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レジェンド探偵 ASAKURA ~俺のハードボイルドに触れると火傷するぜ(俺が)~  作者: Sakamoto9


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第33話 夕餉の始まり

 コンコンコン。


ガチャッ。


部屋の扉が開いて、メイドたちが、銀の皿を載せたワゴンを押して入ってきた。

銀の皿がずらりと並ぶワゴンからは、湯気の匂い、何とも言えない香ばしい香り、そして見たことのない色合いが溢れている。


「失礼いたします。今宵のご夕餉をお運びいたしました。」


リーダー格らしきメイドが一礼すると、他のメイドたちが手際よく動き始めた。



「前菜でございます。森鹿のパテに香草をあしらえております。」


カタン、と軽やかな音を立てて、ひとつ目の皿がテーブルに置かれる。



「こちらは根菜のポタージュ。温かいうちにどうぞ。」


続けて、すぐ後ろから別のメイドが銀のボールをテーブルに載せた。

湯気とともに、ほのかな甘い香りが広がってくる。


「主菜の金鱗魚のグリルでございます。海藻のソースとご一緒にどうぞ。」


皿から潮の匂いが立ち上がってくる。


「へぇ、これ、海そのまんまな匂いだね。」


ネコ娘が鼻をヒクヒクさせている。


「続きまして、山鳥の香草煮込み、宮廷風でございます。」


お、これは見覚えがあるぞ。こっちに来た初日の2件目で食べた、確か、名物料理だったよな。


「これって、ヴァルトベルク名物の鶏の香草煮込みだよな?」


「はい、よくご存じで。こちらは、当地の名物料理を宮廷風として、鶏の皮目を香ばしく焼いてから煮込む二段調理をして、香りとコクが加わっております。」


リーダー格っぽいメイドがニコっとしながら説明する。


「こちらは副菜の、発光茸のソテーでございます。」


続けて置かれた皿は、なぜか料理自身がぼんやりと青い光を放ってる。


「え?……発光?」


「わぁ、これが発光茸なんだ、聞いたことあるけど初めて見たな。綺麗だね。」


ネコ娘が身を乗り出して料理を見てる。


「いや、きれいだけどさ、食べ物としてはどうなんだそれって…… ぶっちゃけ、これ見ても食欲湧かないぞ。」


「こちらは赤茄子の炙りサラダ 竜の油添えで御座います。今が旬の赤茄子に、香ばしさとスモーキーさ、そしてピリッとした辛味の竜の脂を加えております。」


「え?竜の脂? ってか、竜? あの、空を飛ぶ竜のことか? 竜も居るのか、この世界には?」


「居るよ、竜。でも、めったに見られないし、食事で出てくるなんて超貴重だよ、やっぱり王宮ってすごいね。」


「そうか、居るのか、竜。でもなんで、身じゃなくて脂なんだろう?」


「たしか、竜の肉には高濃度の魔素が含まれていて、普通の人間が食べると体が焼けるか、魔物化する危険があるって聞いたことがあるな。でも、脂の部分だけは精製すれば安全で、香りもよく保存性も高いんだって。超高級調味料なんだよ?」


「へぇ、それはちょっと楽しみだな。」


「デザートは焼き林檎のハーブ蜜がけでございます。」


続けてメイドが銀のプレートに盛り付けられたデザートをテーブルに置いた。


「今までの料理と比べると、意外とデザートはシンプルなんだな。」


思わず、つぶやいてしまった。


「こちらの林檎はヴァルトベルク北部氷霧山脈南麓産の冬陽林檎でございます。収穫は月の巡りに合わせ、七度の日光を浴びたもののみ選ばれており、まず銀の水盤に置き、夜風に三時間通してから、炭火の微振動で表面を軽く炙ります。そして添えのハーブ蜜は、青紫色に輝く霧草の蜜を煮詰め、氷山の天然水で伸ばした王宮秘伝の一品でございます。」


「おっと、手間のかかった芸術品だったか。だがオレには、甘さより苦味のほうが似合うんでね。」


「え?じゃ、貴方はこの焼き林檎食べないんだね?」


「いや、せっかくだから頂くよ? オレは人様の好意を無駄にするような下衆な人間ではないんでな。」


「結局食べるんじゃないの。それならいちいち余計な事言わなきゃいいのに。ほんと、貴方って中二病をこじらせたまま大人になった人だよね?」


「こらネコ娘、中二病とか言うな。」


「ハイハイ。早速頂きましょ。アタシは森鹿のパテと根菜のポタージュから始めようっと。」


ネコ娘がそう言うと、メイドがネコ娘の前の皿に料理を取り分けてくれた。


「よし、じゃ、オレも森鹿のパテと根菜のポタージュを頂こうか。」


オレの前の皿にも料理が取り分けられた、


「それじゃ、頂きまーす。」


「あぁ、頂こうか、頂きます。」


まずは根菜のポタージュからだな。


スプーンに琥珀色がかったポタージュをすくうと、香草と根の甘みがふわりと立ちのぼった。


そのまま口に入れると優しい味が口いっぱいに広がった。


うん、普通にうまい。腹が減ってたのもあって、正直めちゃくちゃうまいぞ。


「なるほど、根の魂を煮詰めた味だな。畑の記憶が舌に甦る、そんな気がするぜ。」


ネコ娘がぽかんとした顔でオレを見る。


「はぁ?なにそれ。味の説明になってないよ?」


「料理ってのは、感じるんだよ、理屈じゃなくな。」


「はぁ?つまり、美味しかったってことよね?」


「オレはそういう俗物的な表現は出来ないんだ。」


「美味しい、って言うだけだよね? 貴方は“素直”って言葉をどこかに置いてきちゃったのかしら?」


「そんな簡単なことじゃないんだ。言葉ってのは、魂を量る天秤なんだから。」


「ちょっと何言ってるかわかんないわ。」


ネコ娘がプイっと顔を背けて森鹿のパテを食べ始めた。

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