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レジェンド探偵 ASAKURA ~俺のハードボイルドに触れると火傷するぜ(俺が)~  作者: Sakamoto9


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第34話 なるほど

 前菜の後は、もちろん、メインディッシュだ、まずは金鱗魚のグリルを頂こうか。


パクっとな。


ほほう、金鱗魚ってのは白身魚だったんだ。本来あっさり味の白身魚が海藻のソースとやらのおかげて、海を凝縮したみたいになってるぞ。うん、これは普通に美味しいシーフードだな。


お次は、山鳥の香草煮込み、これはこっちの世界に来た初日に街の酒場で食べてるから、味はわかってるんだけどな。


ガブっと大きく一口。


うん、確かに同じ料理だけど、明らかに洗練されてるぞ? これが宮廷風ってことなのか? でもオレ的には、酒場で食べたちょっとワイルドな感じの山鳥の香草煮込みの方が、ビールのお供として好きだな。そしてこれも無難に、普通に美味しい肉料理だよ。


そして、これでメインディッシュは終わったが、次からオレ的にはメインになる2品が続くんだ。

なぜなら、皿の上には、ぼんやりと青い光を放つ茸が鎮座している、もう、これは食事のテーブルの上の光景じゃないもんな。


「まるで月光を吸い込んだかのように、輪郭が淡く揺らめいている。

フォークを近づけると、茸の表面に散った露がかすかに光を反射するぞ。」


「毎回無理やり食レポっぽい、意味の解らない解説しなくてもいいんだよ?」


ネコ娘が薄目でオレをちらっと見た。


ふん、オレの言ってる意味が解らないなんて、知性が欠けてる証拠だぞ、ネコ娘よ。だが、まぁいい、とにかく食べてみよう。


小さく切り取ってフォークに刺したところで手が止まってしまった。

いやしかし、これ、本当に食べていいものなのか? だって発光してんだぞ?


「うわぁ、出汁とバターと夜空を一緒に煮詰めたような味だー、おいしいねー。」


ネコ娘は絶賛しながらバクバク食べてる。ってか夜空を煮詰めた、なんて洒落たこと言いやがって、ネコ娘のくせに、まったくもう。

まぁ、アイツが食って大丈夫なら、一口位は食ってみるか。


パクっと。 うんうん、確かに出汁とバターが混ざった、今までに経験したことない不思議な味だが、決して悪くはないぞ。 いや、慣れてくると美味いぞ、これ。


しばし黙って味を噛み締め、グラスのブランデーを傾ける。


「……なるほどな。」


「なるほど、って?」


ネコ娘がきょとんとする。


「光ってる理由がわかったんだよ。」


「え? 理由?」


「こいつはな、月に焦がれた森の記憶を閉じ込めた茸だ。

 夜の静寂を食むうちに、自分が月だと錯覚した――哀れな幻想の光だ。」


ネコ娘のフォークが止まった。そして沈黙。


「……つまり、おいしいってことね?」


「いや違うぞ。魂が共鳴したってことだ。」


「うん。やっぱり“おいしい”でいいと思うな。」


「あのな、言葉を安売りすることは舌への冒涜なんだぞ。」


ネコ娘がまた薄目でオレをちらっと見た。


次の皿の上には、鮮やかな赤い色をした茄子が薄くスライスされ、軽く炙られた表面に金色の油がきらりと光っている。

見た目はまるで芸術品。けれど、漂ってくる香りは、どこか野生的だ。


「これ、赤いけど……ほんとに茄子なの? なんかちょっと、動いたような……」


ネコ娘が首を傾げる。


「気のせいだろう。宮殿料理に未調理の生物は出てこないだろうからな。」


フォークで一切れ刺して、軽く持ち上げてみる。

あれ? 確かに油が、呼吸しているようにも見えるぞ?。


「あ、もしかしてこれが“竜の油”ってやつか?」


「はい、この油が竜の外殻脂を精製した特製油でございます。炙った際の熱に反応して、竜が目を覚ますかのように揺らめきます。 もちろん、お召し上がり頂けるものですのでご安心ください。」


傍らのメイドがにこやかに答える。


いやいや、安心できるか、そんな摩訶不思議な食べ物・・


「んーっ! これ、ちょっとピリッとしてるけど、クセになるわー! 美味しい!」


ネコ娘はもうしっかり食べていた。

まったくネコってのは雑食だからな。。 あれ? 犬は雑食だけど、ネコは肉食だったっけか? まぁ、どっちでもいいか。 しょうがない、食ってみるか。


パクっとな。


うおっと、舌の奥で何かが弾けたような感じがする。

熱い。辛い。けど……確かに美味いぞ。

肉でも魚でもない、燃えるようなコクを感じる。これが竜の油ってことか。


「……なるほどな。」


「うっわー、また出た、貴方の豊富な語彙の集大成、“なるほど”。」


「ふん、竜ってのは、食う者の覚悟を試す存在なんだ。この辛味は試練。竜の魂に選ばれし者だけが、完食を許されるのさ。」


「なるほど、“ちょっと辛い”ってことね?」


「いや、違う。“ちょっと辛い”じゃなく、“人を選ぶ辛さ”だ。」


「あ、そ。 じゃ、私は選ばれたみたいね。それなら、おかわりしちゃおうっと。」


「“人を選ぶ辛さ”って、そういう意味じゃないんだが・・。」


「だって、竜って高級食材なんでしょ? せっかくだから沢山食べとかないとね。」


ネコ娘が平然と笑ってる。


「高級とかそういう問題じゃないだろ。これは魂の・・」


「はいはい、魂ね。食べるから静かにして。」


「・・全く、竜も泣いてるぞ。」



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