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レジェンド探偵 ASAKURA ~俺のハードボイルドに触れると火傷するぜ(俺が)~  作者: Sakamoto9


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第68話 呪文?

「それじゃ、行ってみる? ピアノバー。」


「あぁ、キミがどうしても行きたいっていうなら、付き合ってやらないでも無いな。」


「なんか、そのいちいち言い方が気に障るんだけど、まぁ、貴方らしい特徴、もちろんダメダメな方の、ってことで気にしないであげるわ。 確か、大通りに面してるんだけど、2階にあるって言ってたのよね。 で、1階は美容室だって言ってたな。 あれ? あ、ここだ。」


「へぇ、こんな大通りにピアノバーがあったのか。 看板もなくて、階段だけがあるなんて、ちょっとしたシークレットバーみたいじゃないか。」


「会員制なんだってさ、ここ。」


「え? じゃ入れないんじゃないか?」


「大丈夫だよ、八百屋のニックの紹介って言えば良いんだって。」


そう言いながらネコ娘が階段を上り始めた。


壁にも何も書いてないし、全然ウェルカム感も無いし、ホントにこんなところにピアノバーなんかあるのか?


階段の上には何の変哲もない、普通のドアが鎮座しているだけだった。


「おい、ホントにここがピアノバーなのか?」


「そんな気配、全然ないよね。でも、開けてみればわかるでしょ。迷わず行けよ。行けばわかるさ、ってね。」


え? この世界線でもダァーって言うのか?


ガチャ。


見た目よりも重厚なドアが開くと、中からは静かなピアノの調べが聞こえてきた。


「お、間違いなくピアノの音だな。驚いたな、こりゃ。」


「いらっしゃいませ。 メンバーズカードはお持ちですか?」


直ぐに黒服の男性がやってきた。


「あ、初めてなんだけど。 えっと、市場の八百屋のニックさんに紹介してもらったんだけど、大丈夫かな?」


「あ、ニックさんのご紹介ですか、はい、もちろん喜んで。 お二人様ですね、こちらへどうぞ。」


中に入ると、明るすぎず、暗すぎもしない店内の奥の方に半円上のステージがあって、アップライトピアノが置かれてた。


グレーのワンピース姿の女性がアップテンポな曲を演奏している。


左手にはカウンターがあって、あとは、テーブル席だ。


2人掛けの丸テーブルの席に案内された。


「お飲み物をお伺いします。」


「オレはドライマティーニを。シェイクン、ノット・ステアドで。」


「アタシはワイン、そうね、あまり甘くない白ワインをお願い。」


「承知しました。」


黒服スタッフがテーブルを去った。


「ねぇ、今のドライマティーニのシェイクン、ノット・ステアドって何? 何かの呪文?」


「ドライマティーニってのは本来ステアするんだけど、オレ達の業界では、ジェームスボンドって英国のスパイに敬意を表して、彼の飲み方を真似てるんだよ。あ、ジェームスボンドってのは007っていう映画の主人公なんだがな。」


「へぇ、そのスパイの飲み方ってことね。ってことは、店に入ったら、ニンニクアブラカラメ、ヤサイマシマシ、っていうのと同じような仲間ってことね。」


「はぇ? この世界にも二郎系ってあるのか? それは乳化系か? 非乳化か?」


「知らないわ。昔本で読んだことがあったのよ。麺類を注文する時の黄金の呪文だって。」


「・・まぁ、確かに黄金の呪文かもな。しかし、えらくマニアックな本だったんだな、その本。」


「お待たせしました、白ワイン、ドライマティーニです。」


2つのグラスと共に、オリーブとナッツが乗った小皿が置かれた。


「それじゃ、ピアノの音色に乾杯だ。」


「かんぱい。」


2人が軽くグラスを持ち上げる。


「あ、このオリーブ、白ワインとあうわ。 白ワイン、ボトルでもらっちゃってもいいでしょ。」


「おいおい、ピアノバーってのはピアノの音色を楽しむ場所だぞ。」


「ピアノの音は聴覚を楽しませる、素敵な店内は視覚を楽しませる、オリーブが嗅覚を楽しませるでしょ。では、白ワインで味覚を楽しませないと、でしょ? 五感の全てで楽しまないとね。」


「なんだか言いくるめられてる気もするけど・・。あれ? 五感って言うけど、一つ足りなくないか?」


「そう? 視覚、聴覚、嗅覚、味覚・・。 あ、触覚が漏れてるわ。 そこは、えっと、ほら、このワイングラス、これが触覚を楽しませるのよ。」


「要するに沢山飲みたいんだろ?」


「五感で楽しむの、五感でね。」


「はいはい、好きにしてくれ。」


ネコ娘はニコっと笑って、すっと手を挙げて黒服スタッフを呼んだ。


「白ワイン、これをボトルでお願い。」


手元のグラスを指さした。


「こちらは霧の河畔 12年ものですが、同じものをボトルでですね。承知しました。」


「それと、少しつまみも欲しいわ。この白ワインにあう、おススメはあるかしら?」


「それでしたら、白身魚のマリネ、生ハム、キューリと塩レモンの冷菜等は如何でしょうか?」


「あら、どれも良い感じ。じゃ、それ全部下さい。」


「はい、かしこまりました。」


黒服スタッフが去っていった。


「おいキミ、今夕食食べたばっかりだろ? まだ食べるのか?」


「どれも酒のアテでしょ? お腹になんか溜まらないわよ。 それにね、満腹感も五感の一つよ。」


「・・いや、五感に満腹感なんてのはないぞ。」

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