第64話 魔法石?
「こんにちは、お邪魔します。」
マルティンさんの魔道具屋へ入る。
「おぉ、待っとったぞ、良く来てくれた。 さ、こっちへ。」
店の隅にある、商談用の小さな丸テーブルへ座った。
「うちの雑用をキツク問い詰めたら、あっさり白状しおった。夜眼水晶を持ち出してたのはヤツじゃった。流石はレジェンド探偵、こんなに簡単に問題を解決するとは、驚きじゃ。」
「そうでしたか。持ち出した犯人は彼だったんですね。ただ、これは彼だけでは成立しない大きな事件の可能性があるんですよ。」
「やはりそうじゃったか・・。 実はワシも彼をいくら問い詰めても、持ち出すことを頼まれて、それで報酬をもらってた、としか答えんのじゃ。」
「もしかすると、それは事実かもしれないな。彼は末端の持ち出し係なだけで、全容は知らないのかも、と。」
「でも、マルティンさん、どうやって彼に自供させたんですか? あ、彼って、まだ生きてますか?」
ネコ娘が突拍子も無いことを聞いた。
「あははは。ワシは暴力や拷問はしとらんよ。というか、こんな老いぼれ爺は、ヤツに力で叶うわけないじゃろ。」
「それじゃぁ、どうして白状したのかしら?」
「ふふふふ、お嬢さん、忘れてもらっちゃこまるな、ここは魔道具屋じゃよ?」
「あ、うそ発見器的な魔道具屋を使ったのね?」
「そう、これじゃよ。」
マルティンさんがジャケットの胸ポケットからキラキラ光る丸い平べったい石のようなものを取りだした。
「この石に右手の薬指を置いて。こんな風にな。」
マルティンさんが自分の右手の薬指を石の上に置いて見せた。
「はい、こんな感じですね。」
ネコ娘がマルティンさんを真似て、右手の薬指を石の上に置いた。
「いいかい、質問には全部、『いいえ』で答えるんじゃよ?」
「『いいえ』ね、分かったわ。」
「それじゃ始めようか。今日は昼に麦盤を食べたじゃろ?」
「いいえ」
「ほほう、石が光ったぞ、ダウトじゃな。」
「えー、すごーい、これって、魔法石なのね。」
「あははは、冗談じゃ。これはワシのラッキーアイテムの宝石の原石じゃよ。」
「え? じゃ、うそ発見器じゃないの?」
「普通の宝石じゃよ。」
「それならどうしてアタシ達の昼ご飯が麦盤だってわかったの?」
「はははは、さっき、2人が麦盤の店に入るのを見たんじゃよ。」
「何よ、それ。 でも、どうして、これで雑用クンは白状したの?」
「それはマルティンさんの演技力。 ですよね?マルティンさん?」
「まぁ、そういうことになるかの。亀の甲より年の功っていうじゃろ。」
「うわぁ、マルティンさん、怖ーい。」
「あははは、隠し事があるヤツには、この手のハッタリが有効なんじゃよ。 嘘発見器に指を乗せるときから、ヤツはもう体が震えとったからの。」
「それで、雑用クンはどうなったんですか?」
ネコ娘が軽く首を傾げた。
「どうもしとらんよ、ほら。」
マルティンさんが指さした先には、昨日と同じように雑用クンがモップを持って歩いている。
ただ、昨日とは違って、こちらをチラチラ見ながら、というか、ちょっとオドオドしながら歩いてる。
「あれ? まだ働いて・・る?」
「首にしようかとも思ったんじゃが、十分反省しとるようだし、次にやったら手が無くなる魔法を掛けたって脅かしてあるから、もうやらんじゃろ。その代わり、1カ月間は給料なしって条件なんじゃよ。ふふふ。」
マルティンさんが彼に聞こえないように小さな声で言った。
「もしかして、その、手が無くなるって魔法も・・。」
「もちろん、そんな便利な魔法なんかあるもんか。 あったら騎士団なんぞ要らんじゃろって。 あははは。」
魔道具屋のおやじ、キャラ濃すぎるよ・・。
だいたい、魔道具屋なのに、魔道具をちゃんとした使い方で使ってないし・・
「ところで、さっきの『彼は末端の持ち出し係で全容は知らない』っていうのはどういう意味かの?」
「まだ、証拠を掴んだわけじゃなくて、あくまでもオレのカンがそう言ってるってだけなんで、もう少し固まってきたら、また話させてもらいますよ。 ただ、彼が単独犯じゃないってことは、間違いなくバックが居るんで、これからも彼も含めて注意した方が良いでしょうね。」
「なるほど、レジェンド探偵さんのカンがそういうなら、きっとそうなんじゃろうな。」
「まぁ、オレもこれが商売なんで、説明できない匂いみたいなのは感じるんでね。」
「それがプロじゃからの。 しかし、ヴァルトベルクも物騒になってきたもんじゃ。 まぁ、ウチの店の盗難は解決したけど、問題全体は解決してないみたいじゃし、こっちも何か情報があれば仕入れとくんで、偶にはここにも顔を出しに来てくれんかね。」
「もちろん、美味しいお茶を頂きにきますわ。」
「そうじゃ、報酬ってわけでもないが、これを差し上げよう。」
「え? これは夜眼水晶じゃないですか? 良いんですか、これ頂いて。」
「今回の件は夜眼水晶が舞台じゃったから、記念にもなるじゃろ。」
「それじゃ、遠慮なく頂戴しますよ。」




