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レジェンド探偵 ASAKURA ~俺のハードボイルドに触れると火傷するぜ(俺が)~  作者: Sakamoto9


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第36話 サイフォン

 寝室に戻ってすぐにベッドに横になった。

さっき仮眠はしたけど、途中で起こされたし、だいたい、ちょっとした昼寝位じゃ、今までの疲れは取れないからね。


うまい晩飯、良いブランデー、そして程よい弾力のベッド、静かな部屋これだけ揃っていれば、もちろん、速攻で眠りについた。本当に久しぶりにリラックスして眠れる良い夜だ。


 目が覚めて、うっすらを目を開けると、そこには知らない天井。

それも、マグメトリア監獄の天井を見た時とは違って、良い意味で知らない天井だ。


「おはようございます、アサクラさま。」


シャワーを浴びてからリビングへ行くと、既にメイドさん達が待機していた。


「おはよう。そっちの部屋はまだ起きてきてない?」


ネコ娘の寝室を指さした。


「いえ、もう起きていらっしゃいます。先ほど一度リビングに来られましたが、シャワーをするとおっしゃられてお部屋に戻られました。」


そうか、ネコ娘も起きてるのか。


「コーヒー、紅茶、緑茶、ジュースが御座いますが、何がよろしいですか?」


「コーヒーをもらうか。もちろんブラックで。」


「かしこまりました。」


ボッ。


メイドの一人がワゴンの上のアルコールランプに火をつけた。


ほほう、サイフォン式なのか。 優雅で美しい、淹れてる時間も楽しめて、オレは好きだな。

まぁ、最後にサイフォンで淹れたコーヒーを飲んだのは、確か何年か前にクライアントの家で打ち合わせをしたときだったかな、久しぶりだ。

いや、インスタントコーヒーでさえ、大分前に切らして、買えなかったんで、コーヒー飲むこと自体が久しぶりだったか。


「ごぼごぼごぼっ」


お湯が上のガラス球に上がっていく。 そうそう、この音も堪らないな。


そして一気にコーヒーの香りが広がってくる。


ガチャッ。


「あ、おはよう。」


ネコ娘がリビングに入ってきた。


「うーん、コーヒーの良い匂いがするね、アタシも飲みたいな。」


「オレのは、ブラックだぞ。違いが判る・・」


あ、それはインスタントコーヒーだったか。まぁ、この世界ではそんな昔のCM知らないだろうから、良いか。


「違いが判る男のブラックコーヒーだ。」


「え? それってネロカフェゴールドなの?」


え? この世界にもネロカフェゴールドがあるのか? どんな世界線なんだよ。


「なんでもいいわ、アタシにも一杯頂戴。」


ネコ娘がメイドの方を向いた。


「かしこまりました。今淹れているところですので、少しだけお待ちください。」


メイドがサイフォンを指さした。


「へぇ、コーヒーってこうやって淹れるんだ。作ってるところは初めて見たよ。いつも看守達が飲んでる匂いだけしか嗅いだことなかったからさ。」


「まぁ、こんなに優雅にコーヒーを淹れることはあまりしないだろうな。 普通はインスタントコーヒーか、良くて、コーヒーメーカーで作るだろうな。 もちろんオレはいつもサイフォンで淹れてたけどな。」


「へぇ、流石、レジェンド探偵さんなんだね。」


ネコ娘がオレの両手を握りしめた。


まったく、最近スキンシップの量が増えてきて・・ あ、違う、ダメだぞ、これ。


「こら、触るなよ!」


「いつもサイフォン、ふーん、貴方の「いつも」の単位は数年単位なのね。」


「だからいちいちオレの記憶を見るなって言ってるだろ。」


まったく、このネコ娘は油断も隙もないな。


カチャ。


メイドがオレとネコ娘の前にコーヒーカップを置いた。

湯気と共に芳醇なコーヒーの香りが更に強くなる。


「ふん、まぁ良い、キミに文句を言ってるとせっかくのコーヒーの味が楽しめなくなる。」


ズズッ。


コーヒーを一口口に入れると、舌にまず苦みが走り、すぐあとから静かな甘みが追いかけてくる。

香ばしさの奥に、ほんのわずかに酸の輪郭。

焦がした木の香りと微かな果実の余韻が、喉の奥で長く残る。うん、最高だよ。


「うわー、苦いねー、これ。」


ネコ娘が渋い顔をした。


「ふん、これが“大人の味”ってやつだ。わかる奴にしかわからん。

女子供は砂糖とミルクで誤魔化しておけ。

……まぁ、それはもう“コーヒー”じゃなくて、“甘い何か”だがな。」


「女子供って、それってジェンダーハラスメント? いまどき“女子供”とか言うと、炎上するよ?」


「あ、いや、その、ちょっとした比喩表現であって・・・。」


いや、ここって中世的な異世界だよな? なんで急に現代日本のコンプライアンスをぶっこんで来るんだよ。さっきのネロカフェゴールドもそうだけど、なんか設定が適当過ぎないか?


「何をぶつぶつ言ってるの? 砂糖とミルク入れたらもっと美味しくなったよ? 貴方も入れる?」


「いや、入れない。入れたらブラックコーヒーじゃなくなるだろ。」


「ブラックコーヒーじゃなきゃだめなの? だってそれ、苦いでしょ。」


「何言ってんだ、苦いから、現実を思い出せるんだよ。 甘さは夢を見せるが、苦みは生きてる証を突きつけてくる。 オレはまだ、夢より現実を噛み締めてたいんでな。」


「ちょっと何言ってるかわかんない」


ネコ娘がオレを見る目がめっちゃ冷たい。


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