第48話 夜眼水晶
「ここがワシの店じゃよ。秘理術関連物取扱商、いわゆる魔道具屋じゃな。」
マルティンさんに連れられてやってきたのは、食堂から5分位の大通りから一本裏の道にある、歴史を感じさせる店だった。
「こっちが倉庫になっておる。 この棚に並んでるこれが夜眼水晶なんじゃが、これだけが盗まれるんじゃよ。」
「夜眼水晶ってのは何に使う魔道具なんだ?」
「これをゴーグルに付けると、夜でも人の動きがみえるのんじゃ。屋外での夜間警備で使われるんじゃよ。」
「ふうん、なんでそんなものを盗むんだろう?」
「そこなんじゃ。ワシもそこが解らんのじゃ。警備兵なら夜眼水晶は当然支給されるし・・。」
「冒険者とか、盗賊とかはどうだ? 夜間の移動で使うんじゃないか?」
「いや、使い物にならんじゃろ。 夜眼水晶で見えるのは人間を含めた生き物だけなんじゃよ。 だから、木も岩も映らないから、夜間の移動には役に立たんのじゃ。」
「それじゃ確かに使えないな。ではなんでそんなものを繰り返し盗むんだろうな? まぁ、犯人が分かっちまえば理由もおのずとわかるってもんだから、あわてる必要もないか。 キミ、しっかりと見取り図を描いておいてくれよ。」
ネコ娘が軽くうなずいた。 可愛げのないネコ娘のくせに、一応、助手らしいポーズは取るんだな。
マルティンさんの魔道具屋を出てホテルの部屋へ戻る。
「な、あぁいう店には情報が集まる。情報が集まるところには、オレ達探偵が必要とされる事件もあるのさ。今日からしばらくは、ここがオレ達の事務所ってことだな、キミも存分に助手を務めてくれたまえ。」
「そうね、給料ももらってるしね、ここは素直に手伝うわ。 で、作戦はあるの?」
「最初に結論から言っておこう。オレの経験上、これは内部犯行だ。」
「倉庫の窓も割られてないし、ドアのカギも壊されてないからでしょ?」
「・・お、おう。そうだ、良く気が付いたな。」
「そんな簡単な問題じゃ小学生のクイズにもならないわよ・・。」
「失礼だな、どんなこともまずは基本を忠実に。これこそがレジェンドがレジェンドと言われる・・」
「あの倉庫へ出入りできる人のリストはもう作ってあるわ。」
「おい、だから、人が話をしてる時に上から被せるなって言って・・ え? もうリスト出来てるの?」
「はい。さっきマルティンさんに聞いてメモしてきたよ?」
「やるじゃないか、さすがはオレの助手だ。うん。 それならその全員と面談すればすぐ解決じゃないか。」
「それがそうでもないのよね。 もう既にマルティンさんが、全員倉庫から出るときに荷物チェックをしてるのよ。もちろんそれで誰も夜眼水晶は持ってなかったわ。」
「そうなのか。それなら外部犯行だな。」
「・・いや、だから、密室だって・・。」
「あ、そうだったな。それなら地下トンネルを掘って、床から侵入したんだろう、ルパン3世ではお馴染みの手口だな。」
「金塊盗むならまだしも、なんで夜眼水晶盗むのにトンネルまで掘るのよ。」
「それもそうだな。いや、だとしたら犯人は誰なんだよ?」
「それを調べるのがレジェンドでしょ?」
「そうだぞ。 よし、じゃぁ、早速今夜から店の前で張り込みだ。頼んだぞ。」
「え? アタシが張り込み担当なの?」
「それは全世界、いや、全異世界共通で助手の仕事だ。うん。」
「まぁ、ちょっと面白そうでもあるからいいわ、わかったわ。張り込みは店が閉まった後からよね。それなら今のうちに仮眠しておくわ。」
そう言い終わるや否や、ネコ娘は窓際のベッドに潜り込んだ。
切り替えと行動の早いヤツだな。
よし、この世界に来て初の依頼も受けたことだし、張り込みの手配も済んだし、まだ早いけど今日はもう店じまいってことにするか。
ベッドで眠りこけてるネコ娘を残して宿を出る。
昨日の夜行った店は24時間営業だって言ってたよな。まぁまぁ、良い感じの店だったし。 あ、いやいや、ここで妥協しちゃいけない、常に新しい情報を求め続けるのが本来のオレの生き様だったはず。よし、新しい店を開拓だ。
大通りまで来たが、まだ日暮れ前ってこともあって、飲み屋っていうよりは食堂って感じの店の方が多いな。
うん? あの煙がもうもうしてるのは焼き鳥的ななにかか?
煙の発生源まで来てみると、店の前に大きな炭火の焼き台が置かれて、何かの串料理が焼かれていた。焼き鳥って感じでは無さそうだけど、なんだろう?
「へい、いらっしゃい。」
焼き台の店員が声をかけてきた。
「これは、なんの料理だい?」
「何の料理っていうか、こっちは牛、これは豚、で、こっちは野菜と果物だな。」
「果物も串焼きになるのか・・。」
「あれ? もしかして、お客さん、この辺の人じゃないんだね? うちの串焼きは評判良いんだよ、騙されたと思って食べてきなよ。」
「じゃ、そうしようかな。 一人だけど大丈夫?」
「もちろんですよ、おひとりさまならカウンターがおススメですよ。」
串をひっくり返しながら店員がニコっと笑って、そのまま店内に向かって大きな声を出した。
「はい、一名様ご来店!」




