第40話 山鴨
「はい、干し肉のスモーク盛り合わせ、お待たせね。」
テーブルの上に、4種類の干し肉が盛られた大きめの木皿が置かれた。
「サンキュー。あ、あと、オレはビールお代わり。」
「あー、アタシもお代わりお願いします。」
ネコ娘も空のジョッキを持ち上げた。
ネコのくせに、良く飲む奴だな。 まぁ、そう言えば昨日も初めてのくせにブランデー、ガブガブ飲んでたもんな。
「この甘辛くスモークしてあるのって豚肉だよね? これ、ビールにあうね。」
「こっちのビーフジャーキーもビールにベストマッチだぞ。」
「うん、ほんとだ、ビーフジャーキーも良いね。で、これはチキンだよね。あ、ハーブでスモークしてあるんだ、これも美味しいや。」
「それはチキンなのか? じゃ、残ったこれは何だろう? オレはこれがチキンだと思ってたんだけどな。」
「チキンっぽいよね。食べればわかるでしょ。」
ネコ娘がパクっと齧った。
「うん? あれ? なんだろう?」
「なんだ、食べてもわかんないのか。まぁ、こういうのも経験力がモノをいうからな。どれ。」
パクっと一口。
うん? チキンっぽくもあるし、結構脂もあるし、あれ? なんだろう?
「・・・・」
「で、なんだったの? ねぇ、なんだったのよ?」
「・・これは、あれだな、ほら、あの、あ、ちょっと名前が出来なくなった。ほら、あれだよ、あれ。」
「あれってなによ?」
ドンっ。
「はい、ビール、お待たせ。 あと、レバーのハーブ炒めね。」
スタッフがビールのお代わりと次の料理を持ってきてくれた。
「サンキュー。ところで、これ、脂がのってて旨いね。」
謎のスモーク肉を指さした。
「そうでしょ、うちの山鴨スモークは脂が美味しいって評判良いんだよ。ゆっくり楽しんでってね。」
スタッフはニコっと笑うと慌ただしく他の席の注文を取りに行ってしまった。
「そう、山鴨。この味は山鴨の特徴だな。」
「・・へぇ。そうなんだ。で、山鴨って何?」
ネコ娘が素晴らしく冷ややかな目でオレを見てる。
「なるほど、ハーブはレバーの臭みを消すだけじゃなく、良いアクセントになるんだな。これは絶品だ。喰ってみろよ。」
「そうなの? あ、ほんとだ、これも美味しいね。 なんだかビールにあう料理ばっかりで楽しいね。」
「だろ? 良い店だろ?」
「うん。 ・・で、山鴨ってなに?」
「・・あのな、山鴨ってのは、山に居る鴨だよ。」
「なんで山に鴨が居るのよ?」
「それはオレに聞かれても知らん。山鴨に聞いてくれ。たぶん、山が好きなのカモな。」
「あーっ、それがオヤジギャグってやつ?」
「ギャグじゃない。韻を踏むのは言霊使いとしての基本だ。」
「ついに言霊使いまで加わったの? 貴方は色々忙しい人だね。肩の力を抜いて生きるって知ってる?」
「肩の力を抜く…? 甘いな、力を抜くような腑抜けた生き方をするのは凡人だけだ。レジェンドと呼ばれるものは常に緊張感を胸に・・・」
「ぷっはー、ビールお代わりお願いします!」
ネコ娘がスタッフに向かってジョッキを持ち上げてみせてた。
「だから! 人が話してるときはちゃんと聞けって・・。 ってか、ビールもオレより飲むのか。 まったく最近のネコは・・。」
「はい、おまちどう。ビールのお代わりね。それと、豆とベーコンのスープとチキンパイだよ。 あれ、そっちのお兄さんもビールのお代わり持ってこようか?」
スタッフがビールと料理を持ってきた。
「いや、ビールは喉の渇きを癒すための大人の炭酸ジュースだからな。酒として楽しむならバーボンだろ。樽の香りを纏った琥珀色の液体が時間と大地の記憶を包んでる、それこそがオレの魂を呼び覚ますからな。バーボン、ロックで頼む。」
「バーボン? バーボンは置いてないね、ウチは食堂だからね。 ビールとワインしか置いてないよ。」
「・・・ビールお代わり頼む。」
「あれ?魂が呼び覚まされないけど良いの?」
ネコ娘がまたしてもシラっとした目でオレを見てる。
「・・よく見てみろよ、ビールも琥珀色だぞ。」
「貴方と一緒に居ると飽きないな、面白いよ。」
「このスープもうまいぞ、温かいうちに飲んでみろよ。」
「あ、また話逸らしたな。ま、いっか。 うん、このスープ、べーコンが良いアクセントになってて、美味しいね。」
結局、その後もビールを、オレが3杯、ネコ娘が5杯飲んで店を出た。
「美味しいし、楽しい店だったね。」
「あぁ、良い店だった。ただ、面白い情報は何も無かったから、もう1件別の店に行ってみるか。」
「うん、行きたい!」
「これ、仕事だからな? 情報収集は遊びじゃないんだぞ?」
「はーい。」
まぁ、今日の所はまだ活動再開初日だし、あまりディープなところじゃなく、軽く、情報収集ってこんな感じっていう雰囲気がわかるようなところへ行ってみようか。
「まず、店の探し方だが、目的は情報収集だから、ポイントとして、人が集まってる店、スタッフから話が聞けそうな店がある。それぞれ集めたい情報によって使い分けるんだ。 今日は、街の様子を知りたいんで、スタッフと地元に関する話が聞けそうな店を探すぞ。」




