プロローグ 遠く遠い空
「おーい。なんだこれ。めっちゃマイクみたいじゃん。これ盗聴されてるとか?やばいな。これどうしよ。なんでみんないない時に限ってさあ。今日部活ないし。てかバス乗らないと。これどうしよ。」
メールでリアルタイムで更新しているのですが、あなたは誰ですか。
「なんか表示された、え。なにこれまじで。え〜あー。えと、伊藤といいます。」
伊藤さんですか。
僕にメールで変な文を送るのやめてください。
「?どういうこと?あの、マイク仕掛けたの、え、あなたですか?」
知りませんよ。
「あ、バス乗るのでちょっと詳しいことは後で…」
はい。
私達の住むこの宇宙はあらゆる物質で出来ている。
生物も非生物も、個体も気体も液体も。全て原子やその原子が集まった分子で出来ている。
唐突だが、宇宙は一つではない。
もう一つ違う宇宙があるのだ。
いや、もう一つというのは不正確だろう。
もっとたくさんあるかもしれない。
ただ、このちっぽけな一人の人間が知っている宇宙が2つだけ、ということである。
「いや、誰がちっぽけやねん!」
君のことを言っているのではない。
ちっぽけなのは私さ。
「ならいいや。そういえばお前の書いているその小説の読者に対する説明が足りてないんじゃないの?」
そうだな…確かに。
私は…いや、面倒だから一人称は何時もどうり俺を使わせてもらおう。
俺は作者の伊藤という。
この物語は作者が直接ナレーターをしている、少し特殊な物語である。
「おいおい、そういう系のやつ結構あるよ。それを特殊って、お前読書量が足りないんじゃないの?」
そうかも知れないな。
そうだ。こいつの説明がまだだった。
俺を「お前」と呼ぶこいつは、伊藤…。
「それじゃ区別できなくなるぞ。」
そうだな…。
冒頭で書いたように宇宙は2つ以上ある。
そしてその世界は瓜二つ…というかただ一つを除いて一致しているのだ。
俺の住む世界ともう一つの世界はどちらも全く同じ年代に全く同じ事が起こり、今も全く同じ状況にある。
ただし、たった一つだけ違うことがある。
こちらの宇宙でいうところの物質があちらの宇宙の反物質で、こちらの宇宙でいうところの反物質があちらの宇宙の物質なのだ。
だからなんだ?と思うだろう。
「うん。」
いやお前はわかってるはずだろ。
「そらそうだけどさ。」
自分の相手がこうもめんどくさいとは…
「俺もお前なのに。」
そらそうだけどさ。
まあ、というわけでこいつはほぼ同じ世界の俺なのだ。
「ざっくりまとめたな。」
そのほうがわかりやすいだろ?
それと、この小説はただの面白い物語ではない。
「面白くないもんな。」
そういう問題ではない。
これは反物質の宇宙の俺とこの宇宙の俺とが会話するためのツールなのだ。
「あ、俺の声がそのまま文字になってるんだっけか。」
そう。そして
「あ〜ドドドドブッシャーん」
あのな。
お前の声は俺が編集できないから大人しくしてと
「ごめん、まじで」
打ち込んでる最中に喋るな。
というか、こんなとき俺は真剣に謝ったりしないが…
「いや今めっちゃ笑ってる」
こいつの発言に(笑)でも草でもwwwでもいいから、なんなら絵文字でいいから感情表現が欲しい。
「ないんだ。」
ないよ。
「そろそろ授業始まるからさ」
ああ、だな。
こいつがうるさかったらまたこの小説に色々書くとしよう。
まえがきのやつ読み返したらバスに乗ったあとのやりとり消えてたよ
「まじで?世紀の大発見したのに?」
反物質だののくだりはバスの中の会話で判明したのだが、それらがまるまる消えているといきなりよくわからない設定ついたみたいに見える。
「あとさ、お前もそんな風な口聞いてないでさ、フランクに話そうよ。なんでそんなロマンチックな文で書くん?」
一応小説という体で書いてるからだろう。
書くときはいつもこういう書き方なのだからしょうがない。
「そうかもな…」




