第30話 年上?
「はぁぁ? なんだそれ、それは凄い人じゃなくて、凄い嘘をつく人だって言ってるのか?」
「そりゃそうでしょ。なにが、とある情報を掴んで、シャドウディーラーの一行と共に森の中を進んでいた、よ。ヴァンダニアの闇バーに入っちゃって、スパイを疑われて拉致されて投獄されて、更にはヴォイドベルだって吹かして処刑されることになったんで、慌てて脱獄したところを、森で助けて貰ったのがシャドウディーラーでしょ。それも、アタシが向こうの黒猫と仲良くなったから一緒に行動できたんじゃないのよ。」
「そうだったか? 多少経緯の食い違いがあるかもしれないが、おおむね結果は同じだろう。たいして問題はないな。」
「で、シャドウディーラーのメンバーと共闘して、グルアッシュを撃退した? 貴方は離れた所から魔法を見て感激してただけでしょ。それのどこが共闘?」
「それは気持ちの問題だ。肉体を駆使することだけが共闘だと思ったら大きな間違いだぞ。人間、最も重要なのは『心』だ。一緒に戦おうという気持ち、応援する気持ち、それこそが一番大切なんだ。 だからオレは心の中でどれほどの気持ちで応援していたか、キミにも、その大きさを見せてあげたいくらいだよ。」
「そして、一分一秒でも早く、カールさまをヴァルトベルクへお連れすべく、オレが背中に背負って全速力で走って戻って来た? この子供背負ってるんだぞって言って、途中で3回も休憩しながら、歩いて来たでしょ。ちょっと盛ったなんてレベルじゃないわよね。」
「そうか? あのな、オレ達は学生じゃ無いんだ。途中の努力なんかどうだっていい、重要なのは結果なんだよ。 わかるか?大人の世界では、どんなに頑張りましたって言ったって、結局成功してなければ成果にはならないんだ。 成功しなかったけど頑張った、努力賞をあげよう、なんてのは小学生までだ。 だろ? だから、結果、カールさまを連れ帰った、それが全てさ。」
「そもそも、あの子がカールさまだなんて知らなかったでしょ。 だいたい、どうやってヴァルトベルク門を通過できるか考えた位でしょ。」
「言いたいことがあるのはわかるが、更に結果的には、キミは宮廷職員と同等の待遇でオレの助手として仕事を得たんだぞ? 本来、ネコ族がどうなるかも分からない世界なのに、仕事があるどころか宮廷広報のIDまで貰えることになったじゃないか。もっと、素直に感謝を示してもらっても良いんだぞ?」
「まぁ、そこは素直にありがとう、だね。こんな綺麗な部屋にも泊れるしね。」
「そうさ、まずは、フルーツでも頂いて、お茶の時間はゆっくりと楽しまないと、人生損するぜ。」
「うわ、このパイナップルおいしい! アタシ本当はパイナップル食べるの初めてなんだ。 本で読んだことはあったけど、牢屋の食事に果物なんて滅多にでないし、ましてやパイナップルなんて絶対出てこないからね。ずっと食べてみたかったんだよね、これ。うん、甘酸っぱい感じでおいしい。」
そうか、このネコ娘、言う事はいちいちムカつくけど、ずっと牢獄で暮らしてきたんだったよな。可愛そうっちゃぁ可哀そうだよな。
「そうか。オレのぶどうとパパイヤも食べて良いんだぞ。」
「えー、良いの? 貴方意外と優しい所があるんだね。」
「『意外』っていうのは心外だな。レジェンドと呼ばれる所以はオレがいかにジェントルである・・」
「ハイハイハイ、孤高でハートブレイクでパンティ探偵さんでしたね、ありがとうございます、頂きます。」
「あ、また人の話に上から被せやがったな、このネコ娘! 果物やらないぞ!」
「もう食べちゃったもーん。」
「ちっ、今時の若いネコ娘はしつけがなってないな。」
「うん? あれ? 若いネコ娘って、もしかしてアタシのこと?」
「そうだよ。他にどこにネコ娘が居るんだよ。」
「うわ、ありがとうだよ。」
「はぁ? 何がありがとうだよ、突然。」
「今、若いネコ娘って言ったでしょ?」
「あぁ、そう言ったよ。それがどうかしたか? なんでそれで、ありがとうなんだよ。」
「アタシ、57歳だよ?」
「・・・はぁ? え? へぇ? 57・・? それってオレより年上じゃないか。」
「たぶんそうだろうと思ってたよ。 ネコ族の平均寿命は300年だかね。まぁ、56歳なら若い方ではあるけど、貴方ほど若くは無いのよね。」
・・・まじか。このネコ娘がオレより年上?
「・・そうか。いや、オレもそんなことは最初っから知ってたぞ。」
「はい、また出た、オレは何でも知ってたぞ、だね。今、アタシの年齢聞いて驚いてたでしょ? もっと素直になったらどうかな、ワ・カ・モ・ノ。」
うっわ、マジでムカつく・・。
「驚いたのは57歳ってところにだ。 年上であることは知ってたさ。たぶん56歳位だろうと思ってたから驚いただけだよ。」
「ねぇ、流石に無理があるよ、その説明。 本当に貴方は屁理屈製造マシーンみたいな人だよね。ある意味尊敬するわ。」
「そうか、それはありがとう。」
「いや、ちっとも褒めてないっしょ。」




