競技されるレースである。

その他にJCCという女子中学生騎手限定のレースも開催されるほど国もこの競馬道の発展に期待をかけている事は伝わってくる。


雫は自校の応援ともう一つの目的でここに来ていた。

先週ホワイトキャットで勝利した結野紫彩と話をしてみたかったのだ。


あの方とお話しできれば、わたくしの至らない点が見つかるかもしれませんわ。


その思いを胸に足を運ぶ事を決意していた。


合わせてお座敷学園が初めてG2戦に出馬する事となる記念すべき日なのだ。


お座敷学園が今までに出馬した重賞の最高グレードはG3であった為、今回のG2レースへの出馬でお座敷学園構内はお祭り騒ぎである。


競馬にはステップレースと呼ばれる順番に勝ち進むレースシステムがあり、今回のレースもそのステップレースに該当しているレースだ。

ラッキーチケット賞と呼ばれる未勝利馬ばかりで競うレースで優勝した馬とセントラルダートと呼ばれるG3戦の2着馬までの馬、ターフトロフィーと呼ばれるG3戦の優勝馬に上位クラスのエンジェルカップと呼ばれる上位クラスのG2レースへの優先出走権が与えられる。

そしてエンジェルカップの上位成績馬と本日開催2レースの上位馬がトップロードステークスというG1グレードに優先出走できるというシステムだ。

ただ、ターフトロフィーの上位2頭についてはアテナステークス(G2グレード)への選択もできるシステムとなっている。


エンジェルカップとアテナステークスが選択できる理由はコースにある。

エンジェルカップはダートコースつまり芝生ではなく土のコースで競争するに対しアテナステークスは芝コースとなっている。

それぞれの持ち味を生かせる選択ができるのも戦略的楽しみの一つとなっている。


そうして勝ち進んでいった者同士で夏の頂点であるG1レースへの出走権を目指していくのだ。


競走馬のメンバー選定については勝ち進んでいかないといけない馬もいれば、学園競馬運営委員が各学園競走馬の登録状態からリーディングと呼ばれる能力暫定順位を決めてその上位の馬は競争にあえて参加せず途中参戦できるシード権を持つ馬もいる。

お座敷学園では童夢志保が騎乗するブルーハワイがリーディングシード権を獲得しており、トーナメントはシード権となる。


先日セントラルダートで見事勝利を飾ったプリムが本日のアテナステークス(G2)に出走するのでお座敷学園の応援席は賑わっている。


雫の隣に立っている志保と亜子がコースをじっくりと観察する。


「まぁ・・・前回と同じコースだからプリムにも勝機はあるはずじゃん」


志保の声と共に亜子が


「ムラコの枠番って何番だっけ?」

「確か大外の6番だったはずだよ。」

志保の即答で周囲にいる生徒たちももう一度コースを見渡す。

ムラコはプリムのパートナー馬で、いつからかわからない程プリムが騎乗し続けてきた馬である。

紫色の毛並みから名づけられたムラコという名前は亜子が中等部の時に名づけたと言われている。


亜子はムラコが生まれたての時から世話をしてきているので意思疎通がうまくとれるようだ。


しかし、ベコは・・・

私は何を考えているんだろう、ベコは悪くない。そうわたくしの騎乗方法が悪いのですわ。

肩を叩かれ我に返る雫。

「何考えこんでるんだよ?今はプリムの応援するだけじゃん!」

志保の言葉で沈んだ気持ちが和らいだ気がした雫だった。

「志保じゃないか!」

聞き覚えの無い声に私と志保さんは振り返る。

「美香じゃん!なんでココに?まさか出るって事?」

志保は美香という女性に話しかける。

「そういう事!」

美香という女性はすぐさま返答する。

志保は私のほうを向き

「雫、幼馴染の川島美香だよ。あたしはお座敷学園に入学したけど美香は朱龍学園だったよなぁ?」

志保は再び美香の方を見て問いかける。

うなづいた美香は私に手を伸ばし握手を求めてきた。

「よろしく雫さん!」

鋭い目つきの美香が私に挨拶をしてくる。

「そういえば、美香は朱龍学園のエースだったんじゃなかったっけ?」

志保の質問に更に鋭い目つきになり

「あいつがエース」

朱色の勝負服に桃色のロングヘアをなびかせて騎乗している女性を指さしてる。

「島崎利絵・・・甘ちゃんだが腕は確かだよ」

「甘ちゃん?」

志保が聞きなおす

美香は少々怒り口調で

「あたいは気に入らないね!アイツの考え方は・・・」

意味深な話に私は口をはさめないでいた。


ー朱龍学園構内調教の日ー


「放送部の私が騎乗?」

「利絵ってなんでも出来るからいい経験になるかも。あとレース実況する時も騎手の気持ちわかるしいいと思うけど」

「里美は簡単に言うけど…」

「とりあえず一周走ってみたら?」


利絵がゴール板を過ぎた時里美は拍手した。


ー翌週の土曜日ー


新規ジョッキーとして軽斤量を背負った利絵は圧倒的な勝利でデビューを飾った。

「中等部から騎乗していたあたいをぽっと出のあいつが…」

学園競馬といえど実力社会であることは間違いない。

美香は悔しさを隠せないようだ。


そんな会話の時、会場がどよめきを増した。

私はスタンド上部を凝視する。

あの制服の校章は聖ヴィーナス学園。

腕を組んだ一人の女生徒がスタンドの最上段に立ってパドックを眺めている。

その女性を取り囲むかのように記者たちがインタビューを始めた。

「有名な方なのかしら?」

不意に私は言葉をこぼす。

「アイツは聖ヴィーナス学園のエース秋山桜だよ。こんなG2レースをわざわざ見に来たのか?その次のレースに出馬するってのに・・・」

美香はその秋山という女性を睨みつけている。いや目つきが元から鋭いので睨んでいるのか定かではない。

「こんなレースは無いだろ?G2戦だよ!」

志保が少し怒り口調で美香に言葉を飛ばす。

「アイツからしたら、こんなレースはどうでもいいハズなのだがなぁ?」

美香の言葉に耳を疑う。

突然男性客が秋山の存在に気づき急いで記者たちの方へ脚を運ぶ。

「そんなにすごい方なのですか?」

その質問に美香は

「あまり認めたくないが完璧だよ秋山は・・・騎乗も分析も・・・」

そう、競馬道では騎手同士の騎乗競争だけが評価の全てではない。

一般人が競馬を予想するように競馬道に励む生徒もまた分析つまり予想が出来ないといけないのである。

競馬の分析は馬の能力、騎手の能力、コース状況、展開、脚質等さまざまな要素を分析し最もその競争に長けた馬と騎手のペアを導き出さないといけない。

「秋山の予想は凄い・・・だから一般人もその予想にあやかりたいからあの集まりになるんだ」

私はその話にピンと来なかった

「三原さん、行ってみるといい。今の話がわかるよ。おっとあたいも出馬の準備しないとな・・・」

美香は足早にジョッキールームへ向かった。

雫は秋山桜を囲んでいる集団に近づいた。

私は周りをキョロキョロと見渡しているとき聞き覚えのある声が会話している。

「なんとかプリムちゃん2着以内に入れないかな?次の出走権もらえるのに・・・」

「今は4番人気か、まぁうちがこのクラスのレースに出馬するの初めてだから厳しいかもなぁ」

亜子と志保が話をしている。

「プリムさんどうなんでしょう?」

私は二人に声をかける。

「正直厳しい・・・」

志保の返答は当たり前なのにすごく気が沈んだ。

「まぁうちがG2グレードに出馬できるだけでも大満足だよね」

亜子の心から出た言葉に二人は胸をなでおろした。

「そうですわよね」

周囲のざわつきが大きくなる。

秋山桜にマイクが向けられる。

私たちは彼女を凝視する。

「秋山さん、今回のレースでもっとも有力な馬はどの馬だと思われますか?」

記者の質問が始まった。同時に一般男性客が声を上げる

「待っていました!神の御告げ!」

「神の御告げ?」

私は小さくその言葉を復唱した。

隣にいた亜子が口を開いた。

「あの秋山さんが予想した馬は今のところ22回連続で3着以内に入っているらしいよ」

「マジか!!」

志保が驚いた。

「22回も連続で?」

私も驚きを隠せない。

「そりゃ・・・馬券買う大人たちはその予想聞きたいよなぁ」

志保の言うとおりである。

男性客は興奮した状態で声を上げる

「島崎の馬でっかー?」

「島崎?島崎利絵・・・朱龍学園のエース」

その通りだろう・・・あの志保さんや美香さんもが一目置く騎手ですもの当たり前ですわ。

私はその予想は妥当だと思った。

秋山桜はパドックを振りかえり指を差した。

秋山を囲んでいる一同がパドックを黙視する。

「今回の有力馬はあの紫の毛並みの馬ですわ。あの馬からは強い意志を感じますわ。」

私は島崎利絵の騎乗している馬を凝視した。

茶色の毛並み。

「え?」

私の口から声が漏れる。

一般男性が手持ちの双眼鏡でパドックを眺める。

「紫の毛並みの馬なんておらんじゃないか?」

記者たちがざわめきだした。

亜子が志保に抱きつき小さく飛び跳ねた。

「志保ちゃん!ムラコだよ、ムラコのことだよ!秋山さんの有力馬ってムラコのことだよきっと!」

何度も連呼し喜びを隠せない亜子。

「え!ムラコ?」

志保も驚き秋山桜を見つめる。

一般男性がムラコの存在に気づいた。

「こりゃえれぇーこった!大穴推薦だと!!!」

記者の質問が続く。

「秋山さん、紫の毛並みというのはお座敷学園の6番ムラコということでしょうか?」

その質問に一同は静まり返り返答を待つ。

秋山桜は手持ちの出馬表を確認する。

「そうですね、その馬ですわね。内コースに入らず大外コースのままで前方をキープできればいい結果に結びつくと思いますわ」

そのコメント後一般男性は馬券売り場に急ぐ。

「やべぇ買いなおしだ・・・6番・・・6番軸だ」

亜子も体を震わせながら志保にしがみついている。

「志保ちゃん!やっぱりムラコ推しなんだ秋山さん!」

志保は亜子の頭に手を置き

「まだ、結果が出たわけじゃないんだ。今はプリムを応援しよう」

冷静な志保に私は流石だと思った。

記者は秋山桜に質問を繰り返す。

「初出場のお座敷学園の6.ムラコが有力馬というのは凄い馬券が出そうですね」

記者の言葉に桜は返答する。

「あら、人気無い馬ですの?」

その質問と同時に桜は少し表情を変えた

「現在単勝人気で4番です。」

フルゲート6頭中4番目の人気は人気があるとは決して言えない。

「馬からは気を感じますわ・・・あとはあの騎手次第ですわね。内に入ると負けますわ!」

桜がきっぱりと言い切った。

「プリムちゃんに伝えないと・・・」

亜子は慌てた、志保はその亜子の腕をつかみ

「プリムはパドックにいる、今からは伝えられない。プリムを信じるしかないよ」

構内アナウンスが流れた。

まもなくアテナステークスの勝ち馬投票券の販売を締め切ります。

先ほどの一般男性客が戻ってきた。

「秋山の助言どおり買ったが本当に大丈夫なんだろうな・・・このクラス初出場の学校の馬で・・・」

ぶつぶつと独り言を言いながら前を通り過ぎた。

「プリムをなめんなよ!」

志保が通りすがりの男性に言葉を投げる。

場内掲示板にアテナステークスの情報が表示される。

その直後スタンドから大きなざわめきが聞こえる。

亜子と志保と共にスタンド席へ向かう。

3人は唖然とした。

掲示板に表示されていたのは単勝オッズ、現在の人気を知ることの出来る倍率である。

1番人気は変わらず朱龍学園の島崎利絵の馬ティーン、2番人気がムラコだった。

「嘘だろ?!」

志保は驚きのあまり開いた口が塞がらない。

4番人気だったムラコが数分のうちに2番人気に上がったのだ。

先ほどの一般男性客が掲示板に丸めた新聞を突きつけている

「なんだよ!秋山の予想に乗ったのはいいが、他の奴まで乗ってんじゃねーよ!オッズが下がったじゃないか!」

私は秋山桜の予想がここまでの影響力があるとは思っていなかった。

ということは・・・もしかするとプリムさんは・・・

雫は桜の助言が本当に神の御告げのように思えてきた。

場内アナウンスが流れる。

「それでは各馬、本場馬入場です!」

雫たちはスタンド席に座った。そしていつの間にか雫たちの周りにはお座敷学園の生徒たちが集まっていた。

「ムラコ2番人気って何があったの?」

「プリムちゃんの実力が認められたの?」

各自それぞれの意見を出す生徒たち。

秋山桜のインタビューでの一連の出来事を知らない生徒たちはそういう憶測でしか意見を出せなかった。

ムラコの本場馬入場と共にアナウンスが流れる。

「流星のように登場したお座敷学園のムラコとプリムローズ。初グレード競争で歴史を残せるか?」

アナウンサーの説明が胸に刺さる。

亜子は感動のあまり涙を流している。

「G2グレードに出れたよ!G2グレードに!!」

志保は亜子の頭を優しくなでながらコースを見ている。

お座敷学園が歴代初めてG2レースに出馬したその瞬間だった。その競争の開始を生徒全員が見ている。

スターターがゲート付近に移動してきた。

各馬がゲートインを直前にウォーミングアップをしている。

「ゼラ頼むよ」


ー先日ヴィーナス学園校舎内廊下でー


「きらら先行にゃ!今回は遠征の朱龍2頭を抑えれば勝てるにゃ」

「もちろん勝つ!我が校の、地元の意地もあるけん」

「星野さん、あなたの実力なら大丈夫ですわ」

「秋山さん必ず勝利して見せます」

深々とお辞儀をする星野の頭に優しく手を乗せる秋山。

「頑張って!」


私は負けれん。我が校の意地がある。

星野は隣に並ぶ騎手と目が合う。

「今日はよろしくお願いします」

「どちらから来たの?」

「愛媛です」

星野は目を凝らす。


47pt…勝てる。


「今日はお互い頑張りましょう」

他のメンバーはどうかな?


あれ?あの子見たことあるな、前回のオープン一緒だった山口の学校の…


挿絵(By みてみん)


48ptだったら大丈夫。


外国人騎手がいる。

ハーフなの?

遠征組かな?

55pt➕


挿絵(By みてみん)


何?プラスって…初めて見た。


私は集中して相手を凝視すると、現状の脚力コンディションを数値化して知る事ができる能力を持っている。

これも学校の能力開発コースで得た能力。

事前に相手を知る事で競走の戦略に活かせる事ができる。

使わない手はない。


ゼラは62pt今日もいい仕上がりだ。


残るは朱龍学園。

問題のティーンは68pt。ヤバい強敵だ。

もう一頭は60pt。互角か。


やはりティーンだけはマークしないと。


ースタンドではー


「そういえば・・・美香も出てるんだよな?」

志保が掲示板に再び目をやった。

今回最内のライデンが3番人気で川島美香の騎乗する馬であった。

「そっかプリムの人気、美香を抜いたんだ」


といっても2番人気と3番人気の差は微々たる差であった。

志保の独り言が私には十分聞こえていた。

いつの間にか雫の横に武里真愛がいた。

真愛は出馬表を見ながら私に話しかける。

「面白いオッズになってきたな」

「面白い?」

私は思わず返答する。

「三原はここ聖ヴィーナスのコース特性やジンクスはもちろん分かっているんだろ?」


真愛の質問が即座に飛ぶ


私は即答できなかった。その私を見て真愛は話始める。


「聖ヴィーナスはスタート直後スタンド前の長い直線の後第1コーナーとなる。一周回り第4コーナーの後はスタンド前がゴールとなるため4コーナーのあとは直線が短い。」


なるほど・・・私はうなずいた。


「そういうこと。つまり後続から追い込む直線が短いので先行馬がどうしても有利になるコースだからな」


だからホワイトキャットがあそこまで大逃げしても逃げ切れるのだと私は思った。

しかし最終の直線でなぜ中央にラインを変えたのかまでは分からなかった。


「出馬表からみると今回は先行争いになるな。一番人気だけは差し馬だけど。」


真愛はどう思っているのか?先ほどの説明で有利なのは先行といっていたのに一番人気が差し馬とは・・・

よほど凄い末脚を持っている馬に違いないと私は再びスタートを目前にしている馬たちのいるゲートの方を眺めた。

スタータの旗振りおじさんがスターター台に到着した。

一番人気の島崎利絵は出馬する他の馬と騎手たちを見回す。

「私が一番人気かぁ、いつもどおりの差しでいいか・・・でもこのコース前が有利だし・・・悩むぅ」

独り言が周りに聞こえるほどこぼしていた。

利絵はプリムの存在に気づいた。

外国人騎手が居る・・・

このレース国際認定だったかな?

いや転校生?

掲示板を横目で見た利絵はプリムにますます脅威に思った。

美香を抜いて2番人気だなんて有り得ない。このレースうちの学校でワンツーとるつもりだったのに・・・

美香あなたはいつもどおり先行?私も前に出て逃げ切りを狙うべきなの?

利絵は予定外のプリムのオッズに焦りを隠せないでいた。

ん?利絵のヤツあの志保の学校の騎手ばかり気にしてやがるな・・・

「ほんと甘ちゃんだな!どんな相手が来ようと真剣勝負するだけだっつーの!」

美香の声も周りに十分聞こえていた。

そしてスターターが台に昇り各馬ゲートインのタイミングを待っていた。

色々考える利絵の目にスターターが上げた旗が目に入った。

ゲートインが始まる。

「あーなんだろこの不安・・・まさか私差せないんじゃ・・・わざわざ遠征して」

独り言が止まらない島崎利絵を横のゲートから美香が声をかける。

「このレースくらいで不安になってちゃ上のレースいけないよ!あたいの逃げについてきな利絵!」

その言葉ですこし利絵の不安は和らいだ。

「私は2番、そして美香が3番・・・あの外国人騎手は6番の大外」

あの騎手が逃げにきたらペースはハイペースになる。

逃げの展開で行くならスローペースでないと前残りが厳しくなる。

その直後ゲートが開いた。


「あぁ!しまった・・・出遅れた・・・」


ゲートが開いたとたん両サイドの馬が利絵の前に出る。

そしてティーンを除く馬が前へ前へ、我こそがと鼻きり合戦に参加していった。

雫は背伸びをしてプリムの様子を伺う。

「各馬一斉にスタートしました!おっとティーン出遅れです。」

アナウンサーの声と共にスタンドから大きなざわめきが聞こえた。

そして一般男性も同時に話し出す。

「あれは出遅れなんか?差しだから引いたんだろ?おいおい上位人気2頭とも後からか・・・大丈夫かよ」

その声でプリムの位置が確認できた。

先行集団の大外やや遅れ目にムラコは走っていた。

第1コーナーから第2コーナーへ入るときインコースを走る先行集団にプリムが参入していった。

「プリムちゃん内に入ったら・・・秋山さんがダメと・・・」

亜子が声を漏らす。

インコース集団にプリムは入っていた。

第2コーナーを全馬が通過した。

「長い隊列となりました。鼻を奪って先頭はライデン体半分リード、続いては地元ゼラ、外側にスタイリスト、その内側にエヒメミカンと先行組一団となり人気馬ムラコも先行集団に取り繕うとしています。その後2.3馬身はなれて一番人気のティーン。本日は殿からの競馬となっています。」

アナウンサーの実況とともに向う正面を馬軍の列が流れていく。

「プリムさん・・・」

雫の声が漏れた。

「現在3番手の位置だからまだいけるよ!」

「そのままいっちゃえー!」

生徒達から応援の声が溢れ出す。

左周りの第3コーナーが近づいてくる。

一番最内をライデンが後続を引くように先陣を切る。

2番手ゼラはライデンの右後ろを追走、そしてムラコはその馬の後ろを追走する。

スタイリストとエヒメミカンはライデンの後ろにつくように追走しムラコとほぼ横並びとなっていた。殿は変わらずティーンのままの隊列が形成されていた。

「このまま4コーナーを回りきれば勝機はある、いける!」

美香はライデンに言い聞かせるよう手綱を握り最内ラインをあけないよう先陣を走っている。

「そろそろ仕掛けるタイミング・・・ティーンいくよ!」


美香の目の前に矢印と数字が浮かび上がる

〔直進5pt 右4pt〕


直進あるのみ。


利絵の前の前にも矢印と数字が浮かび上がる

〔左4pt 直進4pt 右5pt〕


外からイケか…よし!

利絵が鞭を入れようとしたその時、利絵の鞭を入れる手は止まった。


「何?あの外国人騎手なぜ右のラインを確認したの?まさかコーナーで・・・」


利絵は先行集団の隊列を再度確認した

〔左4pt 直進6pt 右3pt〕


先程の矢印と数字は変わっている


「そっか・・・戦況が変わった。外国人騎手は外ルート選んだのね、そう来るならそこ行かせてもらうね!」


利絵はティーンにそう話しかけると一気に鞭を入れた。

スタイリストとエヒメミカンの間をすり抜けるように末脚を伸ばす。

そして利絵の前方のムラコは大外へラインを変えた。

「おっと早くもティーンが仕掛けに入りました。」

アナウンスと共に急激にティーンと先行集団の差は縮まっていった。

そしてライデンが第3コーナーに入った。

「ムラコ位置取りを外へ出しました。ここでムラコ動き始めました。後方から押し上げて来たティーンは一団馬群と並びかけてきております。」

「プリムちゃん外に出したんだ!」

アナウンスを聞き亜子が跳び跳ねながら様子を伺う。

第3コーナーを回りライデンに並びかけるムラコ。

「やっぱりきたか!このまま簡単に食い下がらないよ!ライデンいきな!」

美香はライデンに鞭を入れた。

あたいはこの競馬道を一心に過ごしてきた。

利絵、あんたの事は嫌いじゃない。

寧ろ仲間だと思っている、ただぽっと出のあんたにこのレースの勝利を渡すわけにはいかないんだよ。

あたいにもプライドってものがあるし。

3・4コーナー中間地点でムラコはライデンとほぼ横並びとなっていた。

お座敷学園スタンドエリアから声が沸きあがる

「プリムちゃんそのまま!」

「ムラコ頑張って!」

生徒たちの応援する声も徐々にヒートアップする。


ー先日の中国地区オープン戦最終直線の叩き合いー


最終の直線、隣にはスタイリスト。

50pt

私のゼラは57pt。

「叩き合いでは負けない!7ptの差を見せつける」


一足早く鞭を入れたゼラ。

首差で私は勝利した。

数値が表す物は脚力つまりコンディション。

鞭を入れればその差は歴然。負けやしない!


あの時と同じ!このレースで唯一私より高ptはティーンだけ、そのティーンははるか後方にいる。引き離せば逃げ切れる!

星野はゼラに鞭を入れる。


「頭さえラインに入れてコーナー回ってしまえば最終の直線で十分に抜ける。もらった!」


アナウンサーの実況が響く!

「先行馬ライデンが最終コーナーを回る。ムラコとの競り合いにゼラも参戦か〜!スタイリストとエヒメミカンはやや苦しいか?」


「追いつけない…これが実力の差ってやつ?遠征組なんかの好きにさせたくない!」


ー1週間前ー


「頑張って!愛媛の代表として自信持って。この子も私達同様にミカン食べて育ってきた仲間だし!」

「それ関係ある?」

「名前も私達の魂の入ったエヒメミカン。これは勝つしかない!」



私の横に立つ海老沢先生がすかさずどこかへ電話している。

この一番勝負の時に…

私はそう思った。


「ああ、さなテレビ見て。面白い事起こりそうだ」


面白い?

私は不思議で一杯だった。



その突如、ライデンとムラコの間スペースに2頭が割り込む。

ライデンの後ろを追走していたゼラと後方から差して来たティーンである。



アナウンサーの解説で場内が一段騒然となる。

「おっと馬体の衝突!ゼラとティーンがラインを巡って衝突しました。」

2頭の馬体がバランスを崩す。その影響で両サイドのライデンとムラコ両馬にも衝突の反動で両馬が衝突する。

「前方の4頭衝突によってバランスが崩れている模様!」

アナウンサーの一言でスタンド客全体が前のめりとなり4コーナーを凝視する。

「プリムちゃん」

亜子の声援が飛ぶ!


そしていち早く行動に出たのが利絵だった。

ティーンにすかさず鞭を入れる。

「当たってんじゃないよ!ティーン当たられても無視よそのまま前進!!」


利絵の大きな声が4コーナーに響き渡る。

その直後一瞬ティーンの馬体が一瞬光を放ったように見えた。


ティーンは更に前進しゼラと再び馬体を擦りながらゼラを抜き先頭へと出た。


ー撮影スタジオ楽屋ではー


モニター越しにさなは頷き

「へぇ、あの子スーパーアーマー持ちじゃん。やるぅ!」

「スーパーアーマー?」

隣に座っているIMAIが返答する。


その会話が聞こえたあと海老沢先生は電話を切った。


ティーン68pt、ライデン50pt、ゼラ45pt、ムラコ44pt


「あの衝撃を持ち堪えたか…勝負あったな、さてローズどうする?」

海老沢先生は腕を組み直した。


美香は体勢を整え再び4コーナーを回り終えるその時横に並んできたティーンとはほぼ首差程度の差であった。

ティーンとライデンに包まれたゼラは再びライデンの後方へ位置取りを戻すしかなかった。


美香は右方向を見た。その時自分よりやや前方の利絵と後方のプリムを確認した。

「もらった!志保悪いね、我校で連対は頂くよ!そしてあたいの勝利さ!」

その言葉と共にライデンに更に鞭を入れる。

「各馬4コーナー、おっと先頭集団から抜け出したのはティーン、続いてライデンが追走。ゼラは後退、大外よりムラコが追走!」

一般男性が興奮状態で声を上げている!


「秋山の馬は届かなかったか!当初の人気馬で決まりかよ!馬券は抑えているから馬連は頂きだ!6番3着死守しろ!すれば3連単も~いけー!」


一同はムラコの3着に期待を託した。

「先頭集団4頭が4コーナーを回り終えて最終直線へ入ります」

アナウンサーの声でスタンドは更にヒートアップする。


「4コーナーからFireデース」


プリムは掛け声と共にムラコに鞭を入れる。

ムラコの速度が上がる。


星野もゼラに鞭を入れる。

「くそ!せめて3着には…」


前の三頭を見た。

数字が浮かび上がる。


ティーン68pt ライデン54pt ムラコ64pt


「はっ?何があったの?64ptに上がっている?あの➕の意味って何?」


ー撮影スタジオ楽屋ではー


「へー勝負あったじゃん」

「そういえばさなの能力ってモニター越しでも使えるんだ」

「人によって有効距離は変わるみたい。IMAIそろそろ収録始まるし行こっか」


ヴィーナス学園最終直線では激闘が繰り返されていた


最終直線ライデンとティーンの間からゼラが再びライン取りにかかる。

「大外からムラコが伸びる伸びる、凄い末脚です。ライデンを捕らえにかかる!」

そのアナウンスを聞いた途端、お座敷学園応援席から大きな声援が湧き上がる。

「ムラコいけー」

「プリムちゃん頑張れ!」

ワンハロンマークをすでに切っている直線での激走劇にスタンド一団は呆気に取られた。

「大外よりムラコが強襲!ティーンとの差が徐々に縮まっていきます。ゴールまであと僅か果たして末脚は届くのか?」

背が低い亜子はスタンド全員が立ち上がっている状況でゴール前が見えない亜子はアナウンスを頼りに想像力を膨らませていた。

きっとライデンと並んで2着争いをしているムラコの勇姿が脳裏に浮かんでいる。

その後スタンドが静まり返えった。

「どうしたの?」

亜子は志保に問いかける。

そして志保は掲示板を無言で指差す。

掲示板には審議の文字が光っている。

場内アナウンスが流れる


「ただいまのレースは審議となっております。お手持ちの勝ち馬投票券は順位が確定するまでお捨てにならないようにご注意願います。」


「審議なんだって・・・」

「あのぶつかった時かな?」


生徒たちから不安の声が漏れる。

亜子が志保の袖をつかむ力が強くなっていく。


「ムラコ大丈夫かな?」

「大丈夫だよ!寧ろムラコは当たられた側なんだしさ」

志保の言葉にうなずく亜子。

この待ち時間がもっとも長く感じるときでもあった。

どれほどの時間が経ったのか・・・場内アナウンスが再び流れる。


「アテナステークスの審議についてお知らせいたします。4コーナーでゼラとティーンが接触し後続及び両脇を走行していたライデンとムラコに影響を与えた件について審議いたしました。」

「やっぱりあの件だったんだ・・・」

亜子は志保にそうつぶやくと志保は

「プリムの着順には影響なかった話だしなぁ」

そう答えると亜子は大きくうなずいた。

「接触により走行に影響が出たものの、審議の内容によって着順に関わる程の影響では無いと判断したため降着及び失格馬はありません。」

アナウンス終了と共にスタンドから大きな歓声が沸きあがる。


「よって着順は1着2番、2着6番、3着3番、4着4番の順で確定いたします。」


更なる歓声が沸きあがる。

隣に居た男性客は


「おぉ!秋山の予言通りだが・・・なんだ人気順で決まってるじゃないか!次のレースに期待だ!」


ブツブツと言いながらパドックの方へ向かっていく姿を亜子は眺めていた。

「亜子、プリムやったな!」

志保の声に亜子は我に返り

「プリムちゃんは何着?!」

「見てなかったのか?2着だよ!」

志保と亜子の会話を横で聞いていた雫がこぼした言葉

「プリムさん連対されましたのね!」

その一言で亜子の目が一気に涙ぐんだ。

「ムラコ、ムラコこの大きなステージで頑張ったんだ!」

一気に大泣きに変わった亜子の手を私は握り

「プリムさん流石ですわね」

亜子の横にいた志保も私の肩に手を伸ばし肩に手を置く

「雫も頑張れよ!あたしも頑張るからさ」

志保の闘志が伝わってくる。

周囲を見渡すとお座敷学園の生徒が歓喜の声をあげている。

「わたくしも頑張らないと・・・ベコ・・・」

小さく声を漏らしてしまう。

周りの人だかりはすっかりと減り、ウイナーズサークルに人だかりは集まっていた。

私は優勝した島崎利絵という生徒を見てみたくウイナーズサークルヘ足を運んだ。

「島崎さん優勝おめでとうございます。レースを振り返ってどうでしたでしょうか?」


記者の質問が飛ぶ


「え!あ・・・あの・・・私・・・あまり覚えていなくて・・・」

オドオドした話し方でインタビュー対応している

「最終コーナーでのライン取りとゼラとの接触凄かったですね」

「前を走っていた馬が外に位置どったので・・・ここしかないと思って・・・」

利絵が答える

「内を追走していたゼラも同じライン取りをしての接触でしたね」

「・・・すいません・・・ぶつかってしまいました?」

本当に覚えていないのか返答に困る利絵を見ていると

「あいつ騎乗すると人が変わるんだよな」

私が横を見ると志保とその隣には勝負服の姿のままの美香が立っていた。

「よくいるだろ車の運転でハンドル持つと人が変わるって!あれの騎乗版があいつだよ」

美香の言葉に雫は驚いた

「えー!あの大人しい感じの人が・・・」

「美香3着凄いなぁ・・・しかし美香んとこすげぇな!普段ダートなのによくここで成績出せるなぁ」

志保の質問に美香は

「脚質が本来芝向きなんだよティーンもライデンも、ただあたいんとこがダートしか無いってだけの話」

「ダートなんですか?」

雫の質問に美香は答える

「そう、学園競馬でもあんたんとこみたいに芝コースもあれば、うちみたいにダートコースの学校もある。」

「まぁ地域の特性っていうか学校の特性だよな?」

志保と美香のキャッチボールで雫は初めて学園競馬にも芝とダートの2つが存在することを知った。

今まで芝コースでしか走ったことのない雫はダートを走ることに興味が沸いた。

「同厩舎ライデンと2着入賞のムラコについてのイメージ何かありますか?」

記者の質問は続いていた。

「もう一頭の馬よりライデンが勝つと思っていました・・・」

利絵の返答に

「ムラコは今回初めてG2戦に初参戦の学校でしたが何か印象はありますか?」

「最終コーナー入りで確か外に振ったと思いますが・・・あの位置取りの判断は凄いと思いました。」

利絵の返答ははっきりとしていた。

「インパクトあったんだ!」

美香がつぶやく。

「あいつがレースの内容覚えてることなんてそうそう無いのになぁ・・・」

私はあの島崎利絵という生徒が気になった。

「もういいですか?私・・・苦手なんです」

島崎利絵が記者たちに言葉を飛ばす

「最後に一つだけ、いつもの勝利ポーズをお願いいたします」

「はぁ?勝利ポーズ?」

志保がその質問に言葉を漏らす

するとウイナーズサークルサークルの利絵は顔と直角になるように肘を曲げピースサインを取った。

カメラマン達が連続で撮影する。

「あれがあいつの精一杯のファンサービスなんだよ」

美香の言葉に志保は

「アイドルってやつかぁ・・・あたしにはできないね・・・」

志保は素っ気なく返す。

「ありがとうございました。島崎利絵騎手のインタビューでした。」

その言葉と共に記者の集団は別の方向へ移動した。

そして移動先の女性を囲んでインタビューが始まった。

「記者も大変だなぁ・・・」

志保が言葉を漏らしながら手に持っていたペットボトルのお茶を飲む。

「インタビュー内容も校内放送で流れますので・・・恥ずかしいですわね」

「まぁ慣れだよ慣れ」

美香と同時に校内スピーカーから聞こえてきた記者の質問

「あの展開はひらめきですか?」

「最終コーナーデハ、外が有利ト思ったのデ外に出したデース!」

返答する声がスピーカーから流れる。

その途端口に含んでいたお茶を吐き出す志保

「うわぁ!!汚ねぇな志保」

美香が志保に言葉を飛ばす

「インタビュー プリムじゃん!」

「え?プリムさんですの?会見見たいですわ」

雫達は急いで記者たちの元へ駆けつける。

確かにプリムローズがインタビューされていた。

プリムを取り囲む記者たち。

フラッシュが飛ぶ。

「プリムさん、綺麗ですしアイドルですわね・・・」

雫の言葉に

「プリムはうちのエースだからなぁ」

誇らし気に返答する志保を見て

「確かそっちの学校はG2グレード初連対なんだろ?」

美香は少し申し訳なさそうに志保に問いかける

「そだよ!ついにプリムが記録を作ったんだよ!2着だけど立派じゃん」

志保は自分の事のように、心から喜びを言葉にしているのが二人には分かった。

「やりましたわね!わたくしもあなたが判断した通りの位置取りならばこの成績に結びつくと思っておりましたわ」

プリムではない声がインタビューに答えている。

三人は声の人物を探す。

「え!マジか・・・あいつって・・・」

志保が指をさす。

その先には秋山桜が立っていた。

「THANK YOU デース! 内か外か悩んだデース!」

プリムが桜に返答する。

「あなたのような名手が増えて学園競馬も盛り上がりますわね!」

桜の言葉が校内に放送されるとともに拍手が巻き起こった。

秋山桜もプリムに拍手をしていた。

再びフラッシュの嵐が始まる。

一人の記者が桜に質問した。

「秋山さんは次のレースに出馬されますよね?意気込みをコメントください。」

「次って・・・GIグレードのヴァルキリーカップじゃん・・・」

桜は表情を変えず淡々と返答していく。

「慣れたコースですのでいつも通りの走りができればと思っています。」

「そろそろ準備の時間とは思いますが、プリムローズ騎手に一言お願いします。」

記者のその言葉と共にプリムが桜を見つめた。

「プリムローズ・・・覚えておきますわ!それではサマーチャンピオンで貴女の実力を拝見させていただきますわ!」

「OK!望むところデース」

プリムと桜は握手をした。

再びフラッシュに包まれる。

桜は騎手室へ準備に向かった。

「プリム凄いな・・・」

志保が何気に言葉をこぼす。

「志保さんも凄いですわよ」

雫の言葉に志保は

「負けてらんないよ・・・」

「しかし・・・サマーチャンピオンで・・・って秋山の奴、次のレース勝つ気満々だな。」

美香の言葉に雫と志保はうなずいた

パドックがにぎわっている。

「しかし・・・2着の騎手にインタビューって初めてだよ」

「そうなのですの?」

美香の言葉に雫が返す。

「あぁ、普通は勝利者だけなんだけどなぁ」

「うちの学校が始めてG2連対したからじゃないの?」

「志保それにしても・・・」

話をしながらパドックへ向かう三人。

電光掲示板には既に次のレースの出馬表が映し出されていた。

雫は一早く見覚えのある名前に気が付いた。

「ホワイトキャット・・・」

「お!雫はホワイトキャット推しなのか?」

志保の言葉に

「いえ・・・知っている程度ですわ」

「おいおい、あの白馬は有名じゃん!」

「確かに・・・知っていないとな・・・」

二人の言葉に赤面する雫。

再び掲示板を見る。

「ホワイトキャットまた大逃げなのかしら・・・」

「逃げ切れないだろな・・・また2着が関の山か」

「え!」

美香の言葉に雫は驚いた。

「あの大逃げなのにですか?」

雫は美香に問いかける。

「三原さんは、秋山のレース見た事は無いのかい?」

「はい・・・無いです。」

頭を下げた雫の回答。

「だろうね・・・楽しみにしてるといいじゃん。悔しいけど・・・凄いよ。」

あの強気な美香の言葉とは思えない・・・

「そんなにですか?」

「あぁ・・・」

美香の答えに雫は信じられないでいた。


雫はあのヴィーナストロフィーで大逃げを成し遂げたホワイトキャットを上回るなんて考えられなかった。

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