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レジェンド探偵 ASAKURA ~俺のハードボイルドに触れると火傷するぜ(俺が)~  作者: Sakamoto9


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第61話 古道具屋

 市場の中心からすこし外れた場所だからなのか、ここの通りにはあまり人通りが多くない。 それでも何件かは店もあった。


ネコ娘がそのうちの1軒の前で立ち止まる。


「色んな物が売られてるんだね。なんだろうこれ? なんか変なの。」


「古道具屋だろ、ここ。 で、何が変なんだよ。」


ネコ娘が取り上げたものを見ると、時計、たぶん目覚まし時計だった。


「目覚まし時計だろ? 見たことないのか?」


「時計は見たことあるよ。でも、これはどうやって時間が解るの?」


「どうやってって・・ あれ? この時計、短い針しかないじゃないか。」


「でしょ? 変でしょ?」


「おや、それ気に入ったのかい? お嬢さん、お目が高いね。」


店の前で日向ぼっこでもするように、売り物なのか店の備品なのか、古いロッキングチェアをゆっくりと漕ぎながら高齢の女性が声をかけてきた。


「あら、おばあさん、これって時計かしら? でも、短い針が無いみたいだけど、壊れてるの?」


「あぁ、それは壊れてなんかいないよ、そういう時計なのさ。」


「でも、これだと時間がわからないわ。」


「そうかい? 今、時計の針は10時から11時の間を指してるよね?」


「うん、指してるね。」


「で、10時に近いかい? それとも11時に近いかい?」


「11時に近いわね。」


「それじゃ、もうすぐ11時、11時少し前ってことさね。 ほら、時間はわかっただろ?」


「え? そんな大雑把な感じなの?」


「お嬢さん、世の中、時間なんて大体それくらいがわかれば充分なのさ。 ほら、例えば昼ご飯、12時ピッタリに食べ始める必要はあるかい? それが12時10分に食べ始めたら問題になるのかい? そう、そんなもんさ。 そんな数分の違いを気にしすぎるから生きることが息苦しくなるのさ。」


「うーん、分かったような、分からないような・・。」


「ふふふ、実はこれは「頃刻計」って言って、正確な時ではなく、頃合いを知るための時計なのさ。」


「なんだか、哲学を語る時計って感じだな。オレはそういうの好きだ。」


「うーん、やっぱりアタシとしては時計には時間を教えて欲しいんで、哲学は教えてもらわなくても良いかな。」


「ふふふ。お嬢さん、素直で良いね。そうだよ、それは壊れて長針が取れちゃった時計にわたしがストーリーを追加しただけさ。」


「あーっ。」


ネコ娘が軽くふくれっ面をした。


あ、なんだよ、オレも騙されかかってたのかよ。


「ふふふ、古道具屋なんて、そんなもんさ。ただ単に古いものなんか誰も欲しくないからさ、新しい価値を付けて、新しいストーリーを生み出してやってるのさ。」


「なるほどな。それじゃ、これは何をするものなんだ?」


羽が一枚もない扇風機を指さした。

いくら何でもこのガラクタには新し価値もストーリーも付けられないだろう。


「あぁ、これは電気代がかからないエコフレンドリーな扇風機さ。」


「確かに電気代はかからないけど、風もこないだろ?」


「風がこようがこまいが、これは扇風機さ。 それじゃなにかい? お兄さんは、羽が回て風が出てるときは扇風機って呼ぶけど、羽が止まって風を出してないときには、それのことを何て呼ぶんだい?」


「・・扇風機・・だな。」


「だろ? じゃぁ、電気代がかからない、これだって扇風機だろ? 今時、電気代だって安くはないんだから、なるべく省エネの電気製品を使うべきなのさ。」


「エコは地球を救うってヤツか。 そうだな、気に入った、それを買うかな。」


「ちょっと! なに言いくるめられてるの! それはただ単に壊れてる扇風機でしょ! 電気代の前に、羽のない置物みたいな扇風機代がかかってるでしょ!」


「あっ。しまった、いや、買わん、買わんぞ。」


「ふふふ、お二人さん、面白いね。 ご夫婦かい?」


「はぁ? なんでオレがネコ娘と。全く見当違いだ。」


「アタシもこんな中二病を拗らせまくったおっさんと結婚どころか、付き合うのもご遠願いたいわね。」


「ほら、やっぱり仲良しさんだ。ふふふ。 あ、そうだ、そんなお二人さんにお勧めしたい逸品があるんだ、ちょっと見てみるかい?」


「だから、お似合いとかじゃないけど、まぁ、逸品って言われちゃ、断れないな、見るだけ見るさ。ただ、見るだけだからな。」


「ほら、これさ。」


女性はロッキングチェアから立ち上がりもせずに、手元になった、サービスベルを持ち上げた。


「呼び鈴じゃないか。これが逸品なのか?」


「まぁ、押してみて。」


女性がサービスベルを手渡してくる。


「あ、これって、レストランのテーブルとか、あ、そっか、今のホテルのフロントにも置いてある。チンって鳴らす奴だよね。」


ネコ娘がベルの上を押した。


・・・


「あれ?」


ネコ娘がもう一度、少し強めにベルの上を押す。


「まぁ、ちょっと待ってな。」


女性がニヤっと笑った。


「待ってな、って?」


意味が解らないが、とりあえず待ってみる。


チン!


チーン!


突然ベルが鳴った。


「うっわ、なにこれ?」


「面白いだろ? 押してから1分後に鳴るサービスベルさ。」


「いや・・だからそれも壊れてるだけだし、そんなベル使えないだろ。」

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