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第7話 聞き耳

さてと、仕事を始めるかな。


 「旦那さんは生まれもこの辺なんですか?」


「おぉよ。オレは生まれも育ちも、この3本奥の路地の長屋暮らしだよ。」


「ここ、良い街ですよね。」


「おぉよ。ずーっと戦争は無いし、食いもんは旨いしよ。」


あちゃ、なんかデジャブ・・。オレが話を膨らませるしかないのか。


「昼間、宮殿の前を通ったんですけど、大きくて綺麗ですよね。歴史ある王族なんでしょうね。」


「おぉよ。うちは由緒正しい王族が治める国なのよ。まぁ、なんだ、ただ、今のフレデリック国王は先代のユリニウス国王とは比較にならねぇけどな。でも、王族は王族だからよ。」


お!核心に近づいて来てるか!?


「先代の国王の方が良かったってことですか?」


「まぁ、ユリニウス国王が良かったっていうか、フレデリック国王の人望が無いって言うか、要するに人気が無ぇんだな。頭が良いらしいけど、話が小難しくて、気持ちに響かないんだよな。ユリニウス国王の演説の時には、もう、皆興奮して聞いてたもんだけどよ。」


「そうだねぇ、ユリニウス様は気持ちが伝わってくる熱い人だったよねぇ。」


店主もうなづいている。


なるほど、現国王は人気が無いのか。ということは、王族の転覆を図るなら今がチャンスってことだよな。だから動き出した貴族がいるってことか。


「ずっと戦争がないってことは、王族の力が盤石だってことですよね?」


「そうさねぇ、王族は民衆にも慕われてるし、各地の貴族様達も建国以来ずっと同じってことは安定してるってことじゃないのかねぇ。」


きな臭い噂すら無いのか。まぁ、犯人が貴族じゃない可能性だって否定は出来ないからな。


「なるほど、良い王族だから良い国ってことですかね。じゃ、当面安泰な国ってことですね。オレもこっちに住もうかな。」


「おぉよ。良い街だよ、オレが太鼓判押してやる。」


「ヤマちゃんに太鼓判押してもらってもねぇ。」

店主が笑ってる。


結局この後も雑談が続いただけで有効な情報は無く、分かったのは、かなり安定している国だということだけだった。


やっぱり、もう少しダークサイドにアクセスしないと裏の情報は取れないか。。


輩っぽい客が多い店に行ってみるか。直接話しかけなくても、何か情報が拾えるかもしれないしな。


店を探そう。類は友を呼ぶという言葉の通り、同じ匂いの奴らは同じ場所に集まるものだかんらな。


条件は、窓が無い、もしくは曇りガラスとか植込みを使って中が見えなくしてある、明るい楽しげな看板やポップが無く、ウェルカム感が一切無い店、だ。


ここは匂うぞ、オレのセンサーがビンビン反応している。一見では敷居が高そうな中が一切見えない木製の扉、暗い看板。入ってみるか。


ギィッ ドアを開ける。店内は予想より明るく、客も多かった。


カウンターではなく、中央付近の4人掛けの丸テーブルに座って、ビールとナッツを頼み、視線を宙に泳がせて、考え事をしている風を装って、周囲の話にアンテナを張った。


博打で勝った、どこの店の女性従業員が可愛い、有名人を見た、どれも見事に酒場のツマミ話だな。


ん? 最近行ったバーに隣国のマフィアの幹部が居たんで速攻で逃げた? それ面白いな、その話に集中してみよう。


「あそこのマスターは、飲食店協会にも、商店街連合にも加盟してなくて、昔からヤバイ薬扱ってるって噂があったけど、たぶん、酒の密輸とかもやってるんだよ。だから珍しい外国の酒があるんで、たまに行ってたんだけどさ、流石に最近はヤバすぎるぜ。店内に街の連中なんか誰も居なくて、全員隣国の輩っぽいのしか居なかくてさ、ドア開けたけど店はいらずに、そのまま速攻で閉めちゃったよ。」


「お前がビビりなだけじゃないのか? キャハハハ。」


「馬鹿だな、オレが本気出しちゃったら、隣国の奴らボコボコにしちゃうから、それが原因で隣国と戦争にでもなったら困るだろ、控えてやったんだよ。」


「言っとけ、ハハハ。」


なるほど、隣国のマフィア幹部が集まる店か。それは匂うな。


どこの店だろう? いきなり話に割って入って聞くわけにもいかないし、何かヒントは無いか?


「そういやぁ、昨日なんかは、看板は電気点いてたけど、窓のカーテンなんか閉まったままなんだぜ、マジやばいよ。」


「なんだ、また行こうとしてたのか?」


「いや、違うよ、その近所に「みっちゃん」って酒場が出来てさ、そこのウェイトレスがもう、可愛いのなんのって。」


「うぉ、マジか、何系だよ、何系!」


「そうだなぁ、アイドルのソフィアと女優のサラを足して2で割った、的な?」


「なんだよ、その話先にしろよ! 今からそこ行こうぜ。なんならオレが奢るからよ。」


「あ、そう言えば、お前、ソフィア推しだったか。」


「ソフィアじゃねぇ、ソフィア嬢、だ! オレの将来の嫁になんて失礼な!」


「アハハハハ。死ぬまで言ってろ。 良いぜ、行こうか。」


お、ついていけば、問題の店の近所まで行けるってことじゃないか。俺も勘定を済ませて、先に店を出て、少しはなれたところで2人組が出てくるのを待った。



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